西本願寺の北能舞台の白州を模した仏庭
さらに、仏間の横には仏庭があり、黒い滑石(なめりいし)が敷き詰められている。広さからいえば、坪庭といえる大きさだが、一般的な町家の坪庭とは異なる意味を持っている。
庭一面の滑石は、西本願寺の北能舞台の白州を囲む賀茂川石と同じ種類の石で、草木を配さない独特の造りである。水を湛えた銅の水盤を据えた庭は、親鸞上人の教えに基づいた、信仰の鏡としての特別な庭とも言える。このように、杉本家と西本願寺の縁は長い歴史に裏打ちされた深い関係を保っているのである。
杉本家では、昔から家に伝わるしきたりを守り、一年を通じて様々な年中行事をおこなっている。春は桃の節句の雛飾り、五月は端午の節句、夏の祇園祭では、矢田町伯牙山保存会によって守られる伯牙山という山のお飾り場として、通りに面した「店の間」に、祭りに関する懸想品が飾られる。
ふだんは会員向けのみの公開だが、年数回、一般公開もおこなっている。この10月には、一般向けの催しも開催の予定。ぜひ、この機会に京町家の歴史と文化を肌で感じてみてはいかがだろう。
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