龍谷 2007 No.64

私のミュージアム29 宇治市 源氏物語ミュージアム

王朝の華やぎと憂愁を再現。雅なる『源氏物語』の世界への誘い。

長崎歴史文化博物館
長崎歴史文化博物館
水鳥が羽を休め、釣り人が糸を垂れるのどかな宇治川。
そこに架かる宇治橋東詰から北に向かい、信号を右に折れると、まもなく「源氏物語ミュージアム」が迎えてくれる。
平安ロマンの薫り高い王朝世界へ、『源氏物語』研究を専門とする、龍谷大学の安藤徹准教授(教員NOW参照)と訪れた。


 平安時代の女性作家・紫式部が書いた『源氏物語』は、世界最古の長編小説といわれ、執筆の時期は定かではないが、『紫式部日記』の1008(寛弘5)年の記事の中に物語の登場人物の名前が見える。
 それから、今年でちょうど千年。長い年月を経て今日まで読み継がれてきた物語の、後半部にあたる十帖の主な舞台は宇治であり、「宇治十帖」の名で呼ばれている。
 その宇治の地に開館した源氏物語ミュージアムは、「源氏物語をテーマとしたまちづくり」を推進する宇治市が、そのコア施設として1998年に開館したもの。本年1月4日には、予想よりはるかに早く、来館者100万人を達成した。
 折しも京都市や宇治市で源氏物語千年紀の事業が展開される中、一日の来館者は今年に入ってから例年の2倍に、また週末には3倍にもなる盛況ぶり。人々の関心の高さをうかがうことができる。

 ミュージアムのエントランスを通って最初に足を踏み入れる「春の部屋」は、物語の主人公である光源氏が華やかに活躍した光りの世界を表現。光源氏の住まいである六条院の模型、調度品などから、栄華を極める光源氏の雅やかな暮らしぶりを垣間見ることができる。
 光源氏亡き後、物語の主な舞台は宇治に移るが、「秋の部屋」は、その宇治十帖の世界をイメージしたもの。雲間から降り注ぐ青白い月光の下、光源氏の子・薫が宇治の大君の姿に心を奪われるという有名な「橋姫」巻の場面を立体再現している。
 また映像展示室では、篠田正浩監督の映画「浮舟」を上映(約20分)。人形師ホリ・ヒロシ制作の人形はときに気品に満ち、ときに妖艶に、あるいは鬼気迫る雰囲気で、観客を物語最後の女君・浮舟の世界へと誘う。
 なお、同ミュージアムはこの夏には一時休館。さらに工夫を凝らして、9月初旬にリニューアルオープンの予定だ。


宇治市 源氏物語ミュージアム

春の部屋 春の部屋 春の部屋
32面マルチ画像 四季の移ろいや『源氏物語』の世界を映像化 牛車・女性の装束・貴族の女性の部屋(調度品)

春の部屋  
光源氏の住まいである六条院の模型(1/100)  

秋の部屋 秋の部屋  
宇治十帖「橋姫」巻の垣間見場面を立体再現
宇治十帖の解説展示
 

宇治十帖の舞台へ。古跡をめぐり、千年の昔の物語に想いを馳せる。

「宇治川があって、宇治橋があって、平等院があって…。
この近辺は京都から電車で20分もかからないのに、
平安貴族の別荘地だったことを髣髴させる独特の趣があります。
春は桜、夏は花火大会、秋は紅葉。
四季折々のかけがえのない自然と一体となった風情を見ると、 物語の舞台となった理由も何となくわかる気がします。
『源氏物語』の世界を五感で味わうのにふさわしい町ですね」
(安藤准教授)
安藤准教

豊かに水をたたえ、歴史を刻む宇治川。
豊かに水をたたえ、歴史を刻む宇治川。
宇治上神社
宇治上神社
さわらびの道をたどり、宇治上神社へ。
この社は1994年、平等院とともに世界遺産に登録された。本殿の中の3つの社が現存する最古(平安後期)の神社建築であることと、鎌倉時代に建てられた拝殿が平安時代の住宅様式をとりいれた建物だからとか。世界文化遺産というにはひっそりとしていて寂しささえ感じるほど。しかし、それだけにじっくりと国宝と向かい合える場所でもある。
平等院参道
平等院参道
宇治川に架かる朝霧橋を渡り、平等院参道を散策。四季を通して人影が絶えることはない。

昇苑くみひも
昇苑くみひも 昇苑くみひも

伝統を受け継ぐ京組紐の店。
昔からの手組みの帯締め、正絹の風合いと光沢を大切にしたストラップやカードケースなどが並ぶ。色も形もやさしく心が和む。写真は組紐のストラップ。
中村籐吉平等院店
中村籐吉平等院店 中村籐吉平等院店

宇治茶で有名なこの店は、
豪商菊屋久左衛門の別邸として建てられ、後に宿となった建物を改装したもの。過去と現在が行き交う空間で味わう軽食やスイーツは、どれも美味。
 
●藤吉うどん(抹茶)720円
●手作り生茶ゼリイ(抹茶)720円

地図
■ 開館時間


■ 休館日


■ 入館料


■ 交  通




■ 問い合わせ

9:00〜17:00
(入館は16:30まで)

月曜日(祝日の場合は翌日)
年末年始(12/28〜1/3)

大人 500円
小・中学生 250円

京阪宇治駅より徒歩10分
JR奈良線宇治駅より徒歩15分
近鉄大久保駅からバス約15分、
京阪宇治下車徒歩10分

0774-39-9300


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