BOOKS 新刊紹介

◆出版助成◆

『英国コミュニティメディアの現在 -「複占」に抗う第三の声
松浦 さと子(政策学部教授)著者
「受信料」で支えられるBBCと「広告費」のみで運営される商業放送。多様性を重んじる英国では、この2種類の放送のみに人々の表現や思考が左右される「複占」状況を早くから危惧してきた。この「複占」に抗するために、基金や寄付、助成金など多様な財源で支えられた非営利コミュニティメディア。社会的排除を削減し、社会関係資本を構築する。本書はこれを報告した。
2012年2月刊/236頁/書肆クラルテ/2415円

『在日コリアンの経済活動 -移住労働者、起業家の過去・現在・未来
李 洙任(経営学部教授)編著、中村 尚司 (研究フェロー)、田中 宏(元経済学部特任教授)著、ほか3名
等質性の維持に力が注がれる日本社会において、外国籍住民を含むマイノリティによる経済活動の研究は立ち遅れていた。本書はとりわけ在日コリアン(日本在住の韓国・朝鮮人を総称)の戦前期からの経済活動に目を向け、その特性を明らかにする。経済のグローバル化を経てマイノリティ・ビジネスの急増した日本社会のあるべき姿をも投げかける意欲作である。
2012年2月刊/269頁/不二出版/3990円

『米国の対外不均衡の真実』
竹中 正治(経済学部教授)著者
米国の対外不均衡問題は、グローバルインバランスとも呼ばれ、その原因と持続性が長年にわたり研究と議論の対象となってきた。本書は2000年代に登場した対外資産・負債の総合投資リターンの格差に注目する研究視点で、米国の対外純負債の持続性の条件と2000年代における貿易収支赤字の拡大の原因についてオリジナルな仮説と検証を提示している。
2012年2月刊/162頁/晃洋書房/2520円

『非正規労働撤廃をめぐる法的課題』
脇田 滋(法学部教授)著者
パート、派遣、有期、個人請負など、「非正規労働」形態で働く労働者が全体の4割に迫っている。日本の非正規労働は、①不安定、②差別的処遇、③無権利、④孤立という特徴がある。EUや韓国は「非差別」という視点から非正規労働者を保護する法規制を導入した。本書は、世界の状況と比較しつつ日本的非正規労働撤廃のための課題を考察している。
2012年2月刊/343頁/高菅出版/4725円

『京ことばとその周辺』
泉 文明(国際文化学部教授)著者
京ことばには、美しさ・あでやかさ・丁寧さ・気配りのひびきとともに、曖昧・難解のイメージもつきまとう。「京都の文化とくらし」「京の年中行事」「京ことば例解辞典」の3部構成。京ことばを表層的に捉えるだけでなく、その深層部分に迫るべく京都人の思考方法や京都のならわしや諸行事についてもあわせて解き明かした。
2012年2月刊/230頁/晃洋書房/1890円

『里山のガバナンス―里山学のひらく地平
牛尾 洋也(法学部教授)、鈴木 龍也(法学部教授)編著者、丸山 徳次(文学部教授)、江南 和幸(龍谷大学名誉教授)、田中 滋(社会学部教授)著者
人の手が入ることでより豊かな自然を育んできた「里山」。しかし、暮らしや考え方の変化とともに、里山は荒廃してきた。本書は、里山保全の意義及び理念、さらにガバナンスの諸問題を検討し、危機に直面する実際の里山の保全のみならず、ポスト福島をも見据えた、持続可能な自然共生型社会の実現に向けて「里山」の可能性を追求する。
2012年3月刊/323頁/晃洋書房/3150円

『結ばれる一葉 ─メディアと作家イメージ
笹尾 佳代(元文学部特任講師)著者
「樋口一葉」はどのように伝えられてきたのか。また、一葉を語ることにはどのような意味があったのか。小説・映画・演劇・ラジオ・絵画・漫画など、多様なメディアを通して描きだされた一葉像とその作品の“ギャップ”を、社会情勢との関わりのなかで読み解くことから、時代とともに変容してきた文化としての〈一葉〉の軌跡をたどる。
2012年2月刊/282頁/双文社出版/3570円

