龍谷 2009 No.69


 
様々な方面で活躍する INTERVIEW 龍谷人 アフリカでの村おこし一村一品運動は未来への可能性を拓くための「キーを渡す仕事」
JICA広域企画調査員 相園 賢治 さん
JICA広域企画調査員 相園 賢治 さん
1990年、
龍谷大学文学部
哲学科 教育学卒業
 昨年の暮れ、日本へ一時帰国した時に取材に応じてくれた相園賢治さん。
 相園さんは2007年11月から2年間、JICA (国際協力機構)が展開する一村一品運動というプログラムのプロモーションを、アフリカのマラウイを拠点におこなってきた。
 アフリカでのプログラムの対象は農産物加工が多い。内容はいたって素朴であるが、付加価値をどう付けていくかが難しいところ。具体的な産品の例としてはハチミツやバオバブジャムなどがあるが、物は作れても販売に結び付けられるかどうかは別問題。マーケティングや技術支援ができるシステムを構築中である。

とはいえ、異国での活動は簡単ではない。英語が堪能な相園さんであっても、ポルトガル語が公用語の国では通訳を介す。しかし、小さな村ではそのポルトガル語も通じないことがあり、またまた通訳を入れる。まるで伝言ゲームのようで、緊張した雰囲気を和らげようと冗談を言っても、相手はシーンとするばかり。逆に真面目に話したことがドカーンと受けたり…。コミュニケーションをとるのも容易ではない。
 そんな手探りの運動を進めていくポイントは、「こちらが手をかけ過ぎないこと。彼らのやる気をどう引っ張り出してくるかということ」。

 国際協力や支援をおこなう組織・団体は、ともすると与えることばかりを考えがち。しかし、地元民が主体的に動いてこそ、その土地に根付いた運動になりうる。だから、動機づけをおこなった後は、忍耐強く待つことも仕事。日本では考えられないことも、この土地ならではの方法だと考え、口や手は出さない、我慢する。「どんな些細な質問や要望でも、相手からの働きかけがあるとうれしい」と、感情を内に秘めるタイプらしく、たんたんと話す相園さん。
 人種はもちろん、天候、文化、習慣などがまるきり異なる土地での苦労は絶えない。それでも相園さんを突き動かす大きな原動力がある。それは、アフリカの未来への果てしない希望。「自分が携わっているのは、可能性を拓くためのキーを渡す仕事。受け取ったキーで扉が開けられた先に、何があるかを想像するだけで楽しい」と言う。
 JICAの仕事をするようになったのは2000年、青年海外協力隊のコーディネーター採用試験に合格したのがきっかけ。大学を卒業後、旅行会社で海外旅行の添乗員などをしたあと、飲食業を開業したが断念。様々な仕事に就いたが、「現在の仕事もサービス業。これまでの仕事もサービス業。その経験が今に役立っている」と言い切る。
 マラウイでの仕事は昨年で終了、今年1月からケニアに拠点を移した。担当する国もサブサハラ地域全般となり、これまでのプログラムを、さらに根付かせるために活動する。
 現在のアフリカは、依然未解決の問題も数多く残っているが、一方で民主化も進んでおり、経済も順調に成長。「農村部においても携帯電話など情報手段の革新がめざましく、多くの若者がパワフルに働いています。紛争や貧困、エイズ問題、サファリなど、これまでのステレオタイプの見方は、アフリカへの誤解を招きます」と、別れ際に釘をさした。
 一村一品運動という地道な活動が、急成長する人口9億人のアフリカ全土に広がり、育ち、大きな花を咲かせていく。相園さんはそれを楽しみに、様々な想いを胸に抱きながら、次なるステップに踏み出している。
 
本学大学院アジア・アフリカ総合研究プログラムでの講義風景

本学大学院アジア・アフリカ総合研究プログラムでの講義風景
本学大学院アジア・アフリカ総合
研究プログラムでの講義風景


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