龍谷 2008 No.66
UC-Ryukokuプログラム

Bridging Cultures ※この座談会は全て英語でおこなわれたものを日本語訳したものです。

UC-Ryukokuプログラム

日米の異文化理解に貢献 カルチャーショックも楽しい思い出 UC-Ryukokuプログラム

1991年に始まった「UC-Ryukokuプログラム」は、アメリカの夏休みを利用しておこなわれる日米の学生交流プログラム。カリフォルニア大学(UC)の学生が龍谷大学に来校し、日本語や日本文化について学ぶ。16回目を迎える今年は、UCの学生26名が参加。6月29日から7月27日までのおよそ1ヶ月間を日本で過ごした。
龍谷大学では、そのサポート役として、本学の学生からチューターを公募し、27名を選考。UCの学生達は日本人学生と龍谷荘で共同生活を送りながら、授業やフィールドトリップに励んだ。
そしてプログラム終了直前の7月25日、それぞれの代表者各2名とイサオ・フジモトUCデイビス教授、ウィリアム・ブラドリー龍谷大学国際センター長らが参加し、英語による座談会がおこなわれた。

 

Professor William Bradley

Professor William Bradley

今回の座談会では、充実した表情で語ってくれたUCデイビス生と、チューターの活動を通して大きく成長した本学学生からの生の声を聴くことができ、非常に有意義なものとなりました。
龍谷大学では、ジョージア大学(アメリカ)、マウントフッド コミュニティ カレッジ(アメリカ)、アンティオーク カレッジ(アメリカ)、南ミズーリ州立大学(アメリカ)、アサンプション大学(タイ)のプログラムも受け入れ、一般学生が本学のキャンパスで海外の大学生と国際交流ができるようサポートしています。中でも、UC-Ryukokuプログラムは、その先駆けとなった最も歴史のあるプログラムです。また、短期受入プログラム以外にも、世界16ヵ国に広がる31の協定校(2008年7月現在)への交換留学、BIEプログラム(Berkeley Internship and English Program)などの充実した留学制度を整備し、様々な国際交流事業をおこない、多文化共生キャンパスをめざしています。
これからもより多くの学生が、彼らのようにチャンスを活かし、国際社会への理解に一歩踏み出せるよう、プログラムを推進していきます。

<司会進行役>ウィリアム・ブラドリー龍谷大学国際センター長、国際文化学部教授


UC-Ryukokuプログラム UC-Ryukokuプログラム

フィールドトリップで知る日本

 座談会は、ウィリアム・ブラドリー龍谷大学国際センター長が司会進行を務め、UCの学生に対して、「なぜ、このプログラムに応募したのか」「日本の社会をどう感じたか」「プログラムを通して学んだことは何か」などの質問が投げかけられた。
  クリストファー・リーさんは、「僕はアジアンアメリカンの若者の文化を勉強中。アジアンアメリカンの若者と日本の若者のサブカルチャーを比較できると思いました」。エイミー・ハットスタインさんは、「日本語の授業を取っていたので、その地を訪れ、自分自身を日本の文化のなかに置いてみたかったのです」と、応募の動機を語る。
  彼らが取り組んだ本年度のプログラムのテーマは、「Community and Everyday Life in Japan(コミュニティと日本の日常生活)」。UCの学生達はチューター役の日本人学生と寝食を共にしながら授業を受け、またフィールドトリップに出かけて行った。
フィールドトリップの行先は様々。学生自身が個々のテーマと方向性を見つけて調査する。例えば、「パチンコ」や「マンガ」などを取り上げ、人々がどういうコミュニティを形成しているかを探っていく。
  リーさんが調査対象にしたのは、同和問題や在日外国人のコミュニティ。「僕達の社会にも人種や民族差別が存在していますが、同和問題や在日外国人などの存在を知り、日本も思ったほど単一民族社会ではないことを学びました。僕が今まで知らなかった日本の社会を知り、自分のなかのステレオタイプを壊すことができました」。
  ハットスタインさんはフィールドトリップのひとつとして、「ウイメンズカウンセリング京都」を訪問。「日本でも女性問題が重要視されていることは素晴らしい。その動きはアメリカより少し遅れていますが、発展の過程を見ることができてよかったです」。
 さらに二人は、いろいろな社会問題を抱えている日本の文化をとおして、自分の国や自分自身について、より深く学ぶことができた、と語る。


