龍谷 2009 No.67
青春クローズアップ 混声合唱団ラポール

青春クローズアップ 混声合唱団ラポール

関西合唱コンクールで1位金賞を獲得
20年ぶりに全国大会出場
このメンバーで勝ち取れた縁(えにし)に感謝!

音楽の本質とは競い合うことではなく「楽しむ」こと。
そんな歌が大好きでたまらないメンバーたちが集まる混声合唱団ラポール。
今年、彼らは自分たちも驚く快挙をやってのけた。
 

夢かと思った
夢かと思った
強豪を破っての全国大会出場

 10月の関西合唱コンクール会場で、「全国大会出場合唱団は、龍谷大学混声合唱団ラポール」と告げられたとき、一番驚いたのは舞台上の中本さんと木原さん。「えぇーっ!!」と叫んで顔を見合わせ絶句してしまう。
 合唱団結成から40数年の歴史あるラポールは年々メンバーも増え、今では80人余りの大所帯。恒例の12月の定期演奏会には、会場を聴衆でいっぱいにできる人気と実力も付いている。しかし毎年、関西合唱コンクールで最高位を取ろうとしても、関西学院グリークラブをはじめとする強豪に夢を打ち砕かれてきた。
 もちろん今年のコンクールでも、関西学院グリークラブは当然のように金賞。龍谷大学のラポールも同じく金賞を取ったが、ラポールのメンバーは誰もが「全国大会出場校は他大学が果たすであろう」と思っていた。だから、全国大会出場を知らされたとき、「すげえ、夢じゃないか!?と半信半疑の状態でした」(中本さん)。ラポールが全国大会出場の切符を手に入れたのは20年ぶりのことだった。
 今年、彼らが歌ったのは、課題曲のバード作曲『Cibavit eos(良い麦で養ってくださる)』と平家物語をモチーフにした千原英喜作曲『那須与一』。「同じ楽曲でも、その日のコンディションで歌声はがらりと変わる。だからこそ、その一瞬に心を込めるんです」(春日井さん)。歌が好きでたまらない者同士、心を一つにして獲得した勝利であった。


歌の本質は楽しむこと頼もしい味方に支えられて
歌の本質は楽しむこと
頼もしい味方に支えられて


 ラポールの団員80人のなかで、高校での合唱経験者は10人程度。幹事長の中本さんさえ、まったくの未経験者。「ミニコンサートで先輩達が楽しそうに歌っているのを見て、何となく入部していた」。副幹事長の木原さんも「ト音記号さえ知らなかった」と振り返る。
 それを一つにまとめ上げるのは至難の業。しかも、混声合唱団は男女の声の質や音域の違いを、どうバランスよく合わせていくかが重要となる。「極意は?」と聞くと「まずは楽しむこと」。「混声だからこそ、音の幅が広がる。いくつものパートを設けることができ、スケールの大きなハーモニーを創っていける」と、3人の笑顔が返ってきた。
 ラポールには、そんな彼らをしっかりと支える頼もしい味方がいる。技術顧問の花月真さんと、ピアニストでチーフトレーナーの山本有希子さんだ。全国大会出場前には山本さんのお宅に押し掛け、質・量ともにハイレベルなボイストレーニングを受けた。
 花月さんは、ラポールOBのプロのオペラ歌手であり、「自分達には到底及ばない圧倒的な存在」だそう。一曲ごとに作曲者の気持ち、音楽が何を伝えようとしているのかなどを懇切丁寧に教えた上で指揮をする。それが花月さんのやり方。「うまく理解できないときでも、先生に指揮をされると気持ちが伝わってくるんです」(木原さん)。
 全国大会に臨んだ岡山の会場は、2000人は入る大ホール。そのスケールに一同はビックリ。浮き足立ちそうな団員達を落ち着かせたのが、花月さんの指揮の力。「花月先生は魔法使いです…」、誰からともなくそんな言葉がもれた。


ラポールは人生観、世界観まで変えた
ラポールは
人生観、世界観まで変えた


 ところで、ラポールでの活動と学業との両立に、彼らはどう立ち向かっているのだろう。その質問に木原さんは、「辛くても授業も歌の練習も手を抜かない。やる気があったらできる、という花月先生の教えを実践していたら、自然と両立できるようになり、自信がつきました」。木原さんは「実は以前は音痴だった」と明かす。ラポールに入ってからも人前で歌うのは恥ずかしかったそう。しかし、後輩たちには負けられないと必死でトレーニングし、花月さんの前で歌って評価されたときは、「思わずうれし泣きしました」。
 高校の頃から合唱をやり、全国大会も経験した春日井さんは学業との両立について、「気持ちの切り替えが大切」と話す。今は授業、今はラポールと、場面に応じて気持ちを切り替えて集中する。その結果の勝利に、「ラポールがなかったら、このメンバーと出会えなかったら、この感激は味わえなかった。人の縁のありがたさを感じます」と、しみじみ。
 2人の話を聞きながら、中本さんは少し困った表情で、「僕は切り替えがヘタ。とくに幹事長になってからは、常に音楽のことで頭がいっぱいになっている」。それでも、「学年が進むにつれて勉強にもラポールにも真剣になってこれた」と力を込める。さらに「歌うことを通して作詞者や作曲者の気持ちが分かり、感受性が豊かになった。人生観、世界観が広がり、人間として成長していると思う。それは学業にも活かせていると感じている」。
 ラポール(RAPPORT)とは「調和」「縁」。ここで出会えた縁に感謝し、心と心を調和させた80人のハーモニーが、ラポールの歴史に輝かしい栄光のときを刻んだ。



中本 宇宙(なかもと そら)さん 中本 宇宙(なかもと そら)さん
幹事長・文学部3年生
大阪府立北千里高等学校出身
高校時代は哲学書を読みふける日々。
静かな話しぶりに哲学者の雰囲気が漂う。
「歌は自分の一部。卒業しても合唱団で歌っていたい」
春日井 恵理(かすがい えり)さん 春日井 恵理(かすがい えり)さん
正指揮者・社会学部2年生
京都府立西城陽高等学校出身
気持のよいはきはきとした受け答え。
団員からは「面倒見のよい男前」と慕われる。
「次年度も関西チャンピオンの名に恥じない活動を」

 


木原 一暁(きはら かずあき)さん 木原 一暁(きはら かずあき)さん
副幹事長・経営学部3年生
私立奈良育英高等学校出身
よく働く気配りの人。ラポールきっての癒し系。
「自分がやろうと思い、貫けば、自分は変われる、やれるという自信がついた」
   


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