◆共同研究活動◆

龍谷大学仏教文化研究叢書27
『問答と論争の仏教 -宗教的コミュニケーションの射程
マルティン・レップ(元文学部教授)、井上 善幸(法学部准教授)共編
仏教が展開する上で、宗教的コミュニケーション(相互交換)は、重要な役割を果たしてきた。本書は、それらの内容ではなく、形式に着目した学際的研究をまとめたものである。問答による教育、宗教間の論争や対話、ヨーロッパにおける対話の伝統、現代における伝道実践など、多岐にわたる課題を15名の研究者が論じている。
2012年2月刊/290頁/法藏館/3675円

龍谷大学仏教文化研究叢書28
『典籍と史料』
大取 一馬(文学部教授)編
本書は、本学名誉教授で仏教史学者の禿氏祐祥博士が寄贈された総数2360点に及ぶ文庫の、調査・研究の過程で気づいた問題や、各研究員がテーマとしている問題を論にした23編の論文を、典籍編・史料編の2部に分けて一書にまとめたものである。その内容は多岐にわたっているが、各分野の学界の域を超えた意欲的な論文が収められており、有意義な叢書である。
2011年11月刊/680頁/思文閣出版/8925円

龍谷大学社会科学研究所叢書第96巻
『現代市民法学と民法典』
池田 恒男(法学部教授)編著
本書は、米英基軸のいわゆるグローバリゼーションの圧力を背景に現在進行中の民法典の全面改正作業を横に睨みつつ、現代社会においてなお近代市民法に通底する普遍的論理の展開に未来の可能性を見出す民法研究者による、その原理的省察を試みる3編と重要な個別問題を扱う7編からなる論文集で、大正デモクラシー後に生まれたわが国の市民法学の中間総括と展望を示そうとするものである。
2012年3月刊/386頁/日本評論社/6300円

龍谷大学社会科学研究所叢書第96巻
『民際学の展開』
松島 泰勝(経済学部教授)編著
「これまでの科学は、われわれのくらしや社会の役に立っているのか?」という問題意識から、当事者の抱える諸問題に焦点をあて、研究を重ねてきました。民際学は、具体的な人、状況、機関、場所、組織などに基づく、具象性の強い学問です。本書は、くらしに基づく科学の再構築を模索するため、方法論、人権、地域、環境からの視点から論じました。
2012年3月刊/273頁/晃洋書房/2940円

龍谷大学社会科学研究所叢書第94巻
『刑罰論と刑罰正義』
金 尚均(法科大学院教授)編著
「刑罰」とは何か、何のために科すのか?この疑問は古くから問われ、しかも深遠な思想的背景から議論されてきた。裁判員裁判のスタート、被害者保護に対する社会的意識の高まり、テロリズムの恐怖、そして死刑といったアクチュアルな社会問題に照らして、本書は、刑罰という制裁が、現代社会における諸問題にどのように立ち向かっているのかを詳細に検証する。
2012年3月刊/293頁/成文堂/6300円

龍谷大学社会科学研究所叢書第93巻
『アフリカと世界』
川端 正久・落合 雄彦(法学部教授)編著
21世紀はアフリカの時代になる。独立から50年、アフリカは躍進しつつあり、アフリカと世界の関係は変化している。今、アフリカは従属から自立への「偉大な移行期」にある。アフリカの現在と将来を見据え、「アフリカと世界」の政治・経済・歴史・紛争・国際関係など主要事項について大胆に活写・解剖する、待望の論集。
2012年3月刊/420頁/晃洋書房/4725円

◆みんなの本棚◆

『ゆたかに生きる 現代語短歌ガイダンス』
吉岡 生夫(1974年文学部卒/歌人/兵庫県)著者
五句三十一音詩という概念を導入し、日本語の歴史を重ねることによって歌の歴史に新たな視座を開く現代語短歌ガイダンス、短歌再生の道しるべ。
2012年2月刊/144頁/ブイツーソリューション/1050円

