龍谷 2010 No.70


RYUKOKU SPORTS

アメリカンフットボール部
 龍谷大学アメリカンフットボール部シーホース(SEA HORSE)が、1部リーグ入れ替え戦に勝利。対戦相手は昨年の入れ替え戦で敗れた近畿大学。白熱する混戦のなか、魂のプレーで相手チームを振り切り、悲願の1部昇格を果たした。
 
必ず勝つ、という確信があった
アメリカンフットボール部  シーホースは2007年に1部リーグに復帰したが、その翌年に2部降格。3年間は2部リーグでもがいていた。入れ替え戦までは行くが、あと一歩の遠さに苦しんだ。
 そして2010年の入れ替え戦。近畿大学を相手に、前年の悔しさを力に変えた戦いが始まる。しかし、前半は0対10と大苦戦。昨年の悪夢がよぎるような不安な立ち上がりだった。それでも、今回はいつもと違っていた。「どんな苦しいシチュエーションでも、みんなが勝つ≠ニいう強い気持ちを持っていた」と、主将の松浦健士さんは振り返る。
 そして第3クォーター、チームの思いに押されるかのように、奥田幸樹さんが連続でタッチダウンを奪い逆転。その後も苦戦を強いられるが、イレブン一丸となったプレーで雪辱の勝利を収めた。「1本のタッチダウンがリズムよく決まった。これでイケる!≠ニ確信した」と、奥田さん。望月純平さんも、「後半に必ず点を取ってくれると信じていた」と、チームメートへの並々ならぬ信頼感を口にする。
 すると、村田斉潔ヘッドコーチが、「選手達には、前半は点を取らなくてもいいから、相手チームの情報を集めるようにと言っていました。彼らは極めて有効な情報を集めてきた。そして後半、オフェンスに指示を出し、タッチダウンにつながった」。その言葉からも、全員で戦ってもぎ取った勝利であったことが伝わってくる。
 
危機を乗り越え、大きく成長
 選手達はこの1年の間、「挑戦」をスローガンに練習に励んできた。2部という現状に満足せず、1部リーグの選手より鍛えなければならない。その思いを持ち続けようとした。
 けれど、負けた悔しさも日がたてば薄れていくという現実。村田ヘッドコーチは昨春、彼らの姿に茫然としたと言う。「アメフトは格闘技。ところが、4月の練習試合では、彼らに闘争姿勢が全く見えなかった。あまりのダメさ加減に、練習のメニューづくりを放棄しました」。それから夏に彼らがギブアップするまで、口を出したいときも我慢した。村田ヘッドコーチの突き放しは選手達の危機感を呼び覚ます結果となり、チームが固くまとまっていった。
 村田ヘッドコーチが重点を置いたトレーニングがバーベル上げだ。自分の限界の重量を、毎週超えさせる。「数字が上がることで、強くなった気がする。格闘技には、この自信が重要なのです」
 また、猪飼省吾ディフェンスコーチがこの1年言い続けてきたのは、「どんな状況になっても相手のオフェンスを止める1プレー集中=v。秋季リーグには「その言葉がようやく浸透してきて、みんなタフになりました」と、その成長を喜ぶ。
 選手達は、夏の炎天下も熱中症とのギリギリのなかでプレーし、それでも頭はクリアにしなければならないという、限界への挑戦を見事にやってのけた。
  アメリカンフットボール部
 
さらに上をめざして進め!
新生シーホース
 では、選手自身は、どんな思いで今季を送っていたのだろう。4年の松浦さんは、「どうしても入れ替え戦を突破して、後輩達に1部を経験させたい。その思いが強かった。自分自身はケガに苦しんだけれど、相手を倒してやろうという気持ちを常に持ち続けた」。同じく4年の望月さんが、「最後のシーズンは、チームのことを考える立場。精神的にしんどかった。けれど最後に1部に上がれて、しんどさが全て忘れられた」と、勝利の価値をかみしめる。
 さらに、奥田さんは、「3年までずっと2部。どうしても1部を経験したかった。どうしたらモチベーションを落とさないでいられるかと考え、入れ替え戦の前日まで、近畿大学との試合のビデオをほとんど毎日見ていた。すると、翌日も『練習をしたい!』という気持ちになりました」。
 三人三様の思いがあり、そのほかの選手達にもそれぞれの思いがある。それらの思いの重なりが、勝利を引き寄せる強さとなったのかもしれない。
 「ようやく1部に上がったのだから、翌年に落ちるということは絶対にしてほしくない。落ちることはないと信じる。これからも様々な課題をクリアしながら、さらに上をめざしてほしい」と、松浦さん。
 2部でもがき続けた日々は貴重な経験となる。村田ヘッドコーチ、猪飼ディフェンスコーチの熱い指導のもと、新生シーホースの活躍を期待したい。
アメリカンフットボール部
 
松浦 健士さん

  

主将
まつうら けんし
松浦 健士さん
65 OL(オフェンスライン) 
法学部4年生 崇徳高等学校出身

 主将として引っ張っていかなければならない立場なのに、よくケガをした。そんなときは、みんなが支えてくれた。勝利の瞬間には、感極まって涙が出た。後輩に1部の舞台を与えられて良かった。ここまで指導してくださったコーチに感謝します。
奥田 幸樹さん

おくだ こうき

奥田 幸樹さん
bX RB(ランニングバック)
経営学部3年生 宝塚東高等学校出身

 今まで大一番に勝てたことがなかった。自分はそういう人間なのかなと思うこともあった。でも今回の勝利で、大きな壁を突き破った。最後の学年で1部を体験させてもらえるので、先輩達に試合を見に来てもらい、良いところを見せたい。
望月 純平さん

もちづき じゅんぺい

望月 純平さん
14 LB(ラインバッカー) 
文学部4年生 比叡山高等学校出身

 4年生になったとき、猪飼コーチに「絶対に後悔するなよ」と言われた。そのおかげで、後悔することなくやり切ることができました。後輩にも後悔してほしくない。これからの1年、自分の力を出し切ってほしい。

村田 斉潔 ヘッドコーチ

むらた ただゆき

村田 斉潔
ヘッドコーチ

 選手達には、折にふれて悔しい気持ちを繰り返し思い出させました。それがエネルギーの源泉。思い出すことで、練習でもうひと踏ん張りできる。他のクラブとの兼ね合いから、グラウンドが使えるのは週に4日間。そのハンディがあるなかで、6日間練習する大学相手に戦うのですから、極めて効率的な練習が必要です。より一層、一人ひとりの能力向上に努め、さらなる上をめざします。
猪飼 省吾 ディフェンスコーチ

いかい しょうご

猪飼 省吾
ディフェンスコーチ 
(龍谷大学OB)

 私も村田ヘッドコーチの教え子です。私の頃は万年2部。でも今のチームは、たとえ10点取られても、絶対に大丈夫だという信頼がありました。来季は、1部の舞台で大いに暴れて、「1部に龍谷大学あり」と思わせたいですね。

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