龍谷 2009 No.68
青春クローズアップ│協定型インターンシップ

青春クローズアップ│協定型インターンシップ


協定型インターンシップ


 協定型インターンシップとは、大学と受け入れ先企業との間で、教育プログラムに関する協定書を締結しておこなう龍谷大学独自の体験型インターンシップ。就職活動を前提とした従来のインターンシップとは異なり、教育を目的としておこなわれることから、2週間の就業体験に加えて、19回にも及ぶ事前・事後学習や中間指導などのきめ細かな指導体制が確立されている。


いくつもの「なぜ?」が
自分の考えを確立させていく


 龍谷大学では、インターンシップを就職活動の一環としてではなく、キャリア教育のひとつとして位置付けている。その理念がかたちとなってあらわれているのが「協定型インターンシップ」だ。
 就業体験を通じて学習意欲を高め、学生一人ひとりの目的意識や職業観を醸成する機会として2006年からおこなわれているこの取り組みは、参加した学生達に多くの「学び」と「気付き」をもたらしている。
 昨年、このインターンシップ実習に参加した学生達に、当時の体験や社会現場を経験したことで生まれた意識の変化などを語ってもらった。


  大和 雅子さん   大和 雅子さん   大和 雅子さん   大和 雅子さん  
 

やまむら まゆ

山村 真由さん

経済学部4年生
京都女子高校出身
インターンシップでは信用金庫へ

 

すぎた あい

杉田 愛さん

経営学部4年生
京都府立洛西高校出身
インターンシップでは信用金庫へ

 

こくせい けんし

國生 謙史さん

経営学部4年生
大阪府立牧野高校出身
インターンシップでは機械工具専門商社へ

 

うえまつ ゆうき

植松 祐貴さん

経営学部4年生
名古屋大学教育学部附属高校出身
インターンシップでは運送会社へ

 

 「私は卒業後、社会に出て働く事に漠然とした不安を感じていたのでこのインターンシップに参加しました。大学での勉強を通じて金融業界には興味がありましたが、まずは就職活動の事は考えずに社会とはどのようなものなのかを体験してみたいと思ったんです」(杉田さん)。
 「働く事」に対する不安を抱えたままではなく、事前学習で得た知識や経験を持って実習先企業へ行く事ができたのは、大きな自信になったと話す杉田さん。事前学習では、電話応対や文書の書き方などの基本的なビジネスマナーとともに、学生の意識を高め、就業体験から学ぶ目的を明確にするためグループワークに多くの時間が充てられている。
 「自分が何故インターンシップに参加したいと考えたのか、どうしてその企業に行きたいと考えたのか、実習先では具体的に何がしたいのか。事前学習では、そんないくつもの『なぜ?』を繰り返し何度も文章にまとめて発表しました。ほかの人の意見も聞きながら、自問自答を重ねていくうちに、自分でも気付かなかった目標や考えが確立されていくのがわかりました」(植松さん)。


4つのタイプのインターンシッププログラムを全学で展開、学生の自立とキャリア形成を支援する

協定型インターンシップ参加者の9割が満足という結果に

自ら学ぶ姿勢を大切に

 実習では、学生もなるべく受け入れ先の社員と同様の就業体験をおこなうようにプログラムされてるのもこのインターンシップの特色だ。
 営業の仕事に関心を持ち、機械工具の専門商社でインターンシップした國生さんは、はじめての社会現場に戸惑う事も多かったと話す。「実習先の企業では倉庫での業務が中心でしたが、インターンシップの目的だった営業に同行させてもらう予定日になっても、企業の方からはまったく指示がありませんでした。当初はどうすればいいのか悩みましたが、『自分はなんのためにここに来たんだ』そう考えるとただ待っているのではなく、自主的に行動しなければ社会では通用しない事に気付きました」。
 國生さんは自分から営業への同行を願い出て、貴重な商談の現場を体験する事ができた。そしてなによりも「自分から学ぼうとする姿勢が大切なんだ」と感じたと話す。
 金融業界への興味から、信用金庫へインターンシップした山村さんは、実習を通じて金融以外の事にも広く関心を持つ事ができたという。「地域の経済やほかの業種についても知る事ができたのは、地元に密着した業務をおこなう信用金庫ならではの体験でした。また、営業に同行させてもらったとき、訪問先が偶然、私の実家の家業と同じ業種だったんです。それまで、『家の仕事』としてしか見ていなかった家業を客観的に見る事で、以前とは違った印象を持つようになりました。自分が知っているつもりの事でも物事にはいろんな側面があるという事を考えるきっかけになりました」。

机上の学問には無い
就業体験による意識の変化


 「実習に行く前は、2週間が長いように感じていましたが、終わってみればあっという間でした。一番の収穫は、『私は、自分で考えていた以上に行動できる』と気付いた事。目的を達成するために意欲的に行動する自分に対して驚き、うれしくもありました。また、そんな自分の一面を先生やグループの仲間達も発見してくれた事がとてもうれしかったんです」と杉田さん。山村さんと同じく金融業界に関心があり、信用金庫へとインターンシップしたが、仕事の内容以上に「そこで働く人達のあたたかさが印象に残った」と話す。
 インターンシップでは運送会社で社外報の作成をおこなった植松さんは、事前学習同様、事後学習でも自身の就業体験を反芻する事が、自分の考えをまとめる事につながったと話す。「事後学習で報告発表をする事で、やりっぱなしにせずに総括する事の大切さを感じました。自分の体験や感じた事を言葉にして人に説明する事で、さらに自分の考えがまとまっていく。先日、今年インターンシップに参加する後輩達の前で、自分の体験を話す機会があったんです。そのなかで、昨年、自分がインターンシップを終えたばかりのときには思ってもいなかった考えが新たに芽生えていた事に気付きました。一年経つと自分の考えも少しずつ変わっていくんだなと思い、あらためて体験を振り返る事の大切さを感じました」。
 2週間の就業体験は参加した学生達にとってかけがえのない経験となっている。机上で得る知識には無い、体験によって大きく変わった意識こそが何よりの収穫なのだろう。
 「インターンシップに参加して一番良かったなと感じるのは、自分に自信が持てるようになった事。たった2週間の就業体験でしたが、終わってみてこうして胸を張って自分の体験を話す事ができるのは、やはり充実した経験だったからだと思うんです」(山村さん)。

 
学長対談

暗黙知を形式知にー
思いを共有する事で成長できる


  龍谷大学のインターンシップは、「社会現場での実体験を通して、大学における学びの意義を認識し、学生の自立とキャリア形成を支援する実践的な教育プログラム」と位置付けています。そのため、参加する学生達にまず理解してもらう必要があるのは、このプログラムは就職活動には一切直結していないという事です。
 大切なのはその後の学生生活や社会に出たときに、その体験がどのようにして役立つのかを考える事。
 ただ社会現場を体験するのではなく、事前学習や実習先での中間指導、事後学習と学生一人ひとりの目的意識をはっきりさせ、実習終了時には「暗黙知を形式知に」変える事で、インターンシップを通じて感じた事や体験を学生同士で共有する事を目標にしています。
 就職には直結しないとは言え、このインターンシップを体験した学生達がその後の人生において、自分自身で問題を解決し、しっかりと自分の将来を選択している事を考えれば、結果的に就職活動に役立っていると言えるかもしれませんね。







←トップページへ戻る