『合掌のはなし 手を合わせると・・・』
谷口 幸璽(1973年文学部卒/浄土真宗本願寺派布教使/千葉県)著者
私達を真理へと導く、感謝と懺悔の礼拝。両手を合わせさえすれば、そこに慈愛の光が射込み、仏心の花が開く。先人たちの熱き合掌への願いを綴る。
2012年5月刊/93頁/探究社/1050円

『ゆきちゃんと健太君の野球帽』
中島 輝暁(1972年経営学部卒/兵庫県)著者
仲よしのゆきちゃんと健太君。パパからのプレゼントの野球帽がつむじ風に飛ばされて・・。心が温かくなるショートストーリー。
2010年3月刊/68頁/新日本文芸協会/800円

『迦陵頻のように』
泉 りょう(1975年文学部日本語日本文学科卒/大阪府)著者
四天王寺界隈を舞台に、しんとく丸の故事と母性を描く表題作ほか四編。第五回神戸エルマール文学賞佳作受賞作「三伏の候」収録。
2012年8月刊/203頁/編集工房ノア/2100円

◆「龍谷」出版情報◆

『中国の環境法政策とガバナンス』
北川 秀樹(政策学部教授)著者、編者
環境問題が深刻な中国の法政策の執行面に焦点を絞り、日本と中国の研究者がその現状と課題を分析し、環境ガバナンスの改善について考察した書。
2012年1月刊/262頁/晃洋書房/3990円
『現代国際法の思想と構造Ⅰ―歴史、国家、機構、条約、人権』
田中 則夫(法科大学院教授)編者
国際法学会名誉理事・松井芳郎先生古稀記念論文集の第一巻。現代国際法の基本課題について、東西第一線の研究者12名が寄稿。
2012年3月刊/384頁/東信堂/6510円
『現代国際法の思想と構造Ⅱ―環境、海洋、刑事、紛争、展望』
田中 則夫(法科大学院教授)編者
国際法学会名誉理事・松井芳郎先生古稀記念論文集の第二巻。現代国際法の基本課題について、東西第一線の研究者15名が寄稿。
2012年3月刊/460頁/東信堂/7140円
『ベーシック条約集・2012年版』
田中 則夫 (法科大学院教授)編者
1976年創刊の『基本条約・資料集』を1997年から『ベーシック条約集』と改名。再構成された編集委員会による最新の年次版。
2012年4月刊/1243頁/東信堂/2730円
『シリーズ:新しい時代の保育者養成』
中根 真 (短期大学部准教授)共著
「第1章 社会福祉と児童家庭福祉」を分担執筆した。児童家庭福祉の特徴、児童の人権擁護及び家庭支援の現状と課題を概説した。
2012年6月刊/167頁/あいり出版/2100円
『子どもたちはどこに~がれきの中のスイカ~』
羽溪 了 (短期大学部教授)絵
幼稚園で遊ぶてんとう虫と子ども達を襲った大地震と津波。はぐれた子ども達を捜すてんとう虫は、瓦礫のなかのスイカと出会う絵本作品の絵を担当。
2012年3月刊/31頁/KTC中央出版/1575円
『はじめて学ぶ 日本の戦争児童文学史』
相川 美恵子 (短期大学部講師)共著
近代以降の日本における戦争児童文学の歴史的な流れをまとめたもの。Ⅰ部では時系列的にその歴史を辿り、Ⅱ部では地域や素材別に論じている。
2012年4月刊/380頁/ミネルヴァ書房/3675円
『沈黙する人権』
石埼 学(法科大学院教授)編者
肝心な時に「沈黙」を余儀なくされがちな「人権」。人権論やそれをとりまく状況に埋め込まれた「構造悪」に挑む9本の論考。
2012年5月刊/280頁/法律文化社/3360円
『熱輻射実験と量子概念の誕生』
小長谷 大介(経営学部准教授)著者
本書は、広く知られていない19世紀末ドイツの熱輻射実験の展観を描出し、実験研究側から見た、量子概念の誕生までの物語を示している。
2012年2月刊/345頁/北海道大学出版会/12600円
『サッカー選手として知っておきたい身体のしくみ・動作・トレーニング』
長谷川 裕(経営学部教授)著者
