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新刊紹介
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■龍谷大学国際社会文化研究所叢書1
「現代日本のボランティア像」古川秀夫(国際文化学部助教授)編著
 国際社会文化研究所の共同研究「ボランティア団体参加者の動機づけ」による調査結果を軸にまとめたものである。ボランティア元年と呼ばれる1995年の阪神淡路大震災以降、にわかに盛り上がったボランティア気運は本当に根付いているのかという問題意識の下、3つの調査が実施された。

 1つは国際ボランティア団体スタッフ対象の調査、2つめは震災ボランティアの追跡調査、3つめは軽負担ボランティアに関する大学生対象の実験的調査であった。ボランティア活動を勧める際、無償性や自発性ばかり強調するのでなく物心両面にわたる報酬にも言及するのが有効であることなど、興味深い知見も提出しながら、現代日本のボランティア像に関する断面のいくつかを示そうとしている。

(2002年9月刊/191頁/思文閣出版/2000円)
講座『戦後社会福祉の総括と21世紀への展望IV 実践方法と援助技術
太田義弘(社会学部教授)編
 20世紀の社会福祉を実践方法の領域から国際的視野や発想をふまえて、理論や実践の発展過程を総括し、21世紀への展望を論述したものである。
2002年7月刊/338頁/ドメス出版/3500円
身体のエシックス/ポリティクスー倫理学とフェミニズムの交叉ー
田村公江(社会学部助教授)共著
 倫理学と女性学・フェミニズムの交錯をテーマに10人の執筆者が論じた。自己決定の問題や主体にとっての性別・身体性が考察されている。
2002年10月刊/224頁/ナカニシヤ出版/2200円
『The Legacy of the Holocaust:Children and the Holocaust』
トーマス・ライト(経営学部教授)述
 2001年5月に開催された国際会議での講演をまとめたもの。教授が、ホロコストの後遺症に悩む子供たちの「reconciliation(内的和解)」を仏教の視点から論じたものを収録。
2002年刊/459頁/Jagiellonian University Press 出版、Texas A & M University と The University of Northern Iowa との共版/US$16
『東南アジアのキリスト教』
青木恵理子(社会学部教授)共著
 フィールドワークに基づいて、東インドネシアフローレス島における「カトリック教徒」の改宗と実践のありようを考察。
2002年6月刊/302頁/めこん/3800円
『パブリックリソースハンドブック』
松浦さと子(経済学部助教授)共著
 NPO活動を支える共創の資源として、資金、人材、情報、調査研究などの面から「パブリックリソース」という概念を世に問うもの。「第三章、情報」を担当。
2002年4月刊/397頁/ぎょうせい/3333円
『パブリック・アクセスを学ぶ人のために』
松浦さと子(経済学部助教授)共著
 マスメディアから流れる情報を受け取るだけでなく、生活や地域に根ざした視点で市民の側から発信する「パブリック・アクセス」の入門編。
2002年9月刊/352頁/世界思想社/2300円
『IT社会の構造と論理一情報化論批判一』
重本直利(経営学部教授)共編著
 IT化や情報化を深めていく現代社会の政治・経済・経営・文化構造に対して、その根源を理論的・実証的に解明し、情報化推進論・肯定論への批判を行なう。
2002年6月刊/217頁/晃洋書房/1800円
『ジョゼ・ボヴェ一あるフランス農民の反逆一』
杉村昌昭(経営学部教授)翻訳
 1999年8月、南フランスの小都市ミヨーに建設中のマクドナルド店を解体して一躍有名になった一農民のたたかいの人生を当の本人が語ったインタビュー録。
2002年10月刊/176頁/つげ書房新社/1700円
『徹底討論グローバリゼーション』
杉村昌昭(経営学部教授)訳
 反グローバリゼーション運動を領導する国際市民団体アタックの副代表で著名な理論家でもあるスーザン・ジョージが『フィナンシャル・タイムズ』の論説委員マーティン・ウルフとグローバリゼーションについて徹底討論したもの。
2002年10月刊/160頁/作品社/1500円
『労働法2一個別的労働関係法一第4版』
萬井隆令(法学部教授)編
 労働基準法を中心とする個別的労働関係についての法学部学生用のテキスト。最近までの法改正、判例を検討している。
2002年9月刊/337頁/法律文化社/3400円
『私の臓器はだれのものですか』
生駒孝彰(国際文化学部教授)著
 臓器移植について日本の宗教界とアメリカの宗教界の対応を比較した。また、生命の始まり終わりを仏教とキリスト教の立場から論じた。
2002年6月刊/187頁/NHK出版/640円
『在日コリアン権利宣言』
田中宏(経済学部教授)編
 「在日」が保障されるべき権利について、これまでの市民運動の到達点に、国際人権規準による検証を加えて、政策提言的にまとめたもの。
2002年4月刊/63頁/岩波書店/480円
『滋賀・21世紀初頭の論点』
滋賀自治体問題研究所編
高橋進(法学部教授)共著
 滋賀県政の経済、福祉、教育、まちづくり、住民参画、女性の地位、開発、同和対策、市町村合併等を、住民自治の視点から問い、21世紀の論点を提起。
2002年3月刊/377頁/自治体研究社/1800円
『検証・市町村合併 合併で地域の明日は見えるか』
重森曉・関西地域問題研究会編
高橋進(法学部教授)共著
 政府が現在推進している市町村合併の問題点を、関西の各府県の動向と事例で検証。合併例として篠山市、自立の道を選択する南部川村等を紹介。
2002年8月刊/221頁/自治体研究社/1905円
『戦後イタリアの極右勢力』
高橋進(法学部教授)監訳、F・フェラレージ著
 イタリア社会運動をはじめ、戦後イタリアの極右勢力の思想、政治戦略、クーデター計画等、その全体像を裁判記録等を駆使して分析した本格的研究。
2002年10月刊/315頁/大阪経済法科大学/6000円
『デューイ・人間性実現への教育一米国カリキュラム開発を考える』
海谷則之(文学部教授)著
 本書はデューイ教育学を基調に、米国のカリキュラム開発、特に学問中心カリキュラムとその克服としての人間性実現への教育を論じたものである。
2002年10月刊/293頁/春風社/2857円
『少子高齢時代の都市住宅学』
広原盛明(法学部教授)編著
 現在の少子高齢時代を「移行期」と位置づける視点から、国連指標を見直し、住宅・都市計画への具体的指針を与えたもの。
2002年7月刊/292頁/ミネルヴァ書房/2800円
『現代のまちづくりと地域社会の変革』
広原盛明(法学部教授)編著
 日本の「まちづくり」の起源を歴史的に解説し、3つの代表的事例の紹介を通して、まちづくりの具体的展開とその特徴及び今後の発展方向を論じたもの。
2002年9月刊/255頁/学芸出版社/2600円
『日光東照宮隠された真実』
宮元健次(国際文化学部助教授)著
 日光東照宮の歴史と造形について、装飾の狩野探幽、宗教の南光坊天海、建築の小堀遠州といった3人のプロデューサーという新視点から解明を試みた。
2002年10月刊/284頁/祥伝社文庫/571円
『シルクロード ニヤ遺跡の謎』
蓮池利隆(文学部講師)共著
 古代のシルクロードに栄えたニヤ遺跡には仏教伝播の確かな足跡が残されている。様々な分野の研究者がその謎に迫る。学際的取り組みがここに結集。
2002年11月刊/199頁/東方出版/2500円
「木村誠一さんの生涯と『真楽記』」を出版しました。
 胃ガンを宣告され、愛しい幼子5人を遺し、45歳で逝った小学校教諭・木村誠一さん。死の直前まで如来の声を聞き続け、浄土に帰しゆく我がいのちを綴った『真楽記』。幼子を遺しながらも往く、その壮烈なまでのいのちの短歌130首を収録しました。

