文学部特集
人を理解し、心を支えるための学問
臨床心理学科1期生のいま

今年、文学部に新設された臨床心理学科。これまで哲学科教育学専攻の教育臨床心理学コースのなかで専門的な研究、実践教育がおこなわれてきたこの学問分野が、現代社会においてより深く、幅広い対人援助に取り組む人材育成をめざして独立した学科となった。今年4月に入学したばかりの臨床心理学科1期生達は、今、どのような想いで臨床心理学と向き合っているのだろうか。

入学式からおよそ3カ月。臨床心理学にふれ始めたばかりの1年生達の関心も、この分野を志した動機も様々だ。

「自分とは違う考え方を持つ他者のことを知りたいと思ったんです」と臨床心理学科を選んだ立木さんは、入学以来、少しずつ自身の人間関係のあり方が変化していることに気づいたという。

「これまでは第一印象で人を判断することが多く、一度苦手意識を持ってしまうとなかなかその人との距離を縮めることができませんでした。でも、私が考えていたよりも人はずっと多面的。心理学にふれ、先入観を持たずにいろいろな角度から人を知ろうとするようになり、周囲の人の良いところがたくさん見えるようになりました」

臨床心理学科ではその教育内容の中心に「対人援助」を掲げている。学問分野としての心理学は多岐にわたるが、その根幹はあくまで人と人とのコミュニケーションなのだ。人間の心という繊細なテーマを扱う上では、他者への思いやりの気持ちが全ての基本になると児玉准教授は話す。

「臨床心理学は限られた専門家だけのものではありません。私達は日々、多様な人間関係のなかで生活しています。相手の話にじっくり耳を傾け、自分の想いをわかりやすく伝えることこそがこの学問の第一歩なのです」

それぞれの想いをかたちに

「みんな思っていた以上に真面目で意欲的。きっと、それぞれ目標や想いを抱えて臨床心理学科に入ってきてくれたのでしょう」と赤津講師は臨床心理学科1期生達の印象を話す。

高校で臨床心理士資格を持った先生に出会ったことがきっかけで、学校教育のなかで活躍する臨床心理士を志したという竹下さん。現在は臨床心理士資格とともに教員免許の取得をめざしているという。

「人の話を聞くのがとても上手で、いつも的確なアドバイスをされる先生でした。臨床心理士は社会での活躍の場が広いですが、なかでも教育現場で活かせることはとても多いと思います」

社会人経験を経て入学した司馬田さんは、臨床心理学の領域の広さにまず驚いたと話す。

「生理心理学や医療、生物学……。臨床心理学がここまで多元的な学問だったとは思ってもみませんでしたね。授業についていくのは大変ですが、人の心を複合的に学ぶことで見えてくることがきっとあるはずだと思っています」

ボランティアサークルに所属し、知的障がいを持つ人への援助活動をおこなっている落合さんは対人援助の現場で多くのことを吸収し始めている。

「人の心にも、臨床心理学にも明快な答えは無いんだと思います。授業もボランティア活動もまだ日が浅いですが、これから自分なりに課題とその解決策を見つけていくことができればと考えています」

臨床心理学科がめざすのは、心の問題を理解し、人に寄り添うことができる人材。「生きづらさの時代」といわれる現代、これから彼ら1期生達は様々な悩みや問題と向き合うなかで学びを深め、成長していく。