龍谷 2012 No.73

地域と大学の相互発展をめざしてREC開設20周年
 
 社会に開かれた大学をめざして、1991年に開設した龍谷エクステンションセンター(REC)が、活動20周年を迎えた。本学における教育・研究機能の公開拠点として、地域社会との交流や「産・官・学」連携協力による教育・研究活動を推進してきたREC。2001年には京都の拠点としてREC京都を開設し、事業の幅を広げてきた。これまでのRECの歩みを振り返る。
 
先駆的な産官学連携
 RECは1991年、大学と社会との交流拠点として瀬田キャンパスに誕生した。1994年に竣工したRECホールはその象徴であり、ホール内に設けられた「レンタルラボ(貸し研究室)」は日本の大学初の試みとして注目を集めた。
 レンタルラボ入居第1号だった株式会社I.S.Tは、国内外にグループ企業を持つグローカル企業に成長した今も、本社を瀬田キャンパス近くに置く。研究開発や人材育成といった相互交流は現在でも続いており、まさに産官学連携の成功モデルとなっている。理工学部教員による手厚い技術相談や大型実験機器の貸し出しなどが評判となり、これまでに50社近い企業がレンタルラボに入居。 中小・ベンチャー支援や共同研究成果による実績から、イノベーションや生産性向上に役立つ先進的な
地域との交流拠点「RECホール」(瀬田キャンパス)
地域との交流拠点「RECホール」(瀬田キャンパス)

取り組みをおこなっている企業・団体を表彰する「ハイ・サービス日本300選」に選ばれるなど、経済界からも高い評価を受けている。

先駆的な取り組みだった「レンタルラボ」(RECホール内)
先駆的な取り組みだった「レンタルラボ」(RECホール内)
地域との交流拠点「RECホール」(瀬田キャンパス)
レンタルラボ入居企業との共同研究から生まれた「天然木自在シート」は、第3回ものづくり日本大賞で経済産業大臣賞を受賞
 
地域の生涯学習拠点として
 産官学連携と並んで推進をするのが生涯学習事業だ。特に市民のための公開講座をうたう「RECコミュニティカレッジ」は、1992年に8講座を開講。学びのニーズに応えるようにその数を増やし、現在では年間で440講座を開講。本学の特色である仏教や文化・歴史に関するテーマの人気が高く、年間で延べ1万人が学ぶなど、今や西日本で最も大きい生涯学習機関となっている。  
 コミュニティカレッジは京都・滋賀だけでなく、東京や大阪でも開講。自治体や企業とも連携し、ビジネスマンを対象とした「龍谷講座in大阪」も人気だ。また、小学生を対象とした「龍谷ジュニアキャンパス」を2010年度からスタートさせた。講師は本学の教員だけでなく、スポーツや文化系のサークルに所属する学生が担当し、子ども達に自然観察やスポーツの楽しさを教えている。
 
地域社会への貢献をめざして
 1998年に、地域における暮らしやすいまちづくりや社会的課題の解決をめざして、福祉フォーラムをREC滋賀に立ち上げた。福祉の専門職のリカレント教育「専門セミナー」や、一般を対象に「共生塾」を開催するなど、福祉分野における啓蒙活動をおこなっている。
 REC京都では、京都市、京都府からの委託を受けて「京都未来担い手アカデミー」や「福祉マネジメント科」を開設し、地域人材の育成に貢献している。また、REC京都を開設した2001年からは、学生ベンチャー育成事業をスタート。教育プログラムの開講やビジネスプランコンテスト「プレゼン龍」を開催するなど、学生の起業家精神の発掘と人材の育成をめざしている。
 龍谷大学では、これらの実績をもとに、今後も産業界・地域社会との連携を推進する。また、地域住民の多様な学習ニーズに応えられる生涯学習拠点としての機能強化を図ることにより大学の社会的責任に応えていく。
RECコミュニティカレッジは京都、滋賀に加えて大阪や東京でも開講
RECコミュニティカレッジは京都、滋賀に加えて大阪や東京でも開講
 
