新棟紹介 ナレッジコモンズ活用術

2015年4月から、深草図書館は新棟・和顔館を中心に新しく展開しています。和顔館には、龍谷大学ラーニングコモンズ(スチューデントコモンズ、グローバルコモンズ、ナレッジコモンズ)が設けられており、図書館内のナレッジコモンズは、豊富な学術情報を活用しながら自由かつアクティブに学び合える、「知の交流空間」、「学びのリエゾン空間」として学習支援を展開しています。また同年9月に瀬田学舎にも龍谷大学ラーニングコモンズが開設され、瀬田図書館においてもナレッジコモンズが発足しました。
現代の大学は、「TeachingからLearningへ」という言葉に代表されるように、学習のあり方が大きく変化してきました。そのためアクティブラーニングに対応する多様な場所とサービスの提供が求められるようになってきており、多くの大学でラーニングコモンズの設置が相次いでいます。

本学における学習支援の歴史

本学は、学生の自主的な学習を促進するためには教室以外の学習施設の整備が重要であるとの認識にたち、他大学に比較しても早い時期から、それら施設の整備をおこなうとともに、継続的なサービスを提供してきました。先ず2 0 0 1 年度に深草学舎に「Learning Crossroads」というパソコンを常設した教員と学生の相互利用施設を開設し、さらに2007年度からは、瀬田学舎に「ライティングセンター」を設置しティーチングアシスタントによる学習支援体制を構築しました。

図書館における学習支援の展開

2012年度には深草図書館内に「グループ学習エリア」を開設し、学生の自立的かつ主体的な学びを支援する環境を創造しました。このグループ学習エリアは、本学におけるラーニングコモンズの嚆矢であり、その後の「龍谷大学ラーニングコモンズ」設置のモデルケースとなりました。またこの年には、私立大学図書館協会が主催する国際図書館交流シンポジウム「大学図書館における学習支援を考える」が本学響都ホールを会場に開催されました。

大学図書館の新しい役割

ナレッジスクエア

大学図書館における学習支援が、ラーニングコモンズという単なる場所の提供だけに終わっては意味がないことは明かです。これまでの図書館の利用者支援は、施設利用の仕方(図書館ガイダンス、図書館ツアー等の実施)と、資料検索の仕方(各種データベース講習会等の実施)の説明が主に行われてきました。そして、個別にはレファレンスカウンターによる利用者対応が中心でした。
これら伝統的な利用者支援に加え、これからの図書館にはさらに進んだ学習支援の機能が求められています。
より主体的に学生に接し、教育支援の拠点の一つとして図書館が機能していかなければならないのであり、その取り組みの一つがナレッジコモンズの設置です。本学図書館は、第5次長期計画の包括的学生支援体制の整備にもとづいて、今後とも学びの深化や社会の期待に応えるべく、様々なサービスを提供し続けて参ります。

ナレッジコモンズ(深草)

