発表!「龍谷大学第2回青春俳句大賞」 今回も全国から全国の中・高・大学生を対象に昨年度からスタートした「龍谷大学青春俳句大賞」。2回目の開催となる今回も大きな反響を呼び、6万4000句が寄せられた。 12 月に最終選考会が行なわれ、受賞作品が決定!なお、表彰式は3月27日に龍谷大学深草学舎にて開催する。受賞作以外の作品をおさめた本も3月下旬に発行予定。乞うご期待!

中学生部門
■最優秀賞

百日紅母(さるすべり)のカレーの匂いくる
東京都 繁昌 知洋 東京学芸大学附属小金井中学校3年
【評】今日も暑い一日だった。百日紅の花ばかりが元気だ。ふとスパイスの効いた母の作る特製カレーの匂いがして、急に空腹を覚えた作者。 百日紅とカレーの取り合わせが健康的で小気味いい。(山田弘子)

■優秀賞

サッカーで真っ赤な夕日をけり落とす
岩手県 佐藤 史也 一関市立中里中学校1年
【評】サッカーボールを勢いよく蹴る。真っ赤な夕日を蹴り落とすくらい強く蹴った。その勢いのため夕日は急に沈んでいった。夕日を蹴り落とすと表現したところがよい。(有馬朗人)

春の土かたまって置くランドセル 
千葉県 森田 貴之 開成中学校3年
【評】春の土は凍て解けや雪解けがあるからぬかるみになりやすく、「春泥」ともいう。校庭の一カ所にかたまって置かれてある色とりどりのランドセル。春の泥の季節感をよく捉えている。(大峯あきら)

坂道がたおれて来そう油蝉 
神奈川県 浦田 雅子 清泉女学院中学高等学校1年
【評】目の前にはだかる坂道がまるで倒れてきそうと表現した感性が若々しい。じりじりと暑さを強調する油蝉の声に汗が噴出す。言葉のセンスが抜群で、大きな可能性を秘めているように思える。(山田弘子)

■入選 

枸杞(くこ)の瞳に星空宿す雪兎  宮城県 大内 美沙子 
名取市立増田中学校3年
ふくろうがフランスパンをくわえてる 福島県 大槻 豪
西会津町立西会津中学校3年
蟻の道こわしているよ姉弟
茨城県 宇津野 茜 
つくば市立谷田部中学校2年
鰯雲美術館から帰る道
埼玉県 清水 麻衣
川越市立川越西中学校1年
兜虫捕らわれてなお輝きぬ
千葉県 山本 浩貴
千葉市立土気南中学校3年
遠足の歌の抜けたる切り通し
千葉県 森田 貴之
開成中学校3年
梅の香に阿修羅も皺を伸ばしけり
東京都 張 恩豪
文京区立第六中学校3年
春深し唐招提寺を彩って
神奈川県 東 佐織
横浜市立原中学校3年
故郷は虹に抱かれしあのあたり
静岡県 近藤 和
静岡大学教育学部付属静岡中学校2年
せみしぐれ天竜川に吸いこまれ
静岡県 森住 泰彦
浜松市立蜆塚中学校1年
さとの夜やゆかたのすその短くて
三重県 臼井 美月
四日市市立笹川中学校1年
摘果作業汗ふき落とす青りんご
大阪府 片桐 優一 
守口市立藤田中学校3年
四万十の夜空に掛かる天の川
大阪府 長岡 達朗
堺市立庭代台中学校2年  
向日葵の顔も見させぬ戦争よ
大阪府 松井 希望 
岬町立岬中学校3年
うに解禁母の指先赤くなる
山口県 野村 祐季江 
阿武町立阿武中学校1年
青嵐友との間通り抜け
愛媛県 濱口 美里
上島町立生名中学校1年
青絵の具なくなりかけて夏終わる
福岡県 高畑 紗穂
北九州市立思永中学校2年  
夏近し飛行機雲のすじ一つ
長崎県 山村 友里子
長崎市立三重中学校3年
あじさいは灰色の町輝かす 宮崎県 三浦 由実
東郷町立坪谷中学校3年


高校生部門
■最優秀賞

砂時計ひかりこぼして五月来る
茨城県 河添 英明 茨城県立下館第一高等学校4年
【評】砂時計の砂がきらきらと光をこぼすように落ちてくる。時は五月、初夏の光に天地も明るい。その五月の光を受けて砂時計の砂は一層輝くのである。(有馬朗人)

