龍谷大学仏教文化研究所

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「中国における宗教事情の実態調査と資料蒐集」の報告

人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター
仏教文化研究所 仏典翻訳研究会
代表 武田龍精

2007/04/06

報告者 北岑大至
日時 2007年3月26日(月)―2007年3月30日(金)
訪問先
  1. (1)中国社会科学院世界宗教研究所
  2. (2)中国仏教協会
  3. (3)北京師範大学
  4. (4)北京大学

(1)中国社会科学院世界宗教研究所

日時 3月27日(火)
 副所長
魏道儒 仏教研究室主任
松 宗教文化芸術研究所副主任
他8名
<交流会概要>
  

中華人民共和国(以下中国)の哲学及び社会科学研究の最高学術機構である中国社会科学院は、政府の政策立案・意思決定の調査と分析を行う機関(シンクタンク)としての役割も担っている。その中に設置されている世界宗教研究所は、唯一国家レベルにおいて宗教研究を行う専門的な学術研究所である。当研究所は1964年設立され、現在9つの研究室を設けている。また現在在籍している研究員は研究員20名、副研究員26名、補助研究員22名であり、45歳以下の全研究員が博士号取得者である。

副所長である金先生のお話によると、これまで日中間交流は日中仏教研究会として鎌田茂雄先生や上山大峻先生や末木文美士などと交流を深め、大学間にあっては東京大学、東洋大学、創価大学などと学術交流をしているという。

そこで、武田龍精先生は世界宗教研究所への想いを次のように語られた。 平成元(1989)年に龍谷大学は創立350周年を迎え、その記念事業の一環として、「親鸞と現代―国際化と世界宗教対話」と題し、従来の人文・社会・自然の諸科学を総合する人間科学の立場から「科学と宗教」の関係を問い直そうとハーバード大学との国際シンポジウムを開催した。ハーバード大学からは、当時の世界宗教研究所所長であるジョン・B・カーマン博士、並びにキリスト教神学者ゴードン・D・カウフマン博士、また永富正俊博士を招待して基調講演をして頂いた。そのシンポジウムの時に私は、龍谷大学がもつ「仏教文化研究所」を「世界宗教研究所」へと機構改革するよう提言し、ジョン・B・カーマン博士も、もし龍谷大学に世界宗教研究所が設立されたならば、ハーバード大学の世界宗教研究所が所蔵する全文献資料の利用ができるようにしようとまで提案してくださった。しかし、今日に至ってもその機構改革は実現していない。私の想いは、ハーバード大学世界宗教研究所と、中国社会科学院世界宗教研究所と、龍谷大学世界宗教研究所が提携し、情報交換並びに学術交流を行っていき、広範囲なネットワークを形成していきたい。そのネットワークの拠点の任務を龍谷大学世界宗教研究所は担うものである。その為には、まず相互の情報交換から進めていき、それから龍谷大学側に、世界宗教研究所設立を再度進言していきたいと思う。

武田先生の想いを受けて、金副所長は次のように提案された。

まずは、龍谷大学と当研究所間において小規模な研究会をスタートさせることから始めてみてはどうか。最近のシンポジウムのテーマは「宗教と法律」などで、2年間継続されている。私はシンポジウムや研究会のテーマも多分野にわたり共同研究していかなければならないと考えている。また現在、世界宗教研究所は若い研究生の育成に努めており、中国社会科学院内に大学院を設置し、その中に宗教研究科を設けている。そこの学生と龍谷大学生との交換留学制度を確立してはどうであろうか。さらには、研究生交換制度も確立することは十分意義のあることと考える。

武田先生も金副所長の提案に賛同し、相互交流の重要性を指摘された。

今日の宗教多元の時代においては、対話による相互理解が大変重要であり、そこにこそ各宗教が共生していく道があると考えている。また大気汚染や核の問題などは人類共通の問題として共同で考えていかなければならない。特に最重要問題は、核の問題であると考えている。このことは、世界宗教者、仏教者が共同で考察していかなければならないものである。

金副所長は、当研究所名に「世界」と付けてあることが大変重要であると述べられた。それは、武田先生も指摘したように、世界の宗教者が集い、学術交流をしていく拠点となるようにとの願いが込められているからである。

次いで武田先生は、現在の中国共産党国家と世界宗教を広範囲にわたって研究しようとする当研究所との関係はどのようになっているのかと質問された。そしてまた、その中にあって各研究員の「信仰」という側面についても聞かせて頂きたいと述べられた。

このことに関して金副所長は、次のように述べられた。

私達研究者は、信仰者ではない。マルクス宗教観念に立脚して研究を進めている。宗教において調和を図り、国家において団結をしなければならないのである。宗教というのは世界平和のために向っていかなければならないと考えている。

最後に武田先生は次のように話された。

これまでの日本は、情報操作を行うことによって戦争へと導いていったという歴史がある。それは、戦況が不利であるにもかかわらず、有利に進んでいるかのごとく情報を流し、国民を操作して、戦争へと協力させていったことなどである。情報の開示は大変重要なことであると考えている。今後、世界宗教研究所や龍谷大学が、相互に情報を開示し、交換して、学術的交流が行えることを念願している。

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(2)中国仏教協会

日時 3月28日(水)
張 琳 副秘書長
他1名
<交流会概要>

まず初めに、中国の仏教事情に関して、中国仏教協会副秘書長である張琳先生にお話しを頂いた。 中国では、漢語によって伝えられる漢語伝仏教、パーリ語で伝えられるパーリ語伝仏教、チベット語で伝えられるチベット語伝仏教があり、基本的な伝道形態は顕教と密教の二種類がある。現在の中国政府の調査によると、中国国内における仏教徒の人口は1億人と推定されているが、実際に研究者等を含めるならば約4億人に上るであろう。またその中僧侶は20万人であり、出家者の証明書発行は、中国仏教協会が行っている。当協会は、総務部、教務部、国際部、研究部の4部門から組織されており、海外大学、研究機関との窓口は国際部が担当している。

