校友クローズアップ  宇田 吉範さん

2017年9月掲載
※所属・役職・記載内容等は掲載時期のものです

校友クローズアップ

珈琲で世界の人々を幸せに

Ogawa Coffee USA,Inc.
代表取締役兼CEO
宇田 吉範さん

2017年度 龍谷奨励賞受賞
(1993年 社会学部卒業)

校友会報85号(2017年9月発行)より

宇田 吉範さん

私の会社は大卒だと基本的に営業に配属されるのですが、コーヒーのことを学びたいと、無理を言って工場に行かせてもらいました。ここで10年間。その頃ですね、会社づくりの仕組みなどを考えるようになりました。

実は、私はISO(国際標準化機構)のインスペクター(検査官)の資格を持っているんですよ。ISO9001の資格を得るため、いろんな勉強をしました。そのノウハウをもとに、会社のあり方を根本から洗い直しました。学生時代、瀬田キャンパスでは他校にさきがけて、コンピュータの授業がありましたから、工場の中のシステムをつくり上げるときなど、大いに役立ちました。また現在、当社の主力商品となっているものは、ほとんど私が開発したものです。

一方、「バリスタ」を日本で広めました。バリスタとは、お客さんの注文を受けて、おいしいコーヒーを淹れるスペシャリストのことです。発祥地のイタリアに赴いて勉強し、バリスタトレーナーとして教則本も出し、バリスタの競技会での世界チャンピオンなど、多くのトップバリスタを育ててきました。

アメリカって、世界最大のコーヒー消費国なんです。飲む層も厚く、日本では体験できないコーヒー文化があり、それを肌で感じようと、いろいろ探し歩いた結果、ボストンでした。ここにはハーバードなどの一流大学や有名企業が集まっています。そこに店を構えることで、各分野でトップを走っている人と会うことができ、多様な考え方や発想を吸収できます。そういう人たちに、私は今、こういうことを考えていると打ち明けると、じゃあ自分たちの業界で何かできないか……と。そんな環境の中から、次の行動へのヒントが生まれるのではと、ボストンを選択したのです。

また私はコーヒーバイヤーとして、一年の大半を中南米やアフリカなど、世界10数ヶ国で豆を買い付けています。だったら日本よりアメリカにいたほうが、地の利がいいのです。

コーヒーを将来に末永く残していくには、どうしたらいいかを考えています。たとえば、コーヒーを通してコミュニティに関わっていけるようなものを作りたい。もっと身近な言葉で言えば、コーヒーを通して、みんなが幸せになる――そういう世界ですね。コーヒーが持つ特性、利点をもっともっと活用することによって、コーヒーがいつまでも世界で愛され続ける。それが同時に、生産国の人々の生活を守る。新たなチャレンジは、これからです。

宇田 吉範(うだ・よしのり)

1970年、滋賀県生まれ。1993年に社会学部社会学科(笠原成郎ゼミ)を卒業し、小川珈琲(株)に入社。製造、営業、企画、商品開発などを経て2011年取締役生産本部長兼クリエイツ統括本部長に就任。2015年にOGAWA COFFEE USA,INC.社長/CEOとして、初の海外店舗を米国ボストンに開店。
学生時代は瀬田キャンパスに「セターズバスケット」を立ち上げた一人でもある。
2017年、龍谷奨励賞を受賞。