明るく開放感あるガラス貼りの建物、それが和顔館(わげんかん)です。
深草図書館は2015年度からこの和顔館を中心に新しく展開しています。地上3階地下2階からなる図書館は、既存の8号館と連結して、これまで以上に充実したスペースと快適かつ利便な学習環境を実現しています。深草図書館はフロアごとのゾーニングを図り、さらに多彩な閲覧席を設けることで、多様な利用方法に対応可能です。4月のグランドオープンから12月までの深草図書館の入館者は対前年比の1.58倍、貸出冊数も1.25倍と、着実に利用実績を延ばしており、図書館への期待が大きく高まっています。
とりわけ、深草図書館の地下1階と2階(一部)は、学生が主体的に「調べ、考え、書き、作る」“知の空間”であるナレッジコモンズ(深草)として、新たなステージを迎えました。ナレッジコモンズ(深草)では、図書館の豊富な学術情報を活用しながら、自由かつアクティブに学び合うことができます。会話OKエリアであるナレッジコモンズ( 深草)は、「ナレッジスクエア」「グループワークルーム」「AV&PCコーナー」からなります。
オープンスペースの「ナレッジスクエア」は、学び方に応じて可動式の机や椅子、ホワイトボードを移動させることで空間を自由にデザインできるため、グループでの発表やプレゼンの準備などに最適です。隣接するサービスカウンターではプロジェクターの貸出などとともに、学習支援も行っています。
2階と地下1階に計7室ある「グループワークルーム」ナレッジコモンズ( 深草)はガラスで区切られた部屋ですので、仲間と集ってじっくり考え、熱く議論することができます。
「AV&PCコーナー」には、パソコンを40台設置しています。D V Dなどの視聴覚資料やデータベース、インターネットの利用はもちろん、ワード、エクセル、パワーポイントを使ってレポートや資料などの作成もできます。なお、深草キャンパス全体で利用できるノートPC等の貸出は、スチューデントコモンズ(深草)で行っています。
また、ナレッジコモンズ(深草)では、これまで「出張オフィスアワー」の実施や「文章力アップセミナー」を開催するなど、学習の場としての役割を積極的に周知させることにより、学生の自主的な活動の醸成に努めています。
さらに、図書館では2013年度からライブラリーサポーター制度が発足しました。ライブラリーサポーターは、ボランティアスタッフとして、図書館の活性化・利用促進を目的としたイベントの企画や運営を行っています。今年度は、新・深草図書館開館記念「謎解きゲーム」の企画・運営も行い、多くの参加者に新図書館を楽しんでいただきました。またそれ以外にも、ビブリオバトル、お薦め本の展示、ミニ展観なども実施しています。特に9月には、親和会の助成金をいただき、下関で開かれた「第5回大学図書館学生協働交流シンポジウム」に参加し、ポスターセッションでは東京大学をはじめとした参加大学と並んで本学のライブラリーサポーターの活動報告を行いました。

大学図書館学生協働交流シンポジウム

文章力アップセミナー

ビブリオバトル①

ビブリオバトル②

ナレッジコモンズ (瀬田)

テラス側から見たナレッジコモンズ

ナレッジコモンズ瀬田の風景

ミニ講義

瀬田ラーニングコモンズは、深草での開設から約半年後の、9月14日にオープンしました。ナレッジコモンズ(瀬田)は、図書館本館地下1階に設置したナレッジスクエアを中心に、グループワークルーム(6室)を設置している他、智光館の地下1階のスチューデントコモンズ(情報メディアセンター)と連結し、情報機器の活用が可能です。また、移動可能な机や椅子、ホワイトボード等
を設置し、学生のプレゼン練習やゼミ発表の準備、その他図書館の学術情報を使用した様々な学習について声を出しても可能な空間として利用できます。
ナレッジコモンズ(瀬田)の設置にあたっては、2015年前期に瀬田図書館本館地階1階(延べ床面積 約970㎡)の約半分の人文科学系の書籍を自動化書庫へ移動するとともに、夏期休暇期間中に入退館 ゲートやフロアなどの改修工事を行いました。4月に
開設された深草図書館に続き、学術情報を使いながら、自由かつアクティブに学びあえるナレッジスクエアと個室形態のグループワークルームが瀬田図書館にも完成しました。
ナレッジスクエアは、もともと個人キャレル約100席であったものを変更し、改修工事の結果、約150席を確保しました。また、グループワークルームは、6室ありますが、特に改修工事は行わず、従来の「学習室」から「グループワークルーム」に名称変更し、ナレッジスクエアと同じ椅子や机に入れ替えし、6名から18名まで収容できる部屋として刷新しました。
設備関係は、自由に移動可能な変形型の机や椅子の他に、スクリーン兼用のホワイトボード、プリンター、コピー機を設置し、プロジェクターの貸し出しも行います。また、隣接するスチューデントコモンズ(智光館地下1階)との間に新たに出入り口を設け、学生の動線やコモンズ間の連携をより一層図れるようにしました。ナレッジスクエアに無線LANを敷設し、学生がノートPCやプロジェクターを智光館にある情報メディアセンターから借用することも容易にしています。さらに、本館地下1階にカウンターを設け、テラスも改修し学生の憩いの場とするなど、瀬田図書館全体のフロアのゾーニング化を行うことにより、ナレッジコモンズは、「会話OK」、それ以外は「静かなエリア・一般的な閲覧・学習エリア」に区分し、学びの環境とサービス体制も整えました。
新設されたナレッジコモンズ(瀬田)は、ナレッジスクエアを中心に連日たくさんの利用者に活用されています。
瀬田図書館では、同時に学生への情報提供として、展観の開催やライティングセンターと連携し「論文作成方法」の講習会や瀬田学舎の学部教員の協力により「ミニ講義」や「オフィスアワー」をナレッジスクエアで開催しています。 
利用者が学術情報の収集・利用・創造・発信ができるようワンストップで支援する「知の広場」としての図書館へ一歩踏み出し歩み始めました。 

ライブラリーサポーター活動中!!

