龍谷 2009 No.69

 
創立370周年第7回青春俳句大賞入賞作品の発表です!
第7回を迎えた龍谷大学の青春俳句大賞は、
創立370周年を記念しておこなわれ、 46145句もの力作が寄せられました。
厳正なる選考をおこなった結果、見事に入賞を果たした作品をここに発表します。
最優秀賞
 
短大・大学生部門 夏旺んなり黒髪の羊飼ひ 高校生部門 たち泳ぎして友情を深めけり 中学生部門 日盛りの雑誌ばかりの書店かな 
 
選考委員
 
英語部門 my grandmother's watch still running on my wrist 【評・ウルフ・スティーブン】
世代にまたがってつながる絆を表す感動的な句。自分の手首の上で時を刻む動きは、
祖母の心音が脈打つような命を感じさせる。祖母の存在がそこにあるように思われる。
 
中学生部門優秀賞
 
今日は虹見たこと草を踏んだこと 少し好き夕立あとの雨のにおい 兜虫持ち兄らしくなりにけり
 
高校生部門優秀賞
黒髪の光る卯の花腐しかな 山笑う陽気な母の白髪染め 硬球の深き縫ひ目や獺祭忌
 
短大・大学生部門優秀賞
風鈴の音をかき消す雨の音 冬近し独逸語は硬く強く読む 雲を突き破つて朝日山桜
英語部門優秀賞
The box of popcorn empty when the movie started 【評・ウルフ・スティーブン】
ポップコーンを片手に、おそらく友人と話しながら始まりを待つ。やや非日常において未知の物語を待つ興奮に、知らず上気している自分がおかしくもあるかもしれない。心の気付きをさりげなく捉えた句。
An umbrella and holiday are taken by typhoon 【評・ウルフ・スティーブン】
 持っていかれた、というひと言が見事に一瞬のすばやい風の動きと、楽しいはずの休暇が裏返されたように台無しになったことを、リズミカルに表現し、手だて無く受け入れざるを得ない。
 
選考委員特別賞
 

静けさや滝壷を過ぎゆける水 弓音に吾を乗せ放つ青嵐 太陽に照らされて飲むラムネかな 寄せ鍋や大学に行くつもりだと 始めてのバレエシューズや蝶の昼
Clothes in my closet have become feminine since I met you
【評】 恋心の蕾が膨らむ時期の喜びを
素直に詠んでいる。
意識しなかった女性らしさの側面を楽しみ始めている
自分がいることを、客観的に眺めている。
団体優秀賞


龍谷大学 創立370周年記念賞
南吹き孤島赴任の教師かな 春光や遠い異国の船つきて 夕顔や京人形の売れ残る
 

茨城県 大島 愛美さん 茨城大学4年生
Writing letters one after another sleepless night
【評・ウルフ・スティーブン】
眠れぬ夜にその覚醒したエネルギーを手紙に向ける。親しき者との静寂な対話は心の興奮の糸を静かに解きながら、どこかしらの淋しさも追い出していくのかもしれない。

選考委員総評
茨木 和生氏  今回も中学生部門の応募句に注文をつけたい。指導される国語の先生にお願いしたいことだが、俳句は五・七・五、十七音の詩であること、必ず季語を必要とする詩であることを指導していただきたい。教科書や歳時記に出ている作品をそっくりうつしたり、一部を変えて投稿するということをしてはいけないということを教えてほしい。このことの指導が入れば、生徒達の作品は見違えるものになると思っている。よろしくお願いします。
 
俳人協会理事。
大阪俳句史
研究会理事。
俳誌「運河」主宰。

寺井 谷子氏  「青春俳句大賞」も7回を迎えた。その間に参加された方々は、確実に成長を遂げているであろうという思いを、選や選評を書くときにいつも思う。十代から二十代にかけての時間は、環境が激しく変わる時でもある。そのような時の一刻を、「俳句」によって刻んだことを祝福したい。
7回を迎えて、総体として力強さが加わってきた。「日本語の力」と胸中に繰り返しつつ、選者としても力を得た思いであった。
寺井 谷子氏
現代俳句協会副会長。
俳誌「自鳴鐘」主宰。

有馬 朗人氏  青春俳句大賞も回を重ねるに従って変化してきている。特に大学生、短大生の作品が良くなった。中学生や高校生もそれぞれの世代にふさわしい、新鮮な感覚の作品があって楽しい。しかし一部の学校の作品に、ある種のパターンにはまったものが多く発見されることが残念である。素材の取合せとか、表現の仕方、言葉の使い方など、類型的なものが多いのである。自らの考え、自らの発想で作句してほしい。
点取り競争ではないのである。独創性を大切にすべきである。
有馬 朗人氏
元文部大臣。
日本科学技術
振興財団会長。
俳誌「天為」主宰。


大峯 あきら氏  私は21歳の時に初めて高浜虚子という俳人に師事しました。虚子先生は今の私より少し若かったと思います。虚子は選句に大きな自信を持っていて、めったに選評をしなかった人ですが、或るときこう云われました。「自分が本当に感じたことを言葉を飾らずに正直に述べた句が良いのです」。生意気ざかりの学生だった私には、当時はなかなか納得できなかったのですが、今は実に詩というものの本質を教える言葉だったと思っています。
大峯 あきら氏
大阪大学名誉教授、
元龍谷大学教授。
同人誌「晨」代表

山田 弘子氏  応募句数は減少したとはいえ、全体の作品のレベルの向上には瞠目するものがある。日本語の貧困が話題に上る昨今、こうした磨きぬかれた日本語が求められる俳句を通し、知らず知らずのうちに自らの言葉を耕している。回を重ねるごとに、若者たちの俳句作品への信頼というもの強く感じ、選考を終えて爽快な気分に浸ることができた。継続こそ力であることの自覚を願っている。
※山田弘子先生は、心不全のため2010年2月7日ご逝去されました。山田先生のご遺徳を偲び、心から哀悼の意を表します。
山田 弘子氏
日本伝統
俳句協会理事。
俳誌「円虹」主宰。


ウルフ・スティーブン  今回の応募句は、少なくとも英語部門において、このコンテストの7年間の歴史の中で最も質を高めています。英語俳句の応募者数は1400を越えました。簡潔な表現を選び抜くという俳句においては、最良の詠み手は必ずしも母国語の話し手ではありません。奥深い、独創的な俳句の目を持って自分の周りの世界を見れば、言語の技巧を越えた真なる美が存在します。日本文化のなかに先天的にあるのではないかと思われる詩的な視点と表現は、優れた英語力と努力を重ね合わせて学生達を指導される学校の先生方のお力とも相まって、心に響く多くの句を生み出しました。
ウルフ・スティーブン
龍谷大学
国際文化学部教授。
俳句研究、
翻訳をおこなう。

 

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