「龍谷大学の新たなブランドの創造と浸透をめざしたブランディング活動」は、第5次長期計画(5長)のアクションプラン「大学広報機能の強化・充実」の施策として、昨年の2月より着手してきました。

ブランディング活動は、本学のめざす姿や独自の価値を、本学を取り巻くさまざまな人々が共有する取り組みです。

今年度9月より、これからの龍谷大学を象徴する新しいロゴマークとスローガンを導入することとなりました。

検討にあたっては、本学が長い歴史と伝統により培ってきた価値はもちろん、将来に向けて推進する5長の方向性や、学内外ステークホルダーへの意識調査を踏まえた結果、教育を重視し、本学で学ぶ学生の成長を主軸とする、本学の意志を表すものとなりました。

今後、5長をはじめとする諸改革の推進とともに、新しいロゴマークとスローガンを、さまざまな場面で発信し、本学への社会からの期待感を一層高めるとともに、社会的評価の向上やイメージ刷新を図っていきます。

これに先立ち、華道家で池坊次期家元の池坊由紀さんと赤松徹眞学長の対談が実現。

本学がブランディング活動に込めた思いや、両者に共通する伝統と革新、世界を視野に入れた未来への取り組みなどについて語り合いました。

学生には学ぶことの楽しさを発見して、自主的、積極的に学んでほしい。
そういう本学の姿勢を内外に向けて明確に打ち出すために着手したのが、ブランディング活動です。

未来に発展し続けるための革新

赤松 池坊さんも本学も、ともに長い歴史と伝統があります。しかし、さらに未来に継続・発展していくためには、「革新」という視点が必要ではないかと思います。池坊さんは今、「550年祭」や「いけばな未来プロジェクト」などをおこなわれていますが、伝統と革新について、どういうところに留意されているのでしょう。

池坊 今年は池坊が文献に現れてから550周年になります。また、仏教伝来とともに始まった仏前供花から考えると、さらに長い歴史を持つと言えます。そこで今年は、記念事業をいろいろと実施しています。例えば、いけばな展では550年間の文献にあるいけばなを時代ごとに復元します。私達を取り巻く自然環境と人の技術によって、綿々と続く歴史を花で復元できることは幸せなことであり、私達の財産でもあります。しかし、いけばなも時代とともに様式が変わってきています。池坊が生き抜くためには、常に時代の息吹を吸収して発信していかないといけないと思います。

赤松 龍谷大学は1639年に西本願寺の学寮として発足以来、建学の精神を基本に、時代のうねりをキャッチしながら教育機関としての役割を果たそうとしてきました。池坊さんの母体である六角堂(頂法寺)は、親鸞聖人が参籠して生きるべき道を模索されたゆかりの場所ですが、大学も絶えず生きるべき道を探っていかなければなりません。時代を追いかけるだけではなく、内面的にも方向性を探る。自分達自身がどう進むべきかを追求していくというのが、大学の太い幹としてあります。

池坊 龍谷大学が建学の精神をもって優れた人材を育成されているのは素晴らしいことです。池坊も、未来に向けて継続していくための重要なファクターは人だと考えています。突き詰めれば、私達がめざしているのは人づくりです。目の前のことだけでなく、次の時代を見据え、現代に生きる若い人の感覚を意識しながら、あるべき姿を模索していかないといけないのではないでしょうか。

赤松 おっしゃるとおりだと思います。本学では現在、教育、研究、社会貢献など、さまざまな項目に分けて第5次長期計画(5長)を進めていますが、重点を置いているのが人づくりです。学生には学ぶことの楽しさを発見して、自主的、積極的に学んでほしい。そういう本学の姿勢を内外に向けて明確に打ち出すために着手したのが、ブランディング活動です。そしてこのたび、龍谷大学の新しいコンセプトに基づくロゴマークとスローガンを決定しました。新ロゴマークは、躍動する龍谷大学の学生を表す〝r〟と、大学を表す〝U〟を組み合わせたもので、知性を感じさせるとともに、次代に飛躍するためのやわらかさ、しなやかさを持たせています。また、〝r〟の赤で、学生自らが主体となって、アクティブに動く姿や情熱を表現しました。一方、新スローガンには、学生一人ひとりが無限の可能性を追求し、既成の概念あるいは枠組みにとらわれずに、未知なる社会へも勇気を持ってチャレンジし、未来への創造的な一歩を踏み出してほしい、という願いを込めています。
 また、創立以来、進取の精神をもって発展を続け、豊かな伝統を培ってきた本学の価値に加えて、5長の将来像に掲げる、〝世界で躍動し、多文化共生を展開する大学〟につながる新しいイメージを打ち出していく上で、このスローガンはふさわしいものであると考えています。

