人短信「受賞」特集 巻頭で紹介した課外活動のほか、卒業生や在学生から各分野でぞくぞくと受賞の知らせが届いた。今回は4名の方に喜びの声を聞いてみた。

「今昔物語集の表現形成」で、第32回(平成16年度)金田一京助博士記念賞を受賞
藤井 俊博(ふじい としひろ)さん
同志社大学文学部教授(国語学) 1987年大学院文学研究科博士 後期課程単位取得満期退学 博士(文学)

著作を手にする藤井さん。『今昔物語集の表現形成』は昨年11月に和泉書院から刊行(367頁/9450円) 「いやーホントうれしかったですね。歴代の受賞が権威ある方々ばかりで、一緒に名前が並ぶなんて名誉の一言です。20年かけてじっくり研究を重ねた甲斐がありました」と、受賞の連絡を受けた瞬間を振り返る。
 今昔物語集は、和文体と訓読体が融合し和漢混合文体を形成したことで、近代的文体の先駆けとして歴史的に重要な作品であり、その表現の形成が「法華験記」の影響によるものであることを実証的に解明したことが高く評価された。
 今昔物語集との出合いは高校時代にさかのぼる。耽美な王朝文学と比較するとゴツゴツした感じで、そのリアルな表現にひかれたそうだ。もともと古典が大好きだった藤井さんは、特に文法に関心が高く、文法学者による参考書を約10冊も読み比べ、その解釈を比較することを好んだという。すでに研究者としての資質が宿っていたのかもしれない。

 さらに、研究を進めようと本学大学院に進学。「龍大は伝統があって、先生方がすごく充実していますし、図書館の蔵書は魅力的でした。今まで複写でしかお目にかかったことがない資料の原本がゴロゴロあって、研究に拍車がかかりましたよ」
 その後、秋本守英教授(現名誉教授)の指導を受けながら永年の研究をまとめたこの論文で、2003年博士号を取得。昨年12月19日、三省堂文化会館で行なわれた授賞式には、同教授も来賓として出席された。
 「これからは芥川龍之介の作品など近代文学の作品にも視野を広げながら、日本語の表現に見られる普遍的な特徴を探っていきたい」と、目を輝かせて語る藤井さん。さらなる挑戦の始まりである。

2004年度後期日本卓球リーグで、新人賞を受賞
夏  娜(しゃ でぃな)さん
アスモ(株)勤務・女子卓球部所属 2004年経済学部卒業

開発部での勤務を終え、体育館で汗を流す夏さん 自動車用小型モーターの生産量世界一を誇るアスモ(株)(本社 静岡県湖西市)に入社した直後、大学とのレベルの違いに愕然とした。チームメイトに全く歯が立たず、負け試合が続く。留学で9月に入学した夏さんにとって、大学4年生の時は卒業年度の違いから試合に登録できず、約1年間実践から遠ざかったのも影響した。そんな時、大学時代の友人から激励のメールが届く。「負けたことは仕方がない。次こそは勝とう」と練習に専念した。
 入社して3ヶ月後に迎えた初めての日本リーグ。初戦の中国電力戦では、自分の卓球ができず敗退。「1戦1戦その試合に集中しよう」と気持ちを入れ替えた2戦目の日立化成戦。2対2と両チーム譲らず、ここで負ければ勝ち星を落とすという5回戦に登場。「日本に来て一番緊張した」という試合だが、約200人に上る大応援団の後押しに、3対0の快勝で見事声援に応えた。「これで負けたら、卓球を辞めるつもりでした。みんなの声援がパワーを与えてくれた。もう大丈夫、やっていける自信が持てました」と振り返る。
 その後も快進撃を続け、日本代表で世界選手権出場経験者を破るなど5勝2敗の戦績で新人賞を獲得。その活躍はチームを前期7位から5位
へ導き、ジャンプアップチーム賞の受賞にもつながった。 卓球部の酒井新二部長は、「今は1番手で使う機会が多いですね。彼女の勝利で次に出る選手の士気が上がるんです」と信頼を寄せる。
 「今一番楽しいのは、練習が終わった土曜日の夜。私が中華料理を作って、チームメイトと食事する時間です」とすっかりチームに溶け込んだ夏さん。「私にとって新人賞はたいした事ではないです。だって、目標はリーグ優勝なんだから」と、キッパリ言い切った。
 
新星堂オーディションCHANCE!2004でグランプリを受賞
三浦 明利(みうら あかり)さん 
文学部史学科仏教史学専攻3年生(大阪・東大谷高校出身)

