大学執行部の基本認識

大学執行部の覚悟

  

今般の第2期中期計画アクションプランを策定するにあたり、外部環境の変化や18歳人口の激減期に入る状況を踏まえて、大学執行部の危機意識や覚悟を「部局長会としての基本認識」として全学に示しました。

  

第2期中期計画のアクションプランを策定するにあたって
- 部局長会としての基本認識 -

2015(平成27)年 1月29日
評議会

 2010年度から展開する第5次長期計画(以下、「5長」という。)は、今年度で第1期中期計画(以下、「第1中計」という。)を終え、来年度から後半期事業である第2期中期計画(以下、「第2中計」という。)に移行する。

 第1中計では、全学で55の事業に取り組み、多くの成果が現れたが、その一方で課題として残ったものも少なくなく、また、大学をめぐる外部環境は期首に想定した以上に大きく変化し、多様な領域において「変化への対応」が求められる状況となっている。 

 第2中計は、「グランドデザイン」で掲げた使命と基本方針を踏まえ、到達目標として掲げた将来像(「2020年の龍谷大学」)の実現をめざして取り組むものであるが、先述した第1中計における到達点と課題、そして外部環境の変化や今後生じるであろう学内外の環境変化要素を勘案し、総合的な観点から、中長期的に本学があらゆる面において質的向上を果たすとともに、持続可能な発展に資するものとして取り組まなればならない。とりわけ、外部環境の変化は立ち止まることが許されない厳しいものとなりつつある。国からの政策誘導もより明示的になされ、それぞれの大学が自律的な大学運営に取り組むとともに、自大学の特徴や方向性を自ら示していかなければならない状況を迎えている。加えて、本学の現状は、財政的にもゆとりがなくなりつつあり、様々な面において、同時多発的に生じている課題を解決しなければならないのが、第2中計を展開するこれからの5年間における時代的背景であろう。 

 こうした事実に鑑みると、今般の第2中計の成否は、5長期に限らず、本学の中長期的な未来に少なからず影響を与えるものになると思慮される。このため、全学が同じ課題意識をもち、一丸となって5長改革に取り組む必要がある。

 ついては、第2中計のアクションプランを策定するにあたって、大学執行部としての基本認識を下記のとおり示し、不退転の覚悟を持って事業推進に取り組むこととする。

これからの時代に対する大学執行部(部局長会)としての認識

 今後、年を経る毎に厳しくなっていくと思われる外部環境を踏まえ、大学執行部として認識することについて、以下の4点にわたって示すこととする。

1.ポスト5長やその先を見据えた事業展開

 今般、新たに策定し展開する第2中計のアクションプランは、5長で掲げた将来像(「2020年の龍谷大学」)を実現するために取り組むものであるが、5年後の到達点に限らず、今後の18歳人口の減少局面を見据えつつ、さらにその先、すなわち、ポスト5長や創立400周年を迎える2039年など、中長期的に本学の持続可能性を高めていくために取り組むものでなければならない。

 少子化の流れが進むことによって、ポスト5長を展開し始める2020年度には、18歳人口が今より約5万人減少して114.9万人になり、しばらくは同水準を維持しつつも、2023年度には105.6万人となる。さらに、その先においては、国立社会保障人口問題研究所の死亡中位・出生中位予測のシミュレーションによると、2031年度には100万人を割って99.1万人にまで落ち込むことが予想され、本学が創立400周年を迎える2039年度には81万人の水準になると考えられている。今後、出生率の向上や移民の受け入れなど、様々な環境変化要素によって、これらのシミュレーションよりも改善される可能性はあるが、それでも大きな流れとして少子化が加速していくことに変わりはない。このような数年から十数年先には迎える厳しい現実を踏まえて、我々は大学改革に取り組み、日々の大学運営に邁進しなければならない。

 各々の部局が、こうした認識に基づき所管する諸事業に取り組むことによって、本学の将来的な発展に向けた活路が開かれてくると考えられる。ついては、学内構成員に対しても、広くそのような意識での取り組みを求めていきたい。

ポスト5長やその先を見据えた事業展開


2.「コモディティー化」対策としての継続的な改革の取り組み

 本学が5長改革の一環として、どれだけ進取の取り組みを展開しても、競合大学が同様の取り組みを行うことによって一般化し、没個性化してしまう、すなわちコモディティー化することになる。また、その進取の取り組みを本学だけが独占することはできない。 
このため、第2中計においても、大学として教育の質保証に努め、教学全般にかかる充実に取り組むとともに、改革の手を緩めること無く、更なる大学の発展を図るためにアクションプランを推進していかなければならない。

