文学部
御影堂平成大修復の現場へ講義と現場をリレーして学ぶ「本願寺の探求」
 「本願寺の探求」は、本願寺の歴史、親鸞の教え、本願寺の芸能などの講義と、普段公開していない国宝・重要文化財に指定されている建物・美術群などの見学をまじえ、講義と現場をリレーしながら、チェーンレクチャーで多角的に展開している。赤松徹眞教授がコーディネーターである。

 本願寺は、1994年に世界文化遺産に登録され、建造物5件が国宝に指定されており、親鸞の教えと共に貴重な文化財群である。

 10月12日(土)には、中尾正治講師(京都府教育庁指導部文化財保護課)が担当し、文化財修復工事の意義や工法についての講義のあと、現在10年がかりで修復がすすめられている江戸時代の建造物「御影堂」の修復現場を見学。普段は、地上から仰ぎ見ることしかできない大屋根に、すくむ足を一歩、一歩すすめて登り、感動的な体験をした。

 また、御影堂内の内陣での彩色修復作業を見学。修復に当たっている絵師から「現在残っている彩色は、当時の技法や、描いた絵師の心などが詰まった貴重な資料のため、細心の注意をはらい、残っているものを出来るだけ生かし作業をしている」などの苦労話を聞き、御影堂の文化財としての価値を再認識することとなった。

 本講義は、(財)大学コンソーシアム京都のシティーカレッジへの提供科目でもあり、本学学生の他に、他大学生、社会人が多く受講し、好評を得ている。

(写真・修復中の本願寺御影堂で中尾正治講師(右端)の説明を聞く受講生。)
経済学部
地方分権型の地域社会の担い手を育てる4月から「NPO・地方行政研究コース」がスタート
 2003年4月、高度で専門的な地方公共政策を展開できる人材の育成を目標として、大学院「NPO・地方行政研究コース」を設立する。これは、法学研究科・経済学研究科共同運営による大学院で、近畿圏の地方行政機関およびNPO・NGO団体と「互恵的連携協定」を結び、理論教育・研究の場としての大学と、その実践の場としての協定先が連携・交流することにより、地域社会の抱える課題の解決と、研究・教育活性化の実現が期待される。

 このコースは、公共政策関連科目に限らず法学研究科・経済学研究科双方の開講科目を広く開放するとともに、長期インターンシップや職場におけるフィールドワーク等、地域社会から直接学ぶ実務研修科目が導入される等、多彩な選択肢が用意されている。また、社会人学生を対象として学費貸与制度等就学支援体制の強化が図られている。

 11月30日には、協定先からの推薦者を対象とした1年制及び2年制の修士コースの入試を実施した。2月に大学院修士課程の入試が行なわれ、本コースへの受験ができる。
経営学部
変わる授業風景 実地学習型ゼミが広がる
大型スーパーの前でアンケート調査を行なう野間ゼミの学生
 近年、全国の大学でフィールド・スタディ(実地学習)型の授業が試みられつつある。これは、教室での学習と実社会を教材とした実地学習とを組み合わせ、より大きな教育効果を得ようとする問題発見型の授業で、経営学部でもいくつかのゼミに導入されている。

 たとえば、野間圭介教授のゼミでは、京都地域の大型スーパーの来店客にアンケート調査を行ない、回答をコンピュータを使って分析し、その結果を基にした経営上の改善案を店側に提案する授業を行なっている。実際の店舗を対象とするだけに、学生達の問題意識も高まり、分析や議論にも熱が入る。
祇園で町屋の現地調査を行なう川端ゼミの学生
 一方、川端基夫教授のゼミでは、近年京都で流行している、古い町家をカフェなどに利用する新しいビジネスの調査分析を行なっている。学生達が自らの足で歩いて「町家ビジネス」の実態を把握すると共に、実際に経営者へのインタビューを行ない、経営上のメリット・デメリットを探るなど“生きた”学習を行なっている。

 教務主任の夏目啓二教授によれば、「このような授業は、学生の課題発見力や、理論と現実との接合力、問題を掘り下げる力などを養うだけでなく、学習過程で予期せぬ“出会い”や“発見”を経験することもあろう。今後、多様で斬新なスタイルの授業が増えていくと思います」とのこと。
法学部
政治学科開設10周年「変わる世界の中の日本像」をテーマに記念シンポジウムを開催「変わる世界の中の日本像」をテーマに記念シンポジウムを開催
 龍谷大学法学部政治学科開設10周年記念シンポジウムが、11月19日(火)に深草学舎で開催された。テーマは「変わる世界の中の日本像―市民・地域・国家の視点から―」。

 元経済企画庁長官の田中秀征氏(福山大学教授)が、「質実国家への展望―背伸びしないで生きていこう―」と題した基調講演を行ない、その後開かれたパネルディスカッションでは、隅井孝雄氏(元日本テレビアメリカ法人社長、京都学園大学教授)、筒井由紀子氏(コリアこどもキャンペーン事務局長)、元逗子市長の富野暉一郎教授に田中秀征氏も加わり、坂井定雄教授の司会で、それぞれの立場からあるべき日本像についての発言と活発な討論がなされた。

 法学部政治学科は1992年4月に開設され、「ポリシー」と「グローバリゼーション」をキーワードに、創造性あふれる企画力を持つ人材、国際社会で活躍することができる人材の養成に努めてきた。シンポジウム終了後に開催された懇親会では、政治学科の同窓生もかけつけ、教職員らと旧交を温め合う中、川端正久教授から、「10周年を機に政治学科も新たな道を踏み出していきたい」との決意が表明された。

(写真・シンポジウム風景。右から坂井教授、田中氏、隅井氏、筒井氏、富野教授。(深草学舎で))
理工学部
「電波暗室」を設置 ブロードバンド時代のアンテナや電波を研究
 今年の7月に、マイクロ波伝搬・通信実験設備の一つとして「電波暗室」(電波無響箱)を設置した。

