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2019.07.18

実践真宗学研究科FD報告会の実施【文学部】【実践真宗学研究科】

 2019年度第1回実践真宗学研究科FD報告会を実施しました。実践真宗学研究科FD委員長 那須英勝先生から次のとおり報告いただきました。 

 2019年7月10日午前11時30分より約1時間の間、大宮学舎西黌2階大会議室において、「仏教と医療・福祉の連携を求めて」と題して、実践真宗学研究科教授の中村陽子教授を報告者として、実践真宗学研究科FD報告会が行われた。
 本FD報告会では、本研究科の修了生でもあり、またこれまで、看護教育・看護管理の専門分野の大学・大学院の教員として長年の研究・教育歴をお持ちである、中村陽子氏から「仏教者が地域包括ケアシステムの一員として果たすべき役割」を中心にご報告(話題提供)いただき、つづいて参加者全員で、本研究科のプログラムを通して、医療従事者と仏教者が、現代社会の中で連携・展開する可能性について、意見交換をおこなった。
 まず初めに、中村氏より、現在の日本社会では、団塊の世代が高齢期を迎えつつあり、さらに少産多死社会が予想されるという現状と、未婚・晩婚・少子高齢化といわれる現代社会における家族のあり方の多様化の現状の中で、団塊の世代が全て75歳を迎える「2025年問題」と呼ばれる状況が目前に迫ってきていることが説明された。またその中で、死の看取りの場も大きく変化しつつあり、病院・診療所や自宅で死を迎えるのではなく、施設死が急速に増加しているなかで、住み慣れた地域で自分らしい生活を人生の最後まで続けるために、地域包括ケアシステムの構築が急がれていることが報告された。
このような現状と課題を前提に、中村氏は、仏教がこれまで培ってきた、各地域独自の相互扶助の文化や看取りの文化を通して、現在の医療の現場に関わることができる可能性を指摘する。特に現在の医療が「終末期ケア・緩和ケア」という死の看取りだけではなく、そこに至るプロセスを含めた高齢者のEOLケア(エンドオブライフケア)として考える方向に進んでいるなかで、すでに地域社会に根付いた活動をしている仏教者が、EOLケアに参加することを通して、地域包括ケアシステムの一員として果たすべき役割があるのではないだろうかと考える。
 本報告のまとめとして、現代社会では、老いや病を抱えながら地域で生活し続ける暮らし方、家族との関係や生や死に関する価値観、社会規範、文化とも関係した、新たな医療・介護提供のあり方の創造の必要性が求められているが、その中で、仏教者は、寺院・仏教の行事・儀礼などによって、地域の人々の人生の物語の意味に関わってきた実績があり、仏教者は、地域社会に信頼、相互扶助的な社会関係を取り戻すネットワーク作りという役割を担える可能性を持っているという考えが示された。また変化しつつある現代の医療の現場おいて発生しつつある看護・介護の様々な問題と向き合うためにも、仏教者と医師・看護師など医療に従事する専門職との連携が必要となるのではないかと指摘された。

 以上の中村氏のご報告を受け、参加者全員で積極的な意見交換が行われ、最後に鍋島直樹研究科長より、本日の報告を踏まえ、看護教育の分野と連携したな教育プログラムの新たな展開について、さらに具体的な検討を始めたいという方針が示され、報告会を終了した。


実践真宗学研究科 中村陽子教授