見えないものから多くを学ぶ

 一方、チューター役の龍谷大学生も、多くのことを学んだ。河田彰一さんがチューターを務めたのは、UCの学生達が来日して3週目のこと。「すでに日本に慣れていた彼らと毎日出かけ、たくさんの経験をしました。そこで気がついたのは、チューターという役割を誤解していたことです」。「責任を果たさなければ」という思いが先行して、反対にみんなに気を遣わせてしまった、とか。「本当は僕自身が楽しまなければ、彼らを楽しませることはできないのに」と反省を交えて語る河田さんの言葉に、すかさず「とてもよくしてくれたよ」と、リーさんやハットスタインさんから声が掛かる。国を超え、お互いを思いやる心が通い合う瞬間だ。
  森亜由美さんが興味を持ったのは、「UCの学生達が、日本人とは異なる視点から日本を見ていること」だった。そして、「今まで外国人として特別に捉えていた人々が身近になり、同じ立場から接することができるようになったことが一番の意識変革」とも。

 


 英語での座談会は、本学学生にとって思いを十分に伝え切れないというもどかしさもあったはず。しかし、一同は終始リラックスした表情で、ときには大きな笑い声が巻き起こる。また、UCの学生から、チューターに対する感謝の言葉がたびたび出るなど、プログラムをとおしての心の結びつきを、随所に感じさせた。
  座談会の終わりに、今回の交流について、イサオ・フジモトUCデイビス教授はこう結んだ。「学生達は様々な場所に出かけ、日本の人々がどういうコミュニティを形成しているかを学びました。日本社会で生きる人々の心情、チューターとの友情など、見えないものから学ぶという目を養ったことでしょう。彼らは帰国したら、カリフォルニアのことをもっと理解するようになるはずです」。
  友情と強い絆を確認し合い、一回りも二回りも成長した両校の学生達。毎年おこなわれているプログラムに、新たに実り多い1ページが刻まれた。

河田 彰一さん 河田 彰一さん<大阪府立河南高等学校出身>
社会学部4年生

卒業後はアメリカで仕事をするつもり。そのとき、またみんなと出会いたい。どこの国に行っても友人がいて、人種や文化の壁などない。そういう世界になってほしい。
森 亜由美さん 森 亜由美さん<京都府立園部高等学校出身>
国際文化学部4年生

アメリカ文化を素晴らしいと思うと同時に、日本文化に自信が持てるようになった。私の英語を真剣に聞こうとしてくれた、その相手を思いやる気持ちを見習いたい。

クリストファー・リーさんLee Christopher クリストファー・リーさん
カリフォルニア大学デイビス校
バイオケミストリー専攻4年生

ほんの少ししか日本語ができないので失敗もしたけれど、得られたものは大きかった。ジェスチャーと顔の表情で気持ちを表すことが上達したと思う(笑)。
エイミー・ハットスタインさん
Hartstein Amy
エイミー・ハットスタインさん
カリフォルニア大学デイビス校
国際関係学専攻3年生

男性が眉毛を整えたり、女性がとても高いハイヒールを履いているのには驚いた。たくさんの経験ができたのは、チューターのおかげ。感謝しています。


イサオ・フジモトUCデイビス教授
Professor Isao Fujimoto
イサオ・フジモトUCデイビス教授
カリフォルニア大学デイビス校教授・引率教員
  ifujimoto@ucdavis.edu

かつてプログラムに参加した学生達に聞くと、チューターの話が出てきます。チューターの一生懸命な姿が、彼らにいい影響を及ぼしています。

村松優里香さん 村松優里香さん 通訳協力者
カリフォルニア大学デイビス校アシスタント、
東北大学農学研究科博士課程前期2年生




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