池坊 社会的に閉塞感がある今の時代に、無限の可能性を信じて躍動する学生の姿をロゴマークやスローガンに込められたというのはいいですよね。さらに言うなら、限界を感じるときがあっても、そこから一歩踏み出す強さを持ってほしいものです。

教育力を伸ばし世界に躍動する大学へ

赤松 このようなイメージ刷新の活動に加え、5長の柱として2015年には国際文化学部を国際都市・京都へ移転。深草キャンパスを多文化共生の拠点として国際化していきます。一方、瀬田キャンパスには同年に農学部(仮称)を新設。食の安全・安心、食の循環やいのちをテーマに、国内的に問題となっている農業の疲弊、国際社会での食糧不足等の課題に応えられる人間を育てたいと考えています。

池坊 農学部という視点は時代にマッチしているように思います。仏教系の大学としても、ふさわしいテーマですね。地球規模で食を考え、国と国がつながったり、生命の根本を見つめたり。農業というのは生きるための根源であり、人と人との絆を考える上でも新しい展開をもたらしてくれることでしょう。私が担当する授業でも、以前は留学生が目立ったのですが、東日本大震災以降、日本の学生が増えています。自分達の足元を見つめることで、日本人とは何かを考え、未来につながるヒントをつかもうとしているようです。

赤松 また、深草キャンパスに国際文化学部が加われば、さまざまな地域の多様な文化背景を持った500人を超える留学生が、ここで学ぶことになります。日本の学生と留学生が混じり合い、他学部と交流する自由なキャンパスを創ることで、新たな可能性を見出したい。

池坊 京都ほど日本の伝統、歴史、文化をコンパクトに凝縮して学べるところは他にはありません。留学生の方々も京都にいることで、教科書やインターネットだけでは学べない日本を実感できると思います。

赤松 このようなさまざまな事業はすべて、5長の「研究を基盤にした〝教育重視の大学〟をめざす」という一貫性のなかでおこなっているものです。手法や手段は変化しても、学生達が豊かな未来を拓いていくために、「教育重視」は本学にとって、いつの時代も変わらないテーマとなっています。

池坊 私達の「550年祭」も、イベントをすることが目的ではなく、そこには生徒さん達が伝統文化を学び、日本人の意識や思考を知ることで、幸せな未来を切り拓いてほしいという不変の願いがあります。私たちは代々貫いてきた目的は守りながら、今は何が求められているのかを考え、新たな手法や仕組みづくりに取り組んでいます。

赤松 大学も長年培ってきた学術研究を知識として教えていくだけでなく、研究を通して学生に興味を持ってもらうような工夫が必要であると考えています。そして教育力を伸ばし、学生の成長をいかに支援していくか。世界に躍動する大学となるために、いかに本学の評価を高めていくか。5長やブランディング活動によって、そういう皆さんのニーズに応えていきたい。

わかりやすく発信されるといいと思います

池坊 龍谷大学は歴史の蓄積があるので、ブランディング活動等で、それをわかりやすく発信されるといいと思います。そうなれば、皆さんに理解しやすくなり、イメージも膨らみます。新ロゴマーク等による「新たな〝龍谷ブランド〟の創造」という新しい取り組みと、それを支える歴史や深み、厚みなどの蓄積とが融合し、一般の方に見えるかたちで、私のところにも届いてくれればと思います。

赤松 私たちは、ブランディング活動を通してダイナミックに5長を推進し、世界で躍動する龍谷大学をめざします。そして、在学生はもちろん、保護者、卒業生、受験生、企業等、大学を取り巻く皆さんにも、本学の方向性や思いが見えるよう努めてまいります。龍谷大学は、この秋から大きく変わります。どうか、ご期待ください。


赤松 徹眞 あかまつ てっしん 龍谷大学学長
1949年奈良生まれ。龍谷大学大学院文学研究科修士課程修了、龍谷大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。(文学修士)84年龍谷大学文学部講師、87年龍谷大学文学部助教授、98年龍谷大学文学部教授、2005年龍谷大学教学部長、2007年龍谷大学文学部長、2011年4月学長に就任、現在に至る。専門は日本仏教史、真宗史、近代史。
池坊 由紀 いけのぼう ゆき 華道家元池坊 次期家元
華道家元四十五世池坊専永の長女として京都に生まれる。1989年に得度し、華道家元次期四十六世に指名。2011年より、西国三十三所総献華をおこなっている。 国内外でのいけばな作品発表の他、講演活動やシンポジウムへの参加など、いのちを生かすという池坊いけばなの精神に基づいた多彩な活動をおこなっている。またアイスランド共和国名誉領事として両国の友好親善の促進と、日本の美と心の海外への普及に尽力している。京都経済同友会副代表幹事で、「大学のまち・京都」を考える特別委員会・委員長。