■優秀賞

教室にヘッセの詩集五月来ぬ 
茨城県 梅田 恭平 茨城県立下館第一高等学校3年
【評】『デミアン』、『車輪の下』のヘッセには、青春の憂愁がある。その抒情詩集を教室で開く。五月が窓の内外に来ている。若者らしい句。(有馬朗人)

星飛んで校塔一基直立す 
茨城県 北嶋 訓子 茨城県立下館第一高等学校1年
【評】直立の校塔、流れる星。強く明確な構図の一句である。夜の暗さの中、ふいに星が飛んでいく。黒々と佇つ校塔は、その後の静けさと夜の闇の深さを伝えてくる。(寺井谷子)

放課後のトランペットや夏に入る 
大阪府 塩谷 紘世 大阪府立吹田東高等学校2年
【評】これまでは消音器をつけて教室で練習していたのであろう。空も雲も明るくなった緑の木陰に誘われて、放課後のひと時、思い切りトランペットを吹いている。「夏に入る」という季語が生きている。(茨木和生)

  
■入選 
いっぱいの星の中から流れ星
北海道 中島 梨沙 
北海道札幌国際情報高等学校1年
パンドラの箱に入りたる天道虫
茨城県 熊倉 潤 
開成高等学校3年
去りがたし節の生家鶏頭花
茨城県 野原 一成 
茨城県立下館第一高等学校3年
とんぼうに稜線太し筑波山
茨城県 市村 ゆかり 
茨城県立下館第一高等学校1年
胡桃落つ平均台を渡り切る
茨城県 田畑 慎吾 
茨城県立下館第一高等学校3年
鶏頭や漱石全集最新版
茨城県 梅田 恭平
茨城県立下館第一高等学校3年
サイダーの向こうに見える空と海
栃木県 稲葉 律子
作新学院高等学校3年
教室のドア開きにくく原爆忌
東京都 浜崎 厚徳
開成高等学校2年
千本のひまわり咲いて海青し
静岡県 市川 礼央
静岡県立裾野高等学校3年
母寝しや満月母屋に満ち溢れ
愛知県 近藤 祐加
桜花学園高等学校3年
初雪や黒板の文字の角ばって 愛知県 山田 紗矢香
桜花学園高等学校3年
サイレント映画にぽつと赤林檎 大阪府 中山 奈々
大阪府立吹田東高等学校3年
星月夜星座を結ぶシャープペン
大阪府 西口 佳保
大阪府立吹田東高等学校2年
百メートル全力疾走鰯雲
大阪府 一柳 有希
大阪府立吹田東高等学校2年
すれ違う人それぞれに秋の暮
大阪府 前田 雄志
大阪府立吹田東高等学校2年
夏の日の田のにほひする自室かな
岡山県 難波 雄司
岡山県立岡山一宮高等学校1年
黒板のチョークの音と蝉の声
広島県 須一 友恵 
広島音楽高等学校1年
滝くぐる父の背中の大きさよ 愛媛県 小田 紘子
愛媛県立伯方高等学校2年
自転車で坂下り来て蚊柱へ
愛媛県 藤田 一暁
愛媛県立伯方高等学校1年
未送信メール削除し遠花火
愛媛県 鈴木 幸恵
愛媛県立松山東高等学校2年
夏木陰五分遅れのバス来たる 福岡県 大谷 綾子
筑紫女学園高等学校1年


短大・大学生部門
■最優秀賞

葡萄食いつつ友情か恋愛か
東京都 山口 優夢 東京大学1年
【評】異性に対して抱いている自分の親しい気持ちが、恋心か友情かはっきりしないことはよくある。それを思いながら、葡萄の甘酸っぱい味を噛みしめている青春の心。(大峯あきら)

■優秀賞

逃げ水のようにはぐらかさないでよ 
滋賀県 西堀 恵子 龍谷大学3年
【評】二人称で心情をストレートにぶっつけているが、「逃げ水」の比喩はなかなかのもの。句またがりがかえってじれったい気持ちを表現するのに功を奏している。(山田弘子)