 いつの日にかこの『真楽記』を活字化して少しでも多くの人に読んでいただきたいという願いを懐くようになっていました。没後40年にして今このような形で一冊の本にすることができましたことは私としては何か大きな責任を果たしたような思いに駆られています。(自照社出版/1600円)
(浅野純以・1967年文学研究科修士課程修了・住職・愛媛県越智郡)
詩集「冬白」を出版しました。
 1985年の「セルロイド界隈」より数えて8冊目の詩集が本書「冬白」」(彼方社/2400円)です。詩の雑誌や「朝日新聞」」、「「関西文学」などに発表した13篇の近作が収められています。今回の作品は、伊藤若冲、円山応挙、長谷川等伯、あるいは応挙と親交があったと伝えられる蕪村の句に触発されて書かれた連作シリーズです。単彩で描かれた消え入るような淡い水墨画の情景を眺めつつ、そこに現代に通じる、はかなさとあやうさ、そして無常感をとらえて描きました。

 応挙の「氷図屏風」や等伯の「松林図」若冲の「蓮池図」が実は、とても現実感をともなった迫力で眼前に迫ってくるのに比して現代の、たとえば「9・11」のテロ事件を伝える映像が紛れもなく現実であるにもかかわらず疑似的に感覚されるのはどうしてなのだろうか、といった感じたままの思考が叙景と叙述で淡々と記されています。
(萩原健次郎・1975年経済学部卒業・コピーライター・京都市)
「大谷探検隊とその時代」を出版しました。
 龍谷大学は、東京国立博物館、中国旅順博物館などとともに大谷探検隊将来資料を収蔵し世界の学界の関心は高い。大谷隊が活動を開始したのはちょうど100年前の1902(明治35)年、スタイン(英)、ペリオ(仏)、ル・コック(独)などの内陸アジア探検と並行する。大谷隊はこの活動にアジアから唯一参画しただけでなく最大級の調査域を誇ったが、わが国近代史はほとんど語ることがなかった。なぜであろうか。本著はこの点を焦点化し、幕末にまで遡って派遣の歴史的背景を大胆に問い、隊員たちを輩出した龍谷大学の淵源校がわが国近代化に果たした役割の大きさをも浮かび上がらせる。
 『大谷探検隊とその時代』は、勉誠出版(TEL 03‐5215‐9021)より(1600円)。
(白須淨眞・1974年文学研究科東洋史学専攻修了・立志舘大学講師・広島県安芸郡坂町)
おススメの一冊 西垣泰幸(経済学部教授)『ベッカー教授の経済学えはこう考える-教育・結婚から税金・通貨問題まで』
 ノーベル経済学賞があることからもわかるとおり、経済学はリベラルアーツとしても広く社会・経済的人間行動を解明する諸分野に基礎を提供する学問の一つである(と信じている)。ところが近年の分析ツールの高度化、情報・データの利用性が高まるにつれ、経済学は高度に制度化・専門化し垣根を高くしつつある感は否めない。

 この本はベッカー夫妻の共著であるが、夫ゲーリーは経済学の体系に人的資本、家族、慈善、差別などの人間的な要素を取り入れ、経済学のフレームワーク拡張に努めてきた(妻のキティは歴史学専攻)。その功績により92年ノーベル経済学賞を受賞している。本書はビジネス・ウイーク誌に連載したコラムをまとめたもので、経済学を専門としない人々にも読みやすい内容となっている。90年代アメリカや世界の社会問題について規制、労働、税金から宗教、家族、移民、女性などの問題を、経済学的な視点から、平易でテンポの良い文章により解説している。