ライブを無事終え、Moga Hoopのメンバーと。 右から二人目が三浦さん。 音楽業界の大手である新星堂が主催するオーディション “CHANCE!2004”の全国大会が100月に東京で開催され、女性4人組のバンド “Moga Hoop” (モガ・フープ) が15000組の頂点に立った。
 「このメンバーと出会えて良かった。感謝しています」と話すのはこのバンドでギターを担当する三浦明利さん。中学3年生からギターを独学で始めたという三浦さんは、高校時代に知り合ったメンバーと昨年4月にMoga Hoopを結成。7月に開いた初ライブからわずか4カ月弱でのグランプリ受賞に、彼女たちの音楽性の高さが伺われる。
 Moga Hoopはジャズ・ポップ・ロック・サンバなどあらゆる音楽の要素を含む楽曲を持ち、京阪神を中心に活動している。昨年8月に行なわれた “第4回関西エリアオリジナル・ミュージック・コンテスト”でのグランプリ獲得を機に今年1月、初のマキシシングル「Moga Hoop」をリリース。三浦さんが作詞・作曲を手掛けた曲も収録されている。
 バンド名のMogaは「モダンガール」の略。今までにない新しい音楽を4人の輪(Hoop)でもって奏でたいとの思いが込められている。ピアノ演奏とともに流れてくる曲は、なるほど “モダン”な感じでしっとりと聞かせる。
 「年内に2枚はCDを出したい」という三浦さん。「せっかく仏教を学んでいるので讃歌や声明を取り入れてみたい」と作曲に意欲を燃やす。今は2枚目のCD作成に向けレコーディングと忙しい日々を送っているが、「充実しています」と表情はすがすがしい。メジャーデビューへ向けて彼女たちの夢が動き出した。

【Moga Hoopホームページ】
http://homepage3.nifty.com/akarimiura/

第59回 文化庁芸術祭演芸部門 優秀賞  第33回 上方お笑い大賞 最優秀技能賞を受賞
林家染二(はやしや そめじ)(本名・吉田忠史 よしだ ただし)さん 
社団法人上方落語協会所属 落語家 1985年法学部卒業

「二十周年記念・林家染二独演会」で熱演する「二十周年記念・林家染二独演会」で熱演する林家染二さん。  「4年生の時に入門してから今まで、がむしゃら走ってきた気がします。噺家は20年で1人前。これからが本当の勝負。上方落語の次代を担えるよう芸道に精進したいですね」と語る林家染二さんは昨年10月6日、芸歴20周年の区切りとして「二十周年記念・林家染二独演会」を開いた。
 20年の総決算として臨んだ演目は大ネタの「地獄八景亡者戯」と「立ち切れ線香」。場内を感動一色に染めあげた染二さんの好演は、平成16年度文化庁芸術祭演芸部門の優秀賞をもたらした。
「今回で2度目の受賞となり喜んでいます。前回は受賞により龍谷奨励賞をいただきましたので、その喜びがよみがえりました」
 染二さんが二代目林家染二(現四代目染丸)さんに入門したのは昭和59年9月。当時の芸名は染吉。龍大卒業と同時に内弟子修行に励み、桂三枝さんが主宰する創作落語派として注目される一方、古典落語の精進を怠らなかった。
 そんな地道な努力のたまものが平成5年、NHK新人演芸大賞優秀賞の受賞だ。平成8年には大阪文化祭賞奨励賞を受賞。これを契機に翌年には三代目林家染二を襲名し、林家一門の総領弟子として次代を担う立場に。1度目の優秀賞獲得となった平成10年度文化庁芸術祭に至っては、新人賞を飛び越え、上方落語界において最短の芸歴での受賞となるなど、実に活躍は目覚ましい。
 芝居噺とともにハイテンションで演じる滑稽噺を得意とする染二さんのパワフルな高座は人気が高く、昨年12月には第33回上方お笑い大賞(読売テレビ主催)で最優秀技能賞を獲得。
 上方お笑い界を代表する賞の受賞にも「上方の顔になれるよう頑張ります」と謙虚に語る。
「独演会では校友の皆様にご支援いただき感謝しております。どちらへでも参りますので私の落語に是非ふれてください」という染二さん。芸歴20周年を迎え、ますます円熟した話芸を堪能しに寄席へ出かけてみてはいかが。
染二さんの落語会情報はHP:http://www1.udn.ne.jp/~someji/

 
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