龍谷 2006 No.61

龍谷スポーツ 野球部/特別企画 座談会 だから野球はやめられない!

昨シーズン9勝を挙げ、リーグ優勝に貢献した阪神タイガースの杉山選手。
昨年のドラフト会議で福岡ソフトバンクホークスに6位指名された柳瀬明宏さん。
杉山選手が4年生の時、柳瀬さんは1年生。
ちょうどその年に野球部監督に就任したのが現監督の椹木寛さんです。
いずれも龍谷大学野球部出身・在籍の方々です。
今回はそんな皆さんに、野球の楽しさについて自由に語り合ってもらいました。

集合写真
(右から)杉山 直久、椹木 寛、等々力賢治、柳瀬 明宏

杉山直久
杉山直久
(すぎやま・なおひさ)
阪神タイガース投手
 
柳瀬明宏
柳瀬明宏
(やなせ・あきひろ)
福岡ソフトバンクホークス6位指名・経済学部4年

大らかさが残るスポーツ

等々力 一時期の勢いがないとは言うものの、野球は日本人にとって最も身近で人気のあるスポーツです。面白さの秘密はどんなところにあるのでしょうか。
椹木 集団競技なのに個人がクローズアップされやすく、プレイヤーそれぞれの活躍と評価がきちんと見えるスポーツだからじゃないでしょうか。
等々力 集団競技の中に一対一の対決があるということですね。
柳瀬 バットとグローブという二つの道具を使い、走・攻・守三つのスキルが問われる点も、他にはない野球ならではの特徴だと思います。守備を終えたらバットを持って一人で打ちに行く。まるでサッカーのPK戦のような緊張状態が常にありますし、バットとグローブの両方に長じるのは難しい。そんなところも魅力になっているんじゃないでしょうか。
杉山 ルールが簡単で子どもにも分かりやすく、試合時間に制限がなくて、球場によって大きさも違います。外野のフェンスまで92mの球場もあれば100mの所もある。そんな中で国際試合もやっているんです。ある意味では大らかさが残っているスポーツだとも言えます。
柳瀬 昨年のシーズンもそうだったんですが、0対3から9回の裏で逆転したりとか、最後の最後まで勝負の分からない試合が多いのも野球の醍醐味の一つですね。
等々力 「ピッチングの妙」も野球の面白さだと思いますが、いかがですか。
杉山 そうですね。プロになってそれを感じました。打たれた球もさることながら、打たれる前の球がとても大切です。入団1、2年はキャッチャー任せの配球だったのですが、昨シーズンは自分の判断も入れるようになりました。
椹木 監督としての野球の面白さは、皆なを動かし一つに束ねる役割、一人ひとり異なる能力や個性を考えながら試合を組み立て、選手を育てていく喜びですね。難しいことですが、それだけにうまくいった時の喜びはひとしおです。
等々力 野球の監督とオーケストラの指揮者は一度やったらやめられないと言いますからね。みんな初めから野球の面白さを知っていたわけではなく、やってみて面白さに目覚めたと思うのですが、皆さん、どんなきっかけで野球を始められましたか。
杉山 僕は物心がついた頃から親が軟式野球をやっていて、練習や試合に連れて行かれ、ボーイズリーグにも所属しました。これが始まりです。中学時代は補欠。レギュラーで試合に出たいからと、野球校ではなく普通の高校(京都府立東舞鶴高校)に進みました。
柳瀬 僕も小学校1年生の時に兄と公園で野球をしたのが始まりです。甲子園に行きたくて高校(広島・如水館高校)へ進学、龍大に入ってから内野手から投手に転向しました。
椹木 私はソフトボールから入りましたね。子どもの頃に稲刈りの後の田んぼでキャッチボールや三角ベースをしたのが最初です。中学で本格的にやり始め、高校(京都・大谷高校)で甲子園(選抜)に出場、龍谷大学では選手として関西六大学の初優勝を体験しました。宗教系の学校を歩んできたため「おかげさまで」の感謝の気持ちを教えられ、それまで人からいただいた指導や恩師の思いにお返ししたいと、指導する方へ関心が向いて監督になりました。