 暗室といえば、光を遮断した真っ暗な部屋をすぐに想像するが、これは、「電波を全く反射させない部屋」である。部屋の中は、カーボングラファイトを含む発泡ポリエチレン製の黒い四角すい形の電波吸収体(底面約10センチ平方、高さ約30センチ)が、六面すべてを取り囲んで、電波を吸収する仕組みになっている。

 ここで、学生たちは様々なアンテナを用い、時にはアンテナを自ら作成して、アンテナの方向による電波伝搬のレスポンスの変化(指向性)や感度を測定し、アンテナの評価や考察をしている。

 これらの研究は、大容量通信に応えるべくブロードバンド無線通信を受信するマイクロ波微小アンテナの開発や、携帯電話に内蔵されている小型平面アンテナの高感度化等、様々な新しい研究教育に役立つはずだ。

 また、電波の送受信の研究のみでなく、電波が人体に与える影響についても考え、新しい電波吸収体の発見、開発にも取り組んでいる。

 この装置は、11月3日・4日に瀬田学舎で開催された「理工学部研究室公開」でも初めて一般公開し、多くの人から注目を集め、賑わった。

(写真・電波暗室でアンテナを調整中。)
社会学部
村井龍治教授 自助具の開発研究に取り組む市民との共同研究会を発足
 臨床福祉学科の村井龍治教授が主催する「自助具研究会」が、今年7月に龍谷エクステンションセンター(REC)の活動のひとつ「龍谷大学福祉フォーラム」の共同研究事業として新しく発足した。自助具とは、身体に障害がある人が自力で日常生活動作が遂行できるように工夫された道具や補助道具のことで、大津市内で活動を続けている自助具制作ボランティアグループ「ケアクラフト」と共同で新しい開発研究に取り組むことになった。

 現在、瀬田キャンパスにある6号館福祉実習棟の福祉工学機器開発室を活動場所として、毎月第2、第4の水曜日、午前10時から午後3時までを研究活動時間とし、新製品の開発に向けて取り組んでいる。将来は、大学、学生、市民が共同して活動していくことを計画している。

 また、この9月から10月にかけて、 「ケアクラフト」をバックアップしてきた大津健康福祉センターと共同で、自助具ボランティア育成講座を開催。多くの人が参加し、自助具を作る楽しさを学んだ。

(写真・手に障害があり、日常生活が困難な人が、包丁やストローを使いやすいようにしたり、また、コップを倒れにくくするように工夫された道具。)
国際文化学部
国際化に対応できる学芸員を目指して 博物館学芸員課程の実習はじまる!
文学部につづき国際文化学部にも博物館学芸員課程が設置されたが、今年の7月から10月にかけて、主に近畿圏の博物館・美術館などで3、4年生43名が実習を行なった。実習期間や内容は館により様々。実習生は各博物館の運営・管理に直接関わりながら、学芸員の指導の下に専門的知識や技術の修得に努めた。

 現在、博物館学芸員課程がある大学は、日本全国で約180校をかぞえ、学芸員への道は相変わらず厳しい状況にあるが、最近の博物館の動きに注目すると、外国の博物館との交流がますます盛んになっていることがわかる。例えば、海外展(外国の博物館との資料の貸借)、文化財の修復(保存科学)、文化財の国外流出防止(ユネスコ条約)、途上国の博物館員養成(研修)等で、そのために豊かな国際感覚と学識、語学力をもった人材が求められている。この点で本学部の学生が力を発揮する場が広がっているといえる。

 博物館学芸員課程の今後の活動は、東京国立博物館、東京芸術大学美術館などを訪問して、博物館活動の実態を把握したり、海外の博物館事情に詳しい専門家を招いての講義などが予定されている。また、学生の自主企画による小規模の展覧会を開催することも検討している。

(写真・大阪狭山市立郷土資料館で、資料分類などの実習を体験した末岡真悠子さん(写真右、4年生)。「とても勉強になりました。ただ話を聞くだけでなく、体を使っての実習は非常に有益でした」と後輩のために体験談を語った。)
短期大学部
福祉先進国スウェーデン、デンマークへ研修旅行。関心も満足度も高く。
 社会福祉科の海外研修が、飯田一道教授、川崎昭博講師の引率のもと8月26日から9月2日までの7泊8日の日程で実施された。これまでカナダやオーストラリアへ出向いたことはあるが、今年初めて北欧の福祉先進国の現状視察を目的として、スウェーデン、デンマークの二カ国を訪ねた。40名の募集に60名の応募があり、これまで以上の学生の強い熱意が感じられた。

 関西空港から、空路フランクフルトを経由し、スウェーデンのストックホルムへ。ストックホルム大学でグンブリット・トリデガード教授よりスウェーデンの高齢者介護のシステムについて、他の北欧諸国との比較を交えての講義を受け、その後複数の小グループに分かれデイケアセンターや高齢者施設を視察見学した。

 デンマークへは列車でコペンハーゲンに入り、オーフス大学の看護教員であるレーネ・ホーレンナー先生より、デンマークにおける高齢者及び障害者の生活についての講義を受けた。研修の合間にはシェイクスピアのハムレットの舞台となったクロンボー城の見学なども行なった。

 参加した学生からは「日本の福祉との違いを通して、多くの事柄を学ぶことができた」、「短い短期大学生活で貴重な思い出作りができた」など、参加してよかったとの声が多く寄せられた。

 社会福祉科では、今後も北欧を含め、学生の要求に応えられるような海外研修を検討していく。

(写真・スウェーデンの高齢者福祉施設 CLOCK HOUSE の玄関前で施設管理者の方と。)