メールより手紙を待ちて冷し瓜 
京都府 綿貫 明日香 佛教大学2年
【評】パソコン、ケータイ、今や「メール」の時代。しかし、この句の作者は、「メールより手紙」を待っている。心を籠めた手紙を。恋の始まりでもあろうか。(寺井谷子)

古き良き時代の男兜虫 
岡山県 橋本 未如 岡山県立大学短期大学部2年
【評】「古き良き時代の男」という言葉はよく懐かしんで使われるが、それを一句の中にうまく使い込んだのが手柄。この惜辞と「兜虫」という季語がうまく関係づけられたから。兜虫はこの男の少年時代とも結びついている。(茨木和生)
  
■入選

蝉しぐれ時の流れを止めている  岩手県 後藤 泉  
戸板女子短期大学1年
朝顔と風鈴のある小学校 埼玉県 岩地 朝
戸板女子短期大学1年
秋蝉の声の遠くになりにけり
神奈川県 鈴木 紫方 
横浜市立大学1年
空梅雨に実る故郷の桃甘し
京都府 小寺 恵 
龍谷大学3年
大文字父の背越えて仰ぎ見る
京都府 丸山 裕史
龍谷大学1年
夕端居選挙紙面に落とす爪
京都府 西川 修一郎
龍谷大学2年
野に出よう硝子細工のてんとむし
大阪府 藤田 亜未
京都栄養医療専門学校2年
たんぽぽを引き抜き空が一回転
兵庫県 安井 千春 
岡山県立大学短期大学部1年
雨降ってちょっと早起きかたつむり
岡山県 岡崎 真由美
岡山県立大学短期大学部2年
雨あがり第一声は蝉の声
岡山県 草野 晶子
岡山県立大学短期大学部2年
つの上げて横断中のかたつむり
岡山県 金森 京子
岡山県立大学短期大学部2年
鯉のぼりかすかに防虫剤香る
岡山県 橋本 未如 
岡山県立大学短期大学部2年
太陽を追う向日葵の片思い
岡山県 藤原 愛 
岡山県立大学短期大学部1年
猪鍋に父との間温まり
熊本県 本田 伊津美 
尚絅大学4年2年
  
英語部門

■最優秀賞  該当句なし


■優秀賞

In different countries
But at night
They can see the same plough 
北海道  佳 佐呂間中学校3年
【評】親しい人達から遠く離れて暮らす哀しさや淋しさを表す、感動的な句。同時にまた、私達は皆同じ美しい天空の星座の元に暮らしているという、心安らぐ思いをも与えてくれる。(ウルフ・スティーブン)

The shadows of fish
reflected on the riverbed
by the noon sunlight
京都府 島田 一子
【評】光と影の中を素早く水を切って泳ぐ魚の、陰と陽の見事な交錯を感じる。大袈裟に語ろうとする言葉は無く、切り取られた美の情景の中で、自然の真実を見事に捕らえたスケッチである。(ウルフ・スティーブン)

■入選 
   
The night of summer
silently, calmly
the sound of waves

群馬県 塩野 直子
Everything stands still
In the daylight
Of a scorching hot summer.

滋賀県 若城 啓子
Over the blanket of mist
there is a glorious road
leading to the dream 

滋賀県 西堀 恵子 龍谷大学3年
The veins of the sky
Push through the darkness of night
Listen to them sing

京都府 Rachael Ferraz
The spring has gone
Dandelions go to seed 
徳島県 渡部 敏子

団体優秀賞

■中学部門

神奈川県 森村学園中等部
神奈川県 横浜市立南希望が丘中学校
愛知県 碧南市立南中学校
三重県  東員町立東員中学校
大阪府 大阪教育大学附属平野中学校
■高校部門

宮城県 小牛田農林高等学校
大阪府   大阪府立吹田東高等学校
広島県 広島音楽高等学校


選考委員会特別賞
■有馬 朗人選
砂時計ひかりこぼして五月来る 
茨城県 河添 英明 茨城県立下館第一高等学校4年
【評】砂時計の砂がきらきらと光をこぼすように落ちてくる。時は五月、初夏の光に天地も明るい。その五月の光を受けて砂時計の砂は一層輝くのである。

■大峯あきら選
蝉しぐれ時の流れを止めている 

岩手県 後藤 泉 戸板女子短期大学1年
【評】降るような蝉しぐれを聞いていると、ふと時間が止まってしまった別世界にいるような不思議な気持ちになることがある。そんな永遠の今を蝉が鳴く炎昼の景の中に感じ取った句で、すこぶる詩的である。