私達ライブラリーサポーターは、深草図書館で活動しています。主な活動としては、ビブリオバトルの運営、お薦め本展示、企画展示、libれぽ作成、図書館内におけるイベント
の企画と運営です。
現在、1回生から4回生までの15人ほどで活動していますが、学部も学年もバラバラなため、中々全員が集まってミーティングを開くことは出来ません。その中でも各人が自発的に企画展示などを行っています。
昨年春には「謎解きゲーム」と称し、学生の皆さんに新図書館内で謎解きに挑戦していただきました。その他、琳派や絵本の企画展示、 DVD上映会やビブリオバトルを開催しました。また京都女子大学との交流会も行いました。
ライブラリーサポーターはまだまだ構内での認知度は低く、より活発な活動をしていかなければならないと感じています。そのため3回生は勿論のこと、現サポーターの1、2回生と、この活動に興味を持って入って下さる新メンバーにも期待を寄せています。

ナレッジコモンズは、学生の自主学習に役立てられる新たな活用場所として生まれたものです。かつて、大学における学習環境の物足りなさが、私にはありました。そう感じていた私としては、この空間が作られたことはとても大きなものでした。いくつか理由はありますが、何より会話を通した学習が可能というのが最たるものです。それは、一学生の私として、友人達とのやり取りを通じた学習が必要と思う場面が多くあったからです。
またライブラリーサポーター、図書館アルバイトとしてナレッジコモンズに関わっていくと、それだけではない需要がここにあることが分かりました。そこには、グループワークやサークルのミーティング、友人達との本を通じた会話がありました。会話ができるという利点が多くの学生達を引き寄せていたのです。私が考えていたよりも幅広い活用があり、そしてそういった活用から足を運んでもらうことで、図書館の利用へと繋ぐこともできているのだと感じています。

図書館長からのメッセージ

龍谷大学図書館では、2014年3月に「理念と目標」を制定しました。そのなかで、図書館の使命は「『知の広場』として機能すること」であると謳っています。
「大学図書館は心臓である」と言ったのは、ジョンズ・ホプキンス大学の初代学長D・C・ギルマンです。教育・研究に必要な学術資料と閲覧席を備えた図書館は、今も昔も大学に不可欠の中心施設です。ただし、今、図書館に求められているのは、威風堂々とした静謐な「知の殿堂」ではありません。むろん、落ち着いた空間でじっくり学ぶことも重要です。しかし、それにかぎらず、多様な学生が多様なスタイルで学び、多様な知的交流をできる環境を提供することこそが、現代の大学図書館の役割だと考えます。こうした新たな図書館像を、私たちは「知の広場」と表現しています。
この「知の広場」を具現化したのが、2015年4月に開館した新・深草図書館です。新校舎「和顔館」南棟の地上3階から地下2階までを占める同館は、学生にとってより快適かつ利便な学びの拠点となっています。実際、今年度の入館者数は前年度比1.5倍以上で推移するなど、新たな図書館の魅力は学生にも確実に浸透しています。
とくに、地下1階のナレッジコモンズは、利用から滞在へ、閲覧から学習支援へと変化する図書館の象徴的存在です。コンセプトは「学生が主体的に『調べ、考え、書き、作る』知の空間」です。学生による多様な学びを支援する龍谷大学ラーニングコモンズの一角としても位置づけられるナレッジコモンズは、施設・コンテンツ(学術情報)・人的支援が揃った、知的活気にあふれる広場として着実に機能し始めています。
昨年9月には瀬田図書館内にもナレッジコモンズを開設しました。大宮図書館でも学習支援機能強化を検討中です。変わりつづける図書館に完成などありません。私たちは、変化を恐れず、しかし学生の主体的学びを力強く支援しつづける図書館を目指します。学生とともに成長していくナレッジコモンズ、そして図書館に、どうぞご期待ください。
合い言葉は、カモン、コモンズ!

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