 コモディティー化対策で志向するものの本質は、大学としての内部充実に努め、全学的により教学の質を高めていくための取り組みである。

3.全学が一丸となった改革の必要性

 第2中計は、切り口や考え方こそ変われども、第1中計同様に、「教育」、「研究」、「社会貢献」、「大学運営」、「財政・施設整備計画」の5つの観点から改革に取り組むものである。これらは大学執行部(部局長会)だけで取り組むものではなく、全学の部局が深く関係するものであり、それぞれの部局における内発的かつ主体的な取り組みが無ければ、グランドデザインで掲げた将来像(「2020年の龍谷大学」)の達成は覚束ない。

 学内構成員の一人ひとりが5長改革の「担い手」であり「主体者」である、そうした意識を全学的に醸成して初めて、改革が動き出し大学総体としての成果創出に繋がるものである。このため、第2中計においては、なお一層のインナーコミュニケーションに努め、学内構成員の当事者意識を高めていかなければならない。その先に、ブランディング活動の成果も現れると考える。

全学が一丸となった改革の必要性


4.厳しい財政状況を踏まえた事業展開と教学創造に向けた不断の努力

 既に学内構成員の多くが自覚するように、現在、本学の財政はフローの面で逼迫した状況が続いている。前半期事業である第1中計において、国際文化学部の改組・キャンパス移転や農学部の設置など、設備投資を伴う大型の事業が立て続きに生じ、一時的な負荷が高まっているという特殊要因があるにせよ、看過できない状況にある。大学の財政は、5長という当期計画を担保できれば良いのではなく、中長期的に財政の健全性を確保し、大学の持続可能な発展を担保するものでなければならない。

 その一方で、「教学創造こそ財政」を財政基本計画の根底に掲げる本学としては、教学改革に向けた不断の努力とそれを支える財政出動があることによって、大学の発展や持続可能性を高められると認識する。

 これらは、一見すると相反する要素であるが、規律ある財政運営と教学創造への投資の継続、この両者のバランスを取っていくことが、今後の財政運営上においても、不可欠なものである。このため、各部局が取り組む事業について、大学の発展に資する有為な改革に対しては今後も積極的な財政投資を行いつつも、既存の事業に対しては、なお一層、規律ある財政運営とスクラップを伴う事業改革の推進を求めていくこととしたい。

2.第2中計を展開するにあたり大学執行部(部局長会)として認識すること

第2中計を展開するにあたり大学執行部(部局長会)として認識すること

 今後、より一層厳しくなると思われる外部環境を念頭に、大学執行部として第2中計を展開するにあたって深く認識することについて、以下の2点を示すこととする。

1.ガバナンス面を含めた文教政策の変化への対応

 近年の文教政策動向は、補助金の面も含め、より強く政策誘導がなされるようになっている。大学の役割そのもので言えば、2008年3月に中央教育審議会(以下、「中教審」という。)によって「学士課程教育の構築に向けて(答申)」が示され、学部教育のあり方が問われ、その後、同じく中教審から2012年8月に「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて(答申)」が示され、学習時間の確保や学生の自立的な学びを実現するためのスキームづくりなど、従来は個別大学の取り組みに委ねられていた事項にまで国が方向性を示すようになった。すなわち、「教育機関としての大学の役割」が問い直されている状況にある。

 加えて、教育再生実行会議や大学改革実行プランなど、政治主導あるいは監督官庁である文部科学省主導の大学改革が強く求められるようになり、学校教育法の改正という形で大学の運営面(ガバナンス)にまで国の指導が入るようになった。

 その背景には、少子化の時代が到来したこと、国際的な学位の通用性担保やグローバル化への対応、政府の構造的な財政赤字とそれに伴う高等教育予算の削減など、様々な次元で多様な理由が存在するが、やがて来るであろう「大学淘汰の時代」を見据えた国公私立を問わない全国レベルでの大学再編への備えとしての動きがあるように推測される。

 こうした文教政策の動きを踏まえ、法令遵守の観点から対応していかなければならないものへは対処しつつも、本学がこれまで長年にわたって蓄積してきた自律的な大学運営を今後も継承していくためには、「内発的な改革意識」と複雑に変化する外部環境の諸情勢を「主体的にリードする姿勢」をもって、大学改革に取り組まなければならない。

