〈講師〉青木 新門 氏
〈日時〉6月25日
青木新門著『納棺夫日記』は、2009年第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した映画「おくりびと」に、大きな影響を与えた作品である。
俳優の本木雅弘氏は、1996年に青木新門著『納棺夫日記』を読んで感銘を受け、映画化にあたって、青木新門宅を訪れた。「蛆も命なんだ、そう思うと蛆が光って見えた」という一節に、本木雅弘氏は感動したという。青木氏は、人は死を受け入れた時、それまで当たり前のように見えていた世界がすべて光り輝いて見えてくるという。がんを患い亡くなる井村医師は、スーパーマーケットで遊んでいる子どもたちが輝いて見えたと記している。宮沢賢治は妹トシを亡くした悲しみから、『銀河鉄道の夜』を書いた。すすきやリンドウが光り輝く世界は、妹トシとの別れから実感した世界であろう。とんぼもごきぶりもあらゆるものが差別なく輝く。それが死を深く知ったものの世界観である。納棺夫となったことを親族から反対された時、昔の恋人が、納棺をしていた青木氏の額の汗をぬぐってくれた。また一番反対していた叔父が、亡くなる直前、ベッドで青木氏に「ありがとう」と言った。こうしてまるごと認められると人は生きていける。人生の終末に寄り添い、死の瞬間に、家族のそばにいることこそが、いのちのバトンタッチとなる。父や母の死に立ち会うとき、報恩感謝の気持ちもあふれてくる。先に生まれるものは後を導き、後に生まれるものは先を導く、それがいのちのバトンタッチである。
参加者約750名の学生や教授、市民の多くの人々は青木新門氏の話を聞いて涙があふれた。
|