サッカーの上達に必要なボディコントロールとボールコントロールのコツを豊富な図と写真でわかりやすく解説。写真モデルはすべて本学サッカー部員。
2012年6月刊/239頁/ナツメ社/1680円
『朝倉日英対照言語学シリーズ 第7巻:語用論』
五十嵐 海理(社会学部准教授)共著
語用論的分析手法によって言語使用の様々な側面が、これまでどのように分析され明らかにされてきたかを具体的に示す。
2012年8月刊/150頁/朝倉書店/2800円
『戦友会研究ノート』
新田 光子(社会学部教授)共著
軍隊において戦闘体験や所属体験を共有した仲間が再び集まって作った戦友会は、日本独特の社会現象である。その特徴を60項目の内容にまとめた。
2012年3月刊/227頁/青弓社/2100円
『ロバート・フロスト:哲学者詩人』
藤本 雅樹(文学部教授)、福本 宰之(文学部教授)共訳(ほか3名)
米国の国民的詩人ロバート・フロストの哲学思想を綿密に論じた本格的研究で、従来の歪められたフロスト像に根本的な修正を加えた革新的な業績。
2012年2月刊/486頁/晃洋書房/5040円
『成人のADHDに対する認知行動療法』
武田 俊信(文学部教授)翻訳
本書はADHDのある成人の①日常の困難②その治療法③治療法の根拠の検証 ④症例呈示⑤治療過程の問題点⑥治療終結後のサポートまでを説明する。
2012年7月刊/250頁/金剛出版/3780円
『誰でも使える民事信託(第2版)』
今川 嘉文(法学部教授)編著者
財産管理・後見・企業承継・まちづくり・後見制度支援などを民事信託の利用で解決の提言書。好評で1年で「2版」発刊。
2012年6月刊/362頁/日本加除出版/3570円
『東日本大震災~復旧・復興に向けて~』
今川 嘉文(法学部教授)共著
震災復旧・復興の具体的提言。
2012年2月刊/250頁/晃洋書房/2415円
『古事記─神話と天皇を読み解く─』
平林 章仁(文学部教授)共著
『古事記』が語る日本の誕生と天皇家成立の由来には、編纂当時の歴史的背景や、政治情勢が重層的に反映されていることを、平易に読み解いた。
2012年6月/623頁/新人物往来社/3675円
『ギリシア正教―東方の智』
久松 英二(国際文化学部教授)著者
カトリックともプロテスタントとも異なる「もう一つのキリスト教」。独自の三位一体思想など、知られざる深遠なる思想の奥義に迫る。
2012年2月刊/272頁/講談社/1680円
『季吟筆土佐日記之抄〈影印〉』
日下 幸男(文学部教授)編著
三浦周行博士旧蔵『土左日記之抄』2冊(個人蔵)を影印で紹介する。該書は北村季吟自筆の奏覧本副本で、天下孤本である。
2012年3月/213頁/龍谷大学文学部日下研究室/非売品
『自分の説明書の創り方』
東田 晋三(社会学部教授)著者
学生が自分の生き方を自分の言葉に置き換える手引書。2008年発行「自分の説明書の作り方2010」の改訂版。
2012年4月刊/239頁/ドリームシップ/1500円
『DVDでわかる家族面接のコツ①「夫婦面接編」』
東 豊(文学部教授)著者
システムズアプローチによる家族面接のすすめ方をロールプレイを用いたビデオとそのプロセス解説により詳述した。第一巻としての「夫婦面接編」。
2012年4月刊/157頁/遠見書房/6930円
『シリーズ大乗仏教9 認識論と論理学』
桂 紹隆(文学部教授)編者・共著
存在論、認識論、論理学、真理論、言語哲学、そして全知者と輪廻と刹那減の輪証の視点から、仏教論理学の基本的構造と現代的意義を示す。
2012年1月/294頁/春秋社/2940円
『生成する身体の社会学─スポーツ・パフォーマンス/フロー体験/リズム─』
亀山 佳明(社会学部教授)著者
身体は生きて動いている。この体験される身体を、スポーツ・パフォーマンスを介して、心と体が一体となる状態に焦点化して、考察する試みである。
2012年2月/294頁/世界思想社/2940円