龍谷 2007 No.64

私のミュージアム28 長崎歴史文化博物館

楽しい仕掛けやアイデアがいっぱい。緑の森によみがえる、近世長崎の海外交流史。

長崎歴史文化博物館
長崎歴史文化博物館
●特別企画展 シーボルトの水族館
<平成19年7月7日〜9月2日まで>
シーボルトが長崎で収集し、ヨーロッパに持ち帰った魚のはく製の数々などを展示。
 緑豊かな諏訪の森に寄り添って立つ建物を見たとき、その威風堂々とした姿に圧倒されそうになった。真新しい白壁と石垣の外壁が続き、その向こうに、シャープな黒色の屋根がのぞく。まるで、海外交流というテーマをそのまま表現したように、和風建築と近代建築が融合している。
エントランスを入ると、開放的なアトリウム。フロアはバリアフリーというやさしさにあふれ、明るいくつろぎのスペースが広がっていた。
 ここは全国でも有数の「海外交流史」をテーマにした歴史博物館。東西文化の拠点であった長崎の約400年に及ぶ海外交流の歴史を物語る資料約4万8000点を収蔵し、選りすぐりの史料を公開。また、1年に数度、企画展を開催する。
 この博物館の特色のひとつが、展示方法である。最新のI
T技術を駆使して、屏風絵や絵巻物を拡大したり、スクロールしたりして、より詳しく展示物を見ることができる。また、C
Gを使った装置や、クイズ形式の展示もあり、大人から子どもまでを飽きさせない。
 さらにユニークな特色となっているのが、長崎奉行所立山役所の一部を復元していることである。同地にあった長崎奉行所を、発掘調査と当時の資料をもとに忠実に復元したもので、鬼瓦や建具、襖も当時のままに再現。お白州もあり、時代劇の世界に迷い込んだような気にさせてくれる。
 長崎歴史文化博物館がオープンしたのは2005年11月3日。4年で100万人の入場者を見込んでいたが、1年半を経過したこの6月にらくらく突破した。博物館とは「勉強する場」という堅苦しいイメージから、「楽しく学べる場」へ。そんな新しいコンセプトが人々に受け入れられたことを、その数字は如実に語っている。


長崎歴史文化博物館

●工芸展示
●工芸展示
長崎の陶磁器・漆器・青貝細工・ガラスなど、数多くの貴重な美術品を展示。
●お白州
●お白州
長崎奉行所ゾーンには、リアル感いっぱいのお白州が。
週末・祝日には、長崎ならではといえる、密貿易者や漂流民のお裁き風景を寸劇で再現し、人気を博している。

●南蛮屏風(南蛮人来朝之図)
●南蛮屏風(南蛮人来朝之図)
南蛮船の入港や西洋人の風俗を描いたもの。近世初期の長崎は、海外貿易によって賑わった。このほかにも、当時の貿易をしのばせる多くの資料がある。
●大航海時代の地図
●大航海時代の地図
常設展示室では、長崎の海外交流の姿を一挙に公開。
キリシタン時代から幕末までの貿易都市長崎を目の当たりにすることができる。


【 歴史と平和のまち 長崎 】

●平和公園/平和祈念像
●平和公園/平和祈念像
平和祈念像の天をさした指は原爆の脅威を、水平に伸ばした手は平和を、閉じたまぶたは冥福の祈りを表している。
●グラバー園
●グラバー園
幕末から明治にかけて建てられた9棟の洋館を移・再築。庭からは長崎市街や長崎港が一望でき、心が和む。
●出島
●出島
鎖国中の江戸時代にオランダ貿易などの拠点だった出島が再現されている。写真はミニチュアの出島。




越中 勇さん

長崎歴史文化博物館主任研究員
越中 勇(えっちゅういさむ)さん
1965年 
文学研究科国史学専攻修士課程修了

 前身である長崎県立美術博物館の学芸員を長年務め、長崎県美術館と長崎歴史文化博物館に分かれ、新たなスタートを切ると同時に当館の研究員に就任。県と市が共同で作った新しい組織体での再出発でした。なにしろ、ずっとこの道一筋ですから、新しい職場でも主みたいなもの(笑)。新しい歴史を刻みはじめた当館の、若いスタッフたちを陰からバックアップしています。
 私は長崎市のお寺の息子として生まれ、兄に続いて龍谷大学へ。そのころから歴史に興味があったので史学を専攻しました。学生時代は、日本の考古学の第一人者である故網干善教先生、大阪歴史博物館館長の脇田修先生、龍谷大学元学長の千葉乗隆先生など、日本を代表する立派な先生方の教えを受け、日本の歴史研究に没頭。長崎に帰ってからも、個人的にも近世の長崎文化史に惹かれ、今日まで研究を続けてきました。
 当館に展示されているのは、長崎という土地の歴史であるとともに、近世における日本の歴史であり、世界の歴史でもあります。展示品も、庶民の生活がしのばれるものから、貴重な絵画や工芸品まで、長崎におけるあらゆる歴史的な資料を一堂に集約。出島で行われたオランダとの貿易など、長崎ならではの海外交流を身近に学ぶことができ、まさに歴史と一体化できる博物館だと自負しています。
 ただ観るだけではなく、「より深く観たい」「もっと知りたい」という好奇心を刺激する仕掛けや工夫が盛りだくさんな当博物館へ、ぜひ足をお運びください。


地図
■ 開館時間

■ 休館日


■ 入館料




■ 交  通



■ 問い合わせ

8:30〜19:00

第3火曜日
(祝日の場合は翌日が休館日)

大 人600円 
高校生400円 
小・中学生300円
※団体割引あり・企画展は別料金

JR長崎駅より路面電車「桜町」下車、徒歩5分。
路線バス「桜町公園前」下車、徒歩3分。
らんらんバス「長崎歴史文化博物館」下車。

TEL 095-818-8366
http://www.nmhc.jp/


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