日本との学術交流は、様々な宗派、大学、研究機関と行っている。現在は北法相宗の清水寺が窓口となっているが、日中韓仏教友好交流会議を1995年の第一回会議から現在も続けている。また禅宗の臨済宗と黄檗宗とで組織され、現在臨済宗相国寺管長が会長を務めている日中臨黄友好協会とは1982以来交流を深めている。さらに浄土真宗東本願寺とも現在交流を深めているところである。 日本の大学間では、佛教大学を中心として1977年に設立された日中友好浄土宗協会と、1年おきにシンポジウムを開催している。また、臨済宗の花園大学に設置されている禅仏教協会とも交流を深めている。残念なことに、西本願寺や龍谷大学とは未だ親密な交流がないのが現状である。

以上の説明を聞いた後、武田先生は次のように質問された。

中国の総本山ともいえる中国仏教協会では、学術的側面と信仰的側面はどのように位置づけているのか。またその二つは中国仏教においてどのように関係しているのか。また、国家と宗教、並びに中国仏教協会との関係はどのようになっているのか。さらに、伝道において当仏教協会はどのように機能しているかを教えていただきたい。

張副秘書長は、武田先生の質問に対して次のように返答された。

中国仏教は、日本のような宗派仏教ではない。中国仏教の総本山として中国仏教協会があり、その下に地方仏教協会が組織され、その下に各地方寺院が存在している。中国は少数民族が集まった多民族国家であるから、中国全土に拡がった仏教徒をまとめ上げる中枢機関が必要である。そこでは、「ある共通の目的に向って」という考えが重要なのである。日本は単一民族国家であるから、中国とは異なった組織形態をもっているのであろう。日本仏教と中国仏教との相違は、異なった民族性、また歴史性にあると思われる。

現在中国において受戒したいと申し出る者は3万人以上いる。しかし、出家証書を発行する当協会では、年間最大600人までしか認めていない。受戒する際の費用に関して国は一切出さず、すべて所属する寺院の負担となっている。

また中国にある寺院は、当協会が管轄する実務寺院と、政府が管轄している観光寺院との二つが存在している。当協会は政府に対して、観光寺院を実務寺院に戻し当協会に所属させるよう要望しているがなかなか返還してもらえないのが現状である。

武田先生は、続けて中国仏教とチベット仏教との関係を尋ねられた。

張副秘書長は、これから話すことは個人的意見ですがと前置きした後に、次のように話された。

ダライ・ラマ14世が仏教者であるならば中国政府と対話をしなければならない。仏教者として大事な対話ということが行われていない。ご存知のように中国はチベットに鉄道を開通させた。チベットの人々の暮らしは良くなったと思う。これらのことに関して、ダライ・ラマ14世は環境破壊だと訴えている。しかし、なぜ14世は、鉄道が開通する前に環境保全案を提出しなかったのか。中国が抱えているチベットも問題は、日本の北方領土の問題と同じであるといえる。まず国民として「国を愛する」ということが最重要である。しかし、本来国を愛さなければならない14世が国外へと脱出したことは、チベットの民を捨てたと考えられるのではないだろうか。僧侶であるならば、まず国を愛さなければならなかったであろう。

長副秘書長は続けて、次のように話された。

現在私が危惧しているところは、2008年北京オリンピックに向けて中国は、幸不幸は別として急速に現代化・近代化の道を歩んでいる。そこには様々な問題が露出してきている。一番の問題は環境問題である。昔日本でおこった水俣病のような問題が現在表に出てきている。貧富の差が拡大しつつある。しかしこのことに関しては、中国政府が、例えば農家の税金を一切排除したり、種代を政府が負担するというような対策を講じている。現在の中国は、近代化が急速に進むと同時に、心の幸福指数は低下しているといわなければならない。その中にあって、我々仏教者は何をすべきか。それは慈善事業である。両親が共働きの家庭には援助出資をし、災害があれば当協会が各地方仏教協会へ指示を出し、義援金を集めたりしている。その様な活動がこれからの仏教者には必要なのではないであろうか。

張先生はさらに続けて、今後中国仏教協会と龍谷大学が交流することに関して提案をしてくださった。

もし、龍谷大学と中国仏教協会が交流を今後行っていくならば、まず最初は少人数による学術交流会という形でスタートさせてはどうか。その中で、今後本格的に提携して学術交流を深めていく接点を見出していきたいと思う。武田先生が龍谷大学仏教文化研究所所長の任期が満了した後も、当研究所と学術交流が継続されるような具体案を考えていかなければならない。中国には、様々な分野の仏教学者がおり、当協会が声をかければ直ぐに集めることができる。武田先生の方で、何かソフトな発想で一つのテーマを出していただければ、いつでも学術交流を行う準備がある。しかし、ただ交流をするというだけでは時間の無駄になるので、交流するからには歴史に残る形で行いたい。例えば、発表者の研究論文を中国の一流雑誌に掲載するとか、交流会としての雑誌を作成するとかである。まずは、我々が日本へと赴くよりも、先生方が3、4名を連れて中国で学術交流を開催するほうが良いと考えている。それは、私達のような役職に就くと、中国政府にパスポートを取り上げられ、自由に国外へと向かうことができないのである。つまり、交流を行うということは、中国国家と龍谷大学が交流を行うということになる。

張副秘書長の述べるところを受けて、武田先生は、ぜひとも今後学術交流会が継続されていくような形をとって、中国仏教協会と親交を深めたていきたいという旨を張副秘書長に伝えた。

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