キャリア・就職エッセー

多様化する学生の就職活動

2004年当時、就職支援を通して学生と接するなかで感じたのは、学生の「二極化」でした。一人で複数の内定を取る学生となかなか内定が取れない学生。前者は就職に対する意識が高く、後者は低い。総じてそのような傾向が見られました。その意識の差をどう埋めて、本人が希望する進路の実現を支援するか。そうした課題も念頭に置きながら、学生と向き合ったことを思い出します。その後、2008年から3年間キャリアセンターを離れ、2011年の春に再びキャリアセンターに戻りました。

3年ぶりに学生と向き合って何より驚いたのは、学生の変化です。昨今の厳しい就職環境を考えて早くから準備をする学生から、就職を自分の問題として捉えていない学生まで、就職に対する考え方や就職活動に取り組む姿勢に、学生間でかなりのばらつきがあり、就職活動の進捗度にも大きな差が広がっています。その結果、就職活動が長期に及ぶ学生も少なくありません。以前は「二極化」として捉えられた学生の就職活動が、今は「多様化」する傾向にあると感じています。

このような状況を踏まえて、キャリアセンターでは「就職活動状況把握システム」を構築しました。Webアンケートを通して4年生春時点の学生一人ひとりの就職活動状況を把握しています。この時点で、多くの学生は「就職活動中」と回答しますが、なかには「これから活動を始める」、「まだ将来の進路について考えていない」と回答する学生もいます。このアンケートでは「グループディスカッションが苦手」、「筆記試験は通るが、面接で落ちる」など、就職活動での悩みや課題等も聞きます。これらを踏まえて、学生が必要としている支援プログラムを課題別に企画しタイムリーに実施するとともに、学生の状況に応じて、個別相談を重視した支援を行っています。

就職活動は入試とは異なる

「面接に入る時、ノックは2回ですか、3回ですか?」、「履歴書にこのようなことを書いても大丈夫ですか?」、「エントリーシートに何を書けばいいですか?」。いずれも学生からよく聞かれる質問ですが、近年は、以前にも増してこのような就職活動のハウツーに関する質問や、答えを求める傾向がより強くなってきました。学生はこれまで、中学・高校・大学と、それぞれ進路選択の節目では、正解を答えて一定の点数をとれば合格できる「入学試験」という壁を乗り越えてきました。就職活動においても、これまでと同じように、入学試験の感覚で臨む学生が多くいるのではないかと感じます。

しかし、就職活動は入試ではありません。就職活動をするうえで、これが絶対という答えはないのです。採用担当者は、エントリーシートや面接での質問を通して、「なぜそう思うのか」、「自分はどのように考えるのか」など、その学生の考え方や価値観などを知りたいのです。さらに、学生との会話を通して伝わってくる人柄や性格などを見ています。

「これを言えば、落とされるのではないか」、「この方が、受けが良いのではないか」などと、答える内容を気にし過ぎると、本当の自分の良さを伝えられなくなってしまいます。

自分を相手(企業等)に合わせるのではなく、「自分はこの会社の仕事ができるか、ここの社員と一緒に働きたいと思える会社かどうかを自分の目で見極める」という姿勢で、自信をもって就職活動に臨んでほしいと思います。このように、就職活動に正解はないと理解した学生、良い意味で開き直れた学生は、そこからの就職活動で自分の強さを発揮しているように思います。

私がキャリアセンター(当時:キャリア開発部)に着任したのは2004年、今から9年前になります。以来、数多くの学生と接するとともに、様々な企業の採用担当者の方々とも話をしてきました。日々のキャリア・就職支援を通して、最近の就職活動について感じること

保護者の役割

3年生(短大は1年生)の12月から本格的に始まる学生の就職活動は、準備期間を入れると半年〜1年以上と長期間に及びます。この間、学生は様々な不安やプレッシャーと戦っています。面接に落ちても、その理由を教えてくれる企業はほとんどありません。そのため、何が足りなかったのか、どうすれば良いのかと自問するなかで、自分の全人格を否定されているように感じてしまう学生も少なくありません。また、同じように活動してきた周りの友人が内定したと聞くと、焦りや不安が増して落ち込んでしまい、次へと気持ちを切り替えることが難しくなる学生もいます。

このような時に大きな支えとなるのが、保護者の存在です。育ててきたからこそ知っている、見守ってきたからこそわかる。保護者はその学生のことを誰よりもよく知る、一番の理解者です。疲れたとき、落ち込んだときに自分のことを一番よく分かってくれる人がいるというだけで、学生にとっては大きな励みになります。

昨今の就職活動は、活動時期をはじめ、応募方法や企業の選考スタイルなど、いずれも保護者の世代とは大きく違ってきています。「就職活動をおこなう子どもにどのように接すればよいのか」、「何をアドバイスすればよいのか」など、保護者の方々から質問を受ける機会も増えました。

キャリアセンターでは、昨年、保護者のための就活支援ガイド『子どもの就活に親の出番はないと思っていませんか?』という冊子を作成しました。就職活動をするのはあくまでも本人で、保護者があれこれ手を焼き、口を出すことではありません。保護者の発した一言が学生にとって逆効果になる場合もあります。しかし、保護者は学生の一番の理解者であり、また一番身近な社会人です。保護者にしかできない大切なサポートがあると思っています。本冊子では、現在の就職環境や就職活動の実態を解説するとともに、保護者の皆さまにお願いしたいサポートや、やってはいけないNGアクションなどを紹介しています。  全国保護者懇談会において本冊子を配布し、保護者の方々と懇談の機会を持たせていただいています。一人でも多くの方にご参加いただき、保護者とキャリアセンターが連携をとりながら、学生のキャリア・就職支援をしていきたいと思っています

親和会では、大学と共催で、毎年5〜7月の間に、北は札幌から南は鹿児島まで全国29都市において「全国保護者懇談会」を開催し、学修、就職に関する面談をおこなうとともに、詳しい資料をお渡ししています。4月には全保護者へご案内をさしあげますので、ぜひご参加ください。

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