龍谷 2010 No.70


龍谷人

  原稿をただ読むだけが仕事じゃない。企画から取材まで、自分で掘り下げられるのは幸せなこと。

テレビ山口 報道制作局報道部 アナウンサー 早川友希さん

龍谷大学社会学部を2002年3月に卒業。
 本学キャリア開発部で学生の就職や資格取得をサポートする、乗金悟さんのもう一つの顔は、大学野球・高校野球・社会人野球と、幅広い野球連盟に所属する審判員。そしてこの夏、遂に念願だった甲子園での審判を務めた。
 岡山県出身の乗金さんは、小学生の頃から野球に親しみ、甲子園出場経験のある地元校・岡山城東高校の野球部に入部。現在も大学職員の野球チームに所属する根っからの野球好きだ。プレーヤーから審判へと立場を変えながらも、高校時代に果たせなかった夢を叶えるために、甲子園の土を踏む。
 
大学では選手ではなくマネージャーに
思わぬ転機が今につながる
 高校球児を経て、龍谷大学でも選手をめざして入部したのですが、マネージャー不在という事情から、その役割を引き受けることに。野球が好きだったので、マネージャーをやることに抵抗はありませんでした。
 自ら選んだわけではなかったけれど、学生マネージャーとして大学職員や社会人野球のマネージャー、審判など、選手だったら知り合えないはずの方々とお話しでき、世界が広がりました。今にしてみれば、それが現在の私につながったように思います。
 卒業後に龍谷大学の事務職員になりました。審判をやるきっかけは、事務職員として在職していた野球部の先輩から「関西六大学の審判になって、野球部のOBとして後輩達の手助けをするように」と声をかけられたからです。
 自分自身も興味があったので関西六大学野球連盟に登録し、講習を受けました。大学野球の審判をしているうちに、社会人野球や高校野球の審判も務めるようになっていきました。
 審判も経験が求められます。打者が打つと観客の視線はボールの転がる先を見ますが、審判は走者がベースをちゃんと踏んでるか、野手と接触していないかなど、試合の流れとは別の部分も同時に見なくてはいけません。学生のときには知らなかった細かいルールもたくさんあります。試合の流れによってどう動き、どこを見るか、瞬時に判断し、ほかの審判の動きも把握しながら、的確な位置で正しいジャッジをしなければならない。それが審判の難しさであり、面白さです。審判をはじめてからは、テレビでみるプロ野球も、視点がずいぶん変わりましたね。
早川友希さん
キャリア開発部で学生の相談を受ける乗金さん
 
巡ってきた大きなチャンス
真剣勝負の場に関われる幸せ
 社会人になると、『真剣勝負の場に身を置く』ということが、なくなってくるんですよね。「あと一球で勝てる」とか、「あと一勝で甲子園」というときの緊張感。あの感覚を追い求めて、私は審判をしているんだと思います。打ったボールが飛んできてギリギリのプレーとなる。すると、選手も観客もみんなが私のジャッジを食い入るように見つめる。そこでのアウト、またはセーフのコールに起こるどよめき。そういう緊迫感が私を惹きつけるのです。
 アマチュア試合の審判は、たいてい仕事と掛け持ちのボランティア。休日返上だし、普段から体調管理にも気を使わなくてはなりません。『大変だね』と言われることもありますが、勝負の場にいられることは、私にとって何にも代えがたい喜びなんです。
 今回、甲子園でおこなわれる第93回全国高校野球選手権大会の審判に初めて選ばれました。高校球児の憧れであり、特別な場所です。そこに立てることは、本当に名誉なことで、続けてきて良かったと思います。日常の仕事と審判という、二足のわらじを履きながらもやってこれたのは、職場の方々や、家族のおかげ。まわりの方々には、いつもフォローしていただき、感謝しています。甲子園期間中も課外活動支援の一環ということで、皆さんにご理解いただいて出かけることになりました。
 
原稿とストップウォッチはオンエア時の必須アイテム ニュース前の下準備
  8月11日 東洋大姫路対海星戦で二塁塁審に立つ乗金さん
 
あきらめないで
願い続ければ思いは叶う

 甲子園の審判はおよそ40名。全国の審判員のなかから選ばれた方々と肩を並べられることに、誇りと責任を感じています。ちなみに私が40名のなかで一番の若手です。高校球児にとって甲子園は夢の舞台。しかし、審判をやっている者にとっても、そこは夢の舞台なのです。甲子園の土を踏めると思うだけで、心が躍ります。実は、私の出身高校は、一年先輩と一年後輩は甲子園を経験しています。でも、私の学年はアルプス・スタンドで応援することしかできませんでした。龍谷大学でマネージャーをして、卒業後も地元に帰らずにここで働き、審判を務めていたからこそ巡ってきたチャンスです。
私の記事が掲載されることを機に、若い人が審判に興味を持ち、私達と一緒にやってくれる人が一人でも出ればうれしいことです。また、キャリア開発部で出会う学生の皆さんをはじめ、全ての後輩達に伝えたいのは、自分で線を引いてあきらめてしまうことなく、いつも挑戦をしていてほしいということ。希望と違う結果になっても、それが別の道につながっていたりする。あるときには叶わなかった夢が、また別の形で叶うことだってあるんです。
選手達のがんばりに応えるためにも、ありったけの思いを込めて、一生懸命ジャッジします。

(この取材は大会前の7月15日におこないました)

 

このコーナーでは、様々な方面で活躍する「龍谷人」を紹介しています。
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