地域の生涯学習拠点として

1991年
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年

1997年
1998年

1999年


2000年

2001年

2002年

2003年

2004年

2005年


2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

●RECを瀬田キャンパスに開設
●RECコミュニティカレッジを開始
●REC研究員・REC会員規程を制定
●RECホール竣工
●京滋産学ジョイントイベントを開催
●滋賀県大津・湖南地域産業創造推進会議の委員に就任
●企業起こしセミナーを開催
●福祉フォーラムを設立
●関西ニュービジネス協議会NBK大賞を受賞
●京都信用金庫と技術評価委員を発足
●日本経済新聞社「ベンチャー・エクスポ2000」特別賞を受賞
●RECフェロー制度が通商産業省(現・経済産業省)の「コーディネーター派遣事業」に採択
●REC開設10周年を記念しREC京都を開設
●ビジネスプランコンテスト「プレゼン龍」スタート
●福祉フォーラム相談事業を開始
● 「プレゼン龍」学生実行委員会を組織
●REC産官学連携コーディネーターを採用
●RECビジネスネットワーククラブ(BIZ-NET)発足
●クリエイション・コア東大阪にREC東大阪を開設
●大津市と「まちづくりに関する包括協定」を締結
●RECコミュニティカレッジ東京を開始
●BIZ-NETが経済産業省「広域的新事業支援ネットワーク拠点重 点強化事業」に採択
●RECコミュニティカレッジ大阪を開始
●ビジネスマッチング交流会を開催
●滋賀県大学連携推進事業「環びわ湖大学コンソーシアム公開講 座」を開講
●内閣官房・内閣府「地方の元気再生事業」に採択され子育て・ 女性の就労を支援するプログラムを展開
●RECコミュニティカレッジ「終身会員制度」を導入 
●パナソニック株式会社と社会貢献連携講座をスタート
●RECの活動が認められ、本学が「ハイ・サービス日本300選」に選定される
●小学生対象の「龍谷ジュニアキャンパス」を開始

新春技術講演会
●新春技術講演会
科学技術共同研究センターと共催で、1990年から毎年1月に開催。産業界の最新の技術動向を紹介する講演会や、理工学部教員による研究成果の発表をしている。
 
学生ベンチャー育成事業
●学生ベンチャー育成事業
学生の起業家精神育成をめざして、2001年から開始。ビジネスアイデアコンテスト「プレゼン龍(ドラゴン)」から学生起業家も誕生した。
 
龍谷ジュニアキャンパス
●龍谷ジュニアキャンパス
小学生に学びの場を提供しようと2010年度にスタート。本学教員や学生が講師となり「自然観察」や「スポーツ」、「文化・芸術」の分野で年間20講座を開講している。
 
- REC20周年記念シンポジウムを開催 -

REC開設20周年記念誌「進取」
REC開設20周年記念誌「進取」

  12月10日、REC開設20周年を記念したシンポジウム「コーポレイティブ・エクステンションが拓く未来〜設立20周年を振り返り、新しい『地域との協働』をめざす〜」を瀬田キャンパスで開催した。  
 海外からルイス・フォートマン氏(カリフォルニア大学バークレー校教授)やレイモンド・ジュソーム氏(ミシガン州立大学教授)を招いての基調講演。嘉田由紀子氏(滋賀県知事)、北澤 宏一氏(独立行政法人科学技術振興機構顧問、東京大学名誉教授)・阪根勇氏(株式会社I・S・T・代表取締役社長)をパネリストに迎え、「地域、そして、世界から学ぶ〜コーポレイティブ・エクステンションの在り方」と題して、ディスカションがおこなわれた。  
 当日は行政や産業界、大学関係者ら200人が参加。RECセンター長の和田隆博理工学部教授は「20周年を迎えるにあたり、改めて滋賀の地からコーポレイティブ・エクステンションとその可能性について考えたい」と話し、RECが大学の社会貢献セクションとして果たす役割を再確認する機会となった。

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