龍谷 2008 No.65

龍谷人

木村 翼沙(きむら つばさ)さん 伝統を踏まえながらも
自由なイメージ。
「書」の新たな領域をめざす。


書家
木村 翼沙(きむら つばさ)さん
2001年龍谷大学文学部仏教学科卒業
HPアドレス
http://www.k2.dion.ne.jp/~tsuba-sa

 大きな布や、木箱など立体的な物体に書かれた漢字とかな文字。竹に転写された墨文字。どちらも書かれているのは自作の詩。見る者の目を魅きつける木村さんの作品からはかなり斬新な印象を受ける。
  「よく前衛的といわれるのですが、私の書はあくまで伝統書の基本を踏まえたもの。文字も崩し過ぎないこと、書き順を守ることを前提にしています」。デフォルメをしても、美しい文字の形を知っているから、ぎりぎりまで崩せるのだという。
  書道を始めたのは小学校低学年の頃。6年生まで続けたが、中学・高校時代は遠ざかっていた。再開したのは大学に入学してから。書道サークル「蟠龍會」に1年間所属、指導に来ていた書家の真神巍堂氏には個人的にも師事、2年生からは伝統書と前衛的な書の2つの教室に通って本格的に書を学んだ。
  卒業後は、京都教育大学大学院(美術教育専修書道修了)に進学。「墨蹟」の書法を研究しながら、多数の作品制作を行ない、讀賣書法展など数々の書道展で入賞。2004年からは、個展も定期的に開催している。
  「今年は書家の活動を始めて10年目にあたるので5月〜6月と11月、12月に個展を企画しています。11月11日〜11月16日に兵庫県立美術館で開催する個展では、書を立体的に展開する新しい作品にチャレンジするつもりです」
  1年前からは大阪のアトリエで書道教室も主宰。一般の幅広い年代の生徒に書を教えている。「最近、初めて人のために『信頼』とか『努力』『愛』という言葉を書きました。昔の私なら書けなかったと思います」。まっすぐな明るさを感じさせる木村さんだが、去年の4月には一度、迷い、やめようと思ったことがあったという。「自分のためにしか書いていなかったので、制作費だけがかかっていました。やっと作品を評価され始めた頃に行き詰まってしまって・・・。その頃展覧会を見に来てくださった方が現在開いている大阪の書道教室をご提供くださいました」。
  この出会いがきっかけになり、現在は「社是」や企業のロゴ制作を引き受けることも。自分の作品にも新たな表現を求め、常に探求を続けている。多方面に広がりを見せる木村さんの書の世界。夢は『世界各地で個展を開くこと』。
  「世界遺産のような歴史ある建物に展示したいですね。西洋の古城に何10メートルもある作品を飾るとか、世界を驚かす、美しい作品が作りたいです」とにっこり。
  近い将来、スケールの大きな夢が実現することを期待したい。




井筒 日美(いづつ ひみ)さん 作詞は人間探求。
将来は「人類愛」をテーマに
共感してもらえる歌詞を
作りたい。


作詞家
井筒 日美(いづつ ひみ)さん
龍谷大学法学部法律学科卒業
HPアドレス
http://www.ann.hi-ho.ne.jp/izutsu/

 日本テレビ系列「PRIDE&SPIRIT日本プロ野球」のイメージソングであり、タッキー&翼のシングル曲でもある『SAMURAI』。オリコン1位を記録したこの曲の作詞(共作)を担当したのが、井筒日美さんだ。
  「もともと中学生の頃から書くことは好きでした。ピアノを習っていたこともあって音楽も大好きでしたね。いつも歌詞カードを見ながら聞いていました」
  雑誌の「Myojo」や「月刊歌謡曲」に掲載されている歌詞をじっくり読むのが好きだった。作詞家を志したのは大学卒業後、一般企業に就職してからのことだった。「ふと浮かんだのが、好きだった詞の世界だったんです」。
  時代も後押ししてくれた。2003年頃から、メールを利用して作詞に関するデータのやりとりが可能になり、プロの作詞家として活動する上で、地方在住でもハンディがなくなったのだ。
  さらにその頃、自らのホームページに、ある尊敬するベテラン作詞家について書いたところ、サイトを見た本人から連絡があり、実際に会えることに。この偶然の出会いが、井筒さんに大きなチャンスをもたらすことになった。
  「この方の紹介で、柴咲コウさんのコンペに参加できることになったんです」
  コンペを見事勝ち抜いた井筒さんは、2005年に柴咲コウさんのシングル「Sweet Mom」収録の『あどけない温もり』でメジャーデビュー。現在はJ|POPのほか、人気アニメの主題歌の作詞など、様々な分野で活躍中だ。
  「作詞家をめざし始めたのは決して早いとは言えないのですが、会社勤めも貴重な体験でした。無駄な経験ってないんだな、人は回り道という名の近道を歩いてるのかもと思えるようになりました。
  地方で仕事をするにはまだ距離感は感じますが、大阪にいても、願う強さが夢を引き寄せるんだ、と信じています」
  最近、嬉しいのはアーティストのファンに「歌を聞いて元気が出ました」といわれること。
  「嬉しい反面、責任も感じます。でも書いていると人間がどんどん好きになりますね。人間観察を常にしているような感じです」
  最近は、仏教思想にも自然に魅かれるようになった。
「祖父が住職だったためか、作詞を始めて、輪廻や命の大切さ、生まれてきた意味などを考えるようになりました。龍谷大学で学んだことも影響していたのかなと思います。これからは、広い意味での『人類愛』を描いてみたいですね。大げさでなくみんなに共感してもらえるような・・・」
  作詞には、新たな自分と遭遇できる喜び、人間を探求する楽しさがあるという井筒さん。今後のますますの活躍を心から期待 したい。

これまでに作詞を担当した作品の数々   いつも仕事の際に使っている電子辞書とiPod


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