ガバナンス面を含めた文教政策の変化への対応


2.少子化の進行をはじめとした外部環境の変化への対応

 「2018年問題」と言われるように、第2中計の期中には、再び18歳人口の減少が始まり、学生募集面でさらに厳しい競争的環境に曝されるようになると思われる。

 また、新聞報道によると、政府が検討する地方創生に向けた取り組みの関係で、大都市部の大学に定員管理の厳格化や補助金の減額措置が講じられる可能性が高まり、本学もその例に漏れない蓋然性がある。

 中教審において別途検討されている高大接続にかかる課題についても、大学入学者選抜のあり方を根底から見直し、学力の担保を図るために、各々の大学が個別に実施する既存の入試制度をも含め、抜本的な見直しを図ることが検討されている。

 その他、大学が担うべき役割や社会的な要請も複雑かつ多様に変化し、従来の枠組みや考え方では対処できない事態が生じつつある。

 こうした外部環境の変化、とりわけ新たな枠組みによる対処が求められる事態が生じていることを勘案すると、過去の先例やこれまでの慣例にとらわれることなく、必要に応じて痛みを伴う改革を断行し、柔軟な発想と中長期的な将来を見据えた視点をもって、全学の発展に資する大学運営に取り組んでいかなければならないと認識する。

少子化の進行をはじめとした外部環境の変化への対応


3.アクションプランで掲げる全ての事業へ適用(関係)する事項

アクションプランで掲げる全ての事業へ適用(関係)する事項

 第2中計のアクションプランを展開するにあたって、すべての事業に適用あるいは関係する事項として、以下の3点を示すこととする。

1.5長の総括に資する評価指標・基準の設定

 前半期事業である第1中計においては、各事業に対して、その到達度合いを測る指標や基準を設けず事業に着手した。その結果、最終的な成果がわかりづらい事業が少なからず生じ、プロジェクト・マネジメントの面で課題を残すこととなった。

 後半期事業である第2中計においては、本計画が完了することによって、5長10年間の計画事業としても完遂することになるため、アクションプランNo.1-5-1において具体的に言及しているとおり、全ての事業に対して評価指標と評価基準の設定を求めていくこととする。加えて、経営的観点から、関係性を有する事業を束ねて「重要業績評価指標(KPI)」の設定を図り、5長全体の総括に資するように取り組む。

 ただし、個別事業で定量的な指標設定が難しい事業、定性的指標の評価設定すらも不可能な事業に関しては、個別対応を行う。

5長の総括に資する評価指標・基準の設定


2.経営的観点からブランディングを意識した事業推進

 5長の諸事業を成功させるためには、それらが大学の個性化や特色化に資するものとして事業展開していく必要がある。その先に、ブランド価値向上が見えてくると考える。このため、第2中計の事業展開にあたっては、アクションプランNo.1-4-1において具体的に言及しているとおり、全ての事業に対して、その事業がブランディングの観点から、どのような波及効果を有するものであるのかを考え、それを事業計画の中に盛り込み、事業の実施展開を図るように促すこととする。

3.キャンパス特性に応じたコンセプトの策定とそれに基づく事業展開

 第1中計の事業を展開した結果、国際文化学部は改組の上、深草キャンパスへ移転し、瀬田キャンパスへ新たに農学部を設置することとなった。2015年度以降、これらの大規模な編成替えが完了することによって、本学の基幹を成す深草・大宮・瀬田の3キャンパスそれぞれの特性が整うことになる。

 このため、アクションプランNo.3-4-2に具体的に言及しているとおり、それぞれのキャンパスの実情を踏まえつつ、それぞれが備える教学資源に鑑み、加えてキャンパスの立地環境や地域社会との関係性を考慮した「キャンパスコンセプト」を策定し、そのキャンパスコンセプトに基づいた拠点機能の形成と充実強化に向け、キャンパス単位での取り組みを進めていくこととする。

 なお、キャンパスの成り立ち経緯や、開設後に積み重ねてきた時間の違いから、それぞれのキャンパスで独自の事情があり、また、置かれた環境も異なる状況にある。第2中計の事業を展開するにあたって、それぞれのキャンパスが有する特徴を踏まえ、各々がより充実したものになるよう大学執行部が責任をもって取り組んでいく。

経営的観点からブランディングを意識した事業推進


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