椹木 寛
椹木 寛
(さわらぎ・ひろし)
野球部監督
 
等々力賢治
等々力賢治
(とどりき・けんじ)
進行役/
野球部部長・法学部教授

野球も社会も大切なのは謙虚さ

等々力 昨シーズンはいかがでした。
杉山 オープン戦で打たれて、ピッチングコーチと相談、フォームを変えたのが転機となりましたね。いわばゼロからのスタート。気持ちを切り替えられたのが9勝できた要因だと思っています。コーチの息子さんも龍谷大学野球部出身なので縁を感じます。
柳瀬 春のキャンプは「今年はやるぞ!」の気持ちで臨んだのですが、気持ちが空回りしたというか、春から調子が出ませんでした。秋はひじを壊してベンチにも入れなかったのですが、外から見る体験ができ、「いいチームだなあ」と改めて感じられたのが収穫です。
椹木 監督として4年目のシーズンを迎え、どうしても優勝したいと春のキャンプから力を入れたのですが、春は勝てませんでした。秋は柳瀬君がひじの故障に見舞われてどうなるかと思ったのですが、それが逆に皆なの危機感となって一丸となれ、優勝できました。野球は「柱」がなくても、皆なで一丸となれば何とかなるスポーツ。それを再確認できた年でしたね。
杉山 プロになってみて、成績が直接自分にのしかかってくることを実感しています。高校や大学で野球をやっていたときに比べて生活態度や練習姿勢も変わり、これまでやらなかったウエイトトレーニングも毎日やるようになりました。
椹木 プロになったおかげで贈り物をもらったとも言えますね。セリーグの強打者相手に9勝! 杉山君はストレートで勝負できる投手になりつつあります。ストレートが速ければ変化球の効果も高まります。球も高めにいかなくなりましたしね。
杉山 そんなことないですよ(笑)。
等々力 柳瀬君は4月からプロになるわけですが、杉山君、プロの先輩として何かアドバイスはありますか。
杉山 ソフトバンクは顔がよくないと入れないですよ(笑)。まあ冗談はさておき、プロではほぼ毎日試合がありますので、体調管理がとても大切になってきます。先輩の話をじっくり聞いて、体調管理に心掛けてください。
椹木 柳瀬君は度胸があります。でも度胸だけではプロで勝負できません。度胸と技術が合わないといけない。キャッチャーには常に頭を下げてかわいがってもらい、指導を受けるように。かわいがってもらうことは野球に限らず実社会でもとても大事なことです。
等々力 柳瀬君は人柄がいいから、得ですよね。プロだって人間だから。ところで、二人から見た監督はいかがですか。
杉山 大学時代、社会に出て通用する人に育てようとの気持ちが伝わってきましたね。あいさつや礼儀を厳しく教えられました。
柳瀬 入学する前、龍大野球部のキャンプに参加したのですが、礼儀をやかましく言う人だと感じた記憶があります。同時に、選手が暗く落ち込んでも、チームをいい雰囲気に変えてくれる人だなあとも思いました。社会人になって役立つことをたくさん教えてもらいました。試合中は怖い時もありましたが(笑)。
等々力 うまくいかないときはベンチでイスをけっ飛ばしてましたからね。でも、この4年間で監督の雰囲気は随分変わったと思いますよ。ただ、「人としてやらなければならないことはきちんとやりなさい」という基本は変わっていませんね。
椹木 プロに行く人はそれなりに自信があるだけに謙虚さを忘れてはいけません。
等々力 謙虚になって、自分を育ててくれた社会へ何かを返してほしいですね。野球はもちろん、例えば阪神の赤星選手が盗塁の数だけ車いすを寄付しているような形ででも。そういう選手になってほしい。

自分の持ち味を生かして道を開く

等々力 今シーズンの抱負はいかがですか。
杉山 昨シーズンは9勝を挙げましたが、防御率が2点台だったことと投球が規定回数に達しなかったことが悔やまれます。開幕時点で1軍にいなかったのが原因です。今年はぜひ開幕1軍を目指したいですね。
等々力 2年間低迷して昨年いい成績だったということは、次のシーズン、つまり今年の成績が問われます。一時的なものか本物かと。頑張ってください。
椹木 杉山君の前途が揚々とし始めた今こそ、落とし穴が待ちかまえているとも言えます。常に謙虚に感謝の気持ちでやっていってほしいですね。せっかく親鸞の教えを説く龍谷大学で学んだのですから。
柳瀬 僕は、開幕1軍は無理でも、まずは1年を通して投げられる体力を付けることが目標です。プロでは無理かと思っていた僕ですが、杉山さんの試合をテレビで見ていて頑張ろうという気持ちが生まれました。自分の持ち味が出せたら何とかなりそう、せめて後半には1軍で投げてみたいなと思っています。
椹木 4年間監督をさせてもらいました。5年目は結果を求められると思っています。何ができるか、不安はありますが、ガッツと選手とのコミュニケーションで乗り切るつもりです。
等々力 昨秋は優勝を果たしました。部長の立場としては、今年はぜひとも神宮へ連れて行ってほしいと願っています。


■龍大出身の現役プロ野球選手 (2006年2月現在) *入団年度順
氏 名 球団名 ポジション 背番号
益田大介(ますだ・だいすけ) 東北楽天ゴールデンイーグルス 外野手 40
滝川二高→龍大→中日(1995年・ドラフト6位)→近鉄(2001年)→東北楽天(2005年)
上原茂行(うえはら・しげゆき) 東京ヤクルトスワローズ バッテリーコーチ 70
京都西高→龍大→ヤクルト(1997年)
正津英志(しょうつ・えいじ) 西武ライオンズ 投 手 25
大野高→龍大→NTT北陸 →中日(1997年・ドラフト3位)→西武(2005年)
河端 龍(かわばた・りゅう) 東京ヤクルトスワローズ 投 手 26
西城陽高→龍大→ヤクルト(1998年・ドラフト5位)
吉川勝成(よしかわ・かつなり) オリックスバファローズ 投 手 99
天理高→龍大→近鉄(1999年・ドラフト9位) →オリックス(2005年)
木元邦之(きもと・くにゆき) 日本ハムファイターズ 内野手 10
京都西高→龍大→日本ハム(2000年・ドラフト2位)
杉山直久(すぎやま・なおひさ) 阪神タイガース 投 手 18
東舞鶴高→龍大→阪神(2002年・自由獲得枠)
齊藤信介(さいとう・しんすけ) 中日ドラゴンズ 投 手 38
高松第一高→龍大→NTT西日本→中日(2006年・ドラフト6位)
柳瀬明宏(やなせ・あきひろ) 福岡ソフトバンクホークス 投 手 56
如水館高→龍大→ソフトバンク(2006年・ドラフト6位)

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