■茨木 和生選
うに解禁母の指先赤くなる 

山口県 野村 祐季江 阿武町立阿武中学校1年
【評】地域によってうにの解禁日は違うだろうが、うにの句は春だから、三月半ばには解禁となっている。舟が戻ってくると風除けをした浜で、うにの卵巣を取り出す作業が始まる。そんな作業をしている母を見ての、素直な発見の作品である。

■寺井 谷子選
パンドラの箱に入りたる天道虫 

茨城県 熊倉 潤 開成高等学校3年
【評】禁断の箱(壷)を開くと諸悪が飛び出したと言われる「パンドラの箱」。この作者はそこへ「天道虫」を入れた。この天道虫は箱に残った「希望」の象徴である。

■ウルフ・スティーブン選
すれ違う人それぞれに秋の暮 

大阪府 前田 雄志 大阪府立吹田東高等学校2年
【評】人が生活の中での喜びや悲しみとともにそのドラマを生きていこうとする姿を、その孤立感と、人間相互の交わりを求めようとする生来の願望の両方を感じさせながら、うまく表現している。

■山田 弘子選
坂道がたおれて来そう油蝉 

神奈川県 浦田 雅子 清泉女学院中学高等学校1年
【評】自分の動作の説明はないのに、汗を拭きながら坂道を登っていく表情が見えてくる。坂道が「たおれて来そう」の感覚的な把握が秀逸。「油蝉」も動かない。


総評
有馬朗人
 今年も中学生の俳句が最も面白かった。新鮮な見方で作ってあるからである。私は高校・大学生は、もう普通の人々と同等にして選ぶべきであると、常々思っている。寺山修司や、古くは石川啄木が世に出て来るのはその時代であった。長寿時代であるから一歩ゆずって高校生までは、特別扱いをしてもよいかもしれないが。こう見てくると大学生の作品は、例外はあるが、全般にあまり評価できなかった。もうひと頑張りほしいと思う。

茨木和生
 予選も担当したので、その立場からいうと、自分の作品をよく理解してもらうために、太字のボールペンか濃い鉛筆で、楷書できっちりと書くことをまず望みたい。ついで俳句は「五・七・五という十七音の詩」であり、「一句に必ず季語を必要とする詩」だが、応募しようとする自分の作品がそうなっているか確かめてほしい。今回の作品は、どの部門も第1回より充実した作品が寄せられた。中学生が高校生になり、高校生が大学生になって応募をしてくれた句もあるからだろう。これからの作品の充実は、みなさんの継続した応募にかかっているといっていいだろう。期待しています。

ウルフ・スティーブン
 多くの句の中に込められた心を分かち合う事ができて非常に光栄だ。若者達の純粋な精神から生まれる自発的で気取りのない句は、今日の日本の若者の鼓動を感じさせるものであり、今の風潮に接し、彼らの解き放たれたエネルギーに触れることができた。英語の俳句は世界中で作られ、また詩歌が現代に生きている日本で、俳句は日本の心や文化の今をスケッチしている。「異文化コミュニケーション」と「国際化」というあまりにも多用される言葉の真の意味はこの俳句の働きの中にあると私は確信している。

大峯あきら
 昨年度は、中学・高校生部門に比べて短大・大学生部門が低調だったが、今回は短大・大学の諸君の作品もなかなか意欲的で、楽しい選句ができた。俳句はいわゆる「ソフト」の部類に入る営みに違いないが、季節の推移とか日本語の響きとかに対する感受性を守るこの「ソフト」こそ、今日の科学文明社会の中で人間が人間であるための大事な条件なのである。

寺井谷子
 第2回の今回は、総体にレベルが上がった感を抱いた。うれしいことである。殊に中学、高校生の作品は、それぞれに拮抗した力を感じさせて、選ぶのにも力が入った。大学生の作品も、昨年よりも読み応えがあるものが増えた。この「俳句」という形式でさまざまな事や思いが書けるという信頼を持つこと。そのことを信じた時、さらに新しいものが生まれてくると期待している。

