龍谷 2007 No.64

RYUKOKU SPORTS 世界に挑戦する 龍大女性選手たち



世界に挑戦する 龍大女性選手たち



渕瀬 真寿美さん

渕瀬 真寿美さん
高校時代の「失格」をバネに

 8月25日開幕の世界陸上選手権大阪大会(以下、世界陸上)日本代表として、渕瀬真寿美さんが女子20km競歩に出場した。
 今年1月に行われた日本選手権で日本記録を樹立。故障上がりで迎えた大会で、彼女自身「夢にも思っていなかった」という世界陸上への切符を手にした。在校生が世界陸上に出場するのは、龍谷大学史上初めてという快挙である。
 渕瀬さんが競歩と出合ったのは高校時代。陸上競技部で故障したとき、リハビリとして行なったのが最初だと言う。実は、それまで「競歩」という競技があることさえ知らなかった。なのに、その競技に惹かれた。「人と一緒だと気を遣ってしまう。一人で黙々と練習するのが好き」。部員の中で他に選手のいない競歩は、そんな気性に合っていたようだ。
 競歩の特徴的なルールは2つ。一つは、両方の足が同時に地面を離れてはならないこと。もう一つは、足が着地してから体の真下に来るまで膝を伸ばしておくこと。これに違反するとイエローカードが出て、累積すると失格になる。
 渕瀬さんには苦い思い出がある。高校3年生のインターハイ予選で、1位でゴールしたのに失格となった。「そのときの悔しさ、このままでは終われないという気持ちが、私をここまで連れてきました」。根っからの負けず嫌いなのである。

渕瀬 真寿美さん
渕瀬 真寿美さん
8月31日世界陸上選手権での
渕瀬選手
壮行会の様子
世界を怖がらず、普段どおりの展開を

 大学でも競歩をやっているのは渕瀬さんただ一人。練習メニューも自分で作る。「そうはいっても、澤田監督をはじめ、部員やゼミの先生など、皆さんの理解と協力があるからやっていられるんです。感謝しています」。
 壮行会を開いたり、横断幕や似顔絵の入ったおそろいのTシャツを作ったりと、大学関係者や陸上部員の後押しにも熱が入る。周囲が盛り上がるなか、「まだまだ新人。世界との戦いは、想像がつきません。でも、怖がらず、普段どおりの展開に持っていきたい」と、冷静さを忘れない。
 物静かな語り口だが、ひと言ひと言から芯の強さが伝わってくる。日ごとに高まる期待をプレッシャーと感じるどころか、戦うパワーに変えている、そんな気にさえなる。
 結果は27位でのゴールとなった。目標であった「日本人選手でのトップ」「8位までの入賞」には届かなかった。しかし、今回の大舞台での経験と、持ち前の勝負へのこだわりの強さで2008年北京オリンピックにつながる新たな活躍をみせてくれるに間違いない。



亀本 伊純さん

亀本 伊純さん
猛アピールで勝ち取った代表の座

 8月8日からタイ・バンコクで開催される第24回ユニバーシアード競技大会のソフトボール日本代表17名の1人として、亀本伊純さんが選出された。亀本さんは、1番センターとして走攻守揃った好選手。関西リーグでは首位打者を獲得した経験もある。
 全国から40名以上の選手が集まった4月の選考会で、「足には自信がある」と、守備では果敢に左右に動き回り、攻撃時にはバントや盗塁を試みるなど、俊敏さと積極性を選考委員に猛アピール。狭き門をくぐり抜け、晴れて代表の座を勝ち取った。
 亀本さんの座右の銘は「お互いさま」。高校時代の監督の口癖である。「部員にはそれぞれ役割がある。メンバーに選ばれた人も、そうでない人も、お互いが協力してこそチームワークが生まれ、強くなれる」。
 その監督のもと、3年生で全国大会優勝を果たした。
 ますますソフトボールにのめり込み、大学も強豪チームと評判の龍大を選んだ。自分の長所を生かし、磨きをかけた。その積み重ねが、4年生という学年最後の年に、大きなチャンスを与えてくれた。ソフトボールがユニバーシアードで行われるのは大会史上初。そんな記念すべき舞台に、亀本さんは立つ。

亀本 伊純さん
亀本 伊純さん
機動力を活かし全力を出し切る

 代表に選ばれたとき、はじめは信じがたい思いだった。だが、合宿での厳しさが現実だと告げた。選ばれた喜びや誇りと共に、プレッシャーも味わいはじめた。それを振り払うように、練習に打ち込む。大柄で力のある外国選手を想定して、男子のソフトボールチームと練習試合を行い、速いボールへの対応策も練っている。
 また、大会のボールは、日本で使っているものより硬く、重い。気候も風土も異なるなか、小柄な日本チームにとって、過酷なまでのタフな試合が予想される。
 そこで考えたのは、「小柄であることを逆に活かし、機動力を使って相手をかく乱する」という作戦。ちなみに、亀本さんの身長は153cm。ユニホーム姿でなければ、日本を代表する選手だとは誰も気づかないだろう。しかし、そこは百戦錬磨の彼女。「今大会の目標は?」と尋ねると、即座に「もちろん優勝です!」と、頼もしい答えが返ってきた。
 「自分のソフトボール人生の集大成として全力を出し切り、ユニホームの
「JAPAN」に恥じない責任あるプレーをしたい」と決意を語る亀本さん。
 日本代表は銅メダルを獲得。亀本選手は3位決定戦に代走で出場し、見事盗塁を成功させチームの勝利に貢献した。


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