山田弘子

 中・高校生の作品は質的にもアップし、選を楽しませてくれた。発想や表現もとても新鮮で、日本語のふくらみも感じられた。これは俳句という文芸が若者の生活の中にしっかりと根づいてきたことを物語るものだろう。大学生の作品は数が少なくて、これは今後の課題であろうかと思う。今の間にしっかりと俳句の基礎を身に付けてほしい。

超一流の先生方が真剣に選考…ありがたい!−最終選考会ルポ−
左からウルフ・スティーブン 国際文化学部助教授。芭蕉、一茶らの俳句の翻訳を手掛ける。  寺井 谷子現 代俳句協会理事。「自鳴鐘」編集人。  大峯あきら 元龍谷大学教授。大阪大学名誉教授。哲学者。「晨」代表 。 有馬 朗人 元文部大臣。科学技術館館長。物理学者。「天為」主催。  山田 弘子 日本伝統俳句協会監事。「円虹」主宰。 茨木 和生 俳人協会理事。大阪俳句史研究会代表理事。「運河」主宰。

 暮れも押し詰まった12月26日、「龍谷大学第2回青春俳句大賞」の最終選考会が行なわれた。
 物理学者で元・文部大臣の有馬朗人氏をはじめ、現代俳壇で活躍中のそうそうたる先生方が、昨年に引き続き選者を引き受け、東京や福岡など遠方からも駆けつけてくださった。
 応募総数は6万4223句。昨年同様、中学・高校部門は膨大な数であるため、本学文学部日本語日本文学科の教授陣らによる事前選考が行なわれ、絞った後の作品があらかじめ先生方の手元に送られている。そして選考会に先立って、部門ごとに特選3句=3点、秀作10句=2点、入選30句=1点を投票していただき、高得点の順に作品が並んだ用紙をもとに最終選考が始まった。
 進行は昨年と同じ、龍谷大学非常勤講師の茨木先生。「単純に予備審査の点数だけで選ばず、とことん論議して選びたいと思います」と選考がスタート。
 まずは中学生部門。「みずみずしい」「直感的でいい」「レベルが高い」「無理がなく素直」と先生方の笑顔がほころぶ。力作ぞろいだけに選考は難航するが、ひとつずつ読んでみましょう、と一句一句、丁寧に読み上げては、選び漏らしはないか確認作業が続く。
 複数句が最終選考に残った人については、上位の賞を優先として多くの人に賞が与えられるように配慮することになった。高校生部門になっても、「元気がある」「映像的」「うまい」「面白いね」先生方の絶賛は続く。「え、男の子の作品だと思ってたら女の子だったの」と寺井先生が笑い出す。予備審査では名前や性別、学年などが分からない「作品」だけの審査だからだ。「だからね、これからは女性の世の中なんですよ」と有馬先生。
 ここで類似句が問題になった。過去の句によく似た表現があるものをどうするか、という判断は難しそうだ。ありふれた印象が強いものはやはり点数が辛くなったり、選から落ちる。
 いよいよ大学生部門。昨年、先生方は「レベルが低い」「低調」とご機嫌が悪かったのでハラハラしたが、「昨年よりはるかに良い」との声にホッ。しかし、「昨年よりデレデレしたのが少なくなったが、高校生より子どもっぽいね」「甘い」とビシビシ。結局、短大・大学生部門は15句を選んで終了となった。
 英語部門は昨年に引き続き、芭蕉の研究者として知られるウルフ先生が担当。「長すぎて、俳句というより詩になってしまった作品が多いのは残念」とのこと。
選考を終えて、先生方は中学・高校生部門の選考は楽しかったと口をそろえる。学校単位で俳句に取り組む指導者をねぎらう言葉が多く出た。「季語の使い方に広がりが出て的確になった」と山田先生。大峯先生も「俳句の前提は、有季。つまり季語でとらえていく小宇宙。季節の言葉がいろいろな連想をさせ、理屈ではなく直感で時の流れを止めている句が少なからずあった」と満足そう。先生方が評価されるのは、「新鮮さ、子どもらしい思いがけない着想、イキイキとした発見や驚き」だ。
 とにかく、先生方の若い人たちに向ける愛情や熱心な姿勢には頭が下がる。昨年度、出版した作品集も「なかなか良かった」とお褒めいただけたが、短大・大学生部門の応募者を増やすために広報活動を徹底すべきとのお叱りを受けた。第3回には「青春俳句大賞」のつぼみがさらに大きく膨らむように努力することを肝に銘じたい。

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