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水処理薬品を循環再利用できる排水処理技術の開発に初めて成功 従来技術よりも処理能力が約10倍向上

2013年2月5日

クロリンエンジニアズ株式会社(本社:東京都中央区、社長:片山眞二)と龍谷大学(理工学部環境ソリューション工学科・岸本直之教授のグループ)は、共同で、水処理薬品 1)による汚泥が発生しない、工業用排水処理能力を飛躍的に高めた、排水処理技術の開発に初めて成功しました。
現在、日本の産業において、自動車産業、印刷業、金属加工業等さまざまな業種が工業廃水を排出しており、これらの産業だけでもその排水量は数百万t規模にのぼると考えられています。また、水環境にかかわる、「排水処理」や「水の浄化」技術の開発、事業化は、昨今大きな関心が持たれています。昨年、韓国大手家電メーカー等もそれらの事業への参入を発表するなど、国内だけではなく海外でも新規の技術開発・事業化の分野として注目されています。
工業排水に含まれる環境に有害な有機化合物 2)の処理におきまして、従来の技術では処理用の薬品により汚泥が発生し、その汚泥の廃棄処理が必要でした。本技術においても同様に薬品を使用しますが、薬品を循環して再利用することができるため汚泥の発生は無く、汚泥処理が不要になりました。このような、水処理薬品の再利用が可能な有害有機化合物の分解処理技術は初めてです。
さらに、一般に排水処理技術として用いられることの多い「オゾン酸化処理技術 3)」よりも、本技術が処理能力で10倍程度、エネルギー効率 4)で1.5倍程度優れているという実験結果も得られています。
既に実用装置の設計・試作も完了し、分解処理が極めて難しい有機化合物を含む排水も処理することができる装置として応用展開が期待されます。

※1 「フェントン法」と言わる方法で排水処理薬品として鉄粉が使用される鉄が主成分の汚泥が発生するの
   が難点
※2 ダイオキシンに代表される有害な難分解性の汚染物質
※3 オゾンの強い酸化力を利用して分解が難しい有機化合物を分解する方法
※4 一定の電力あたり何グラムの対象有機化合物が分解処理できるかを示す指標

1.利用分野

現在のいろいろな産業において発生する排水には、分解処理が難しい有機化合物が溶け込んでいます。代表的な物質として、「界面活性剤(洗剤や表面処理剤)」、「防腐剤」、「エチレングリコール(不凍液)」等があり、幅広い業種での様々な製品に使用されています。
これらの物質は、微生物による分解も難しいため、CODやBOD 5)といわれる排水基準が決められて規制を受けています。
本技術では、排水中のこれらの難分解性物質を分解処理することができます。
※5 排水中に存在する有機物の量を示す指標

本技術の利用分野とその市場は多岐に渡りますが、①自動車産業、②印刷業、③金属加工業などには大きく展開可能です。
自動車産業(水性塗料の処理・クーラント廃水処理・炭化水素系廃液処理)
自動車業界で使用される塗料は、現在VOC 6)の低減の必要性から水性塗料に移行が進められています。しかし水性塗料の問題点として、塗装機械(吹付ガン・刷毛・塗装ブース内・塗装ブース循環水など)を洗浄する際に水(油性塗料は溶剤)を使用するため大量の廃水(洗浄排水)が発生します。水性塗料は水に溶けるため容易に水と分離できないために、処理が難しいという問題があります。水性塗料は年間41万tが生産され(平成20年日本塗料工業会)、その使用に伴う廃水(洗浄排水)は約300万tと考えられています。

印刷業
環境問題対応として、VOCが少なく環境に優れている水性インキが徐々に普及してきています。今後、水性インキに切り替わることで、排水(洗浄水)が大量に発生し、上記水性塗料と同様に排水処理は生産者にとって大きな負荷となって行くことが考えられます。

金属加工業
金属加工業では金属高速加工技術の発展や作業者への健康配慮(塩素フリー)の点より、使用される加工油が鉱物油から水溶性油へと移行しています。水溶性切削液はほとんどが水ですが再生利用は不可能であるため大半が産業廃棄物になります。その処理は塗料と同様に問題となります。
水溶性切削液は年間13万KLが生産され(㈱潤滑通信社)その使用に伴う廃水は約90万KLと考えられています。
海外を見た場合、タイ・インドネシア・中国等では、排水規制(COD・BOD)が一段と厳しくなってきており、特にタイでは、日系企業が工業団地全体等で水処理に関する研究会を開くなど活動を行っています。本技術はこのような海外における環境問題に対しても貢献できると考えています。

※6 VOC:揮発性有機化合物(トルエン、キシレン等)

2.技術の内容

(1) 反応器と原理について

開発した排水処理技術は、図1に示すような電解フローセルと呼ばれる反応器内に、排水を2種類の電極(陽極と陰極)に接触させて電解反応を行いながら流通することで行われます。この電解フローセルの数を増減することより排水処理能力を容易に変更することが可能です。実物の写真を図2、図3として載せています。
電解フローセルの中では、排水中の塩化物イオン(Cl-)が陽極で電子を失い、酸化され、塩素ガス(Cl2)を経て次亜塩素酸(HOCl)を生成しますが、瞬時に液中のFe2+と反応し、水酸基ラジカル(OH・)を生成します。水酸基ラジカルは非常に強い酸化剤であり、ダイオキシン等の難分解性汚染物と速やかに反応し、これらを完全分解します。水酸基ラジカルを生成したFe2+は酸化されてFe3+となりますが、これは陰極において電解還元され電子を受け取ることによりFe2+に再生されます。
処理に必要な塩化物イオンは排水中に元々含まれている塩化物イオンを活用することができますので添加の必要はありません。一方、鉄イオンは添加する必要がありますが、電解処理中は前述したように電解還元による再生により繰返し利用することができ、排水処理後には鉄汚泥として沈殿分離した後、酸で溶解させて再び再利用することが可能です。排水処理装置の処理原理を図4に示しました。

(2)処理効果の検証

開発した排水処理技術の処理効果を実証するため、図5に示すような小型の電解フローセル(有効電極面積31cm2,有効容積31mL)実験装置を用いて、近年、工業的に処理の需要が高まっている難分解性の有機化合物の一つである「1,4-ジオキサン」が含有されている排水の処理を行いました。比較として鉄を添加せずに行った「電解単独処理」と排水処理として広く用いられている「オゾン酸化処理」、さらに「オゾン紫外線処理」も実施しました。
その結果、「1,4-ジオキサン」の処理能力は、鉄を添加していない「電解単独処理」の約120倍、「オゾン酸化処理」の約9倍、「オゾン紫外線処理」の約1.4倍に達し、実用されている促進酸化処理法である「オゾン紫外線処理」と同等以上の処理能力を示しました。また、エネルギー効率は112g/kWhとなりました。これは「電解単独処理」の約300倍に相当し、「オゾン紫外線処理」よりも約11倍も効率が高く、従来法の中で最も効率が良い「オゾン酸化処理」と比較しても約1.5倍の効率向上を達成しました。このように本処理技術は、実用促進酸化処理法である「オゾン紫外線処理」と同等以上の処理性能を、10倍以上のエネルギー効率で実現できる画期的な促進酸化処理技術であるということができます。その実証実験結果を図6に示しました。

処理条件
本処理法:電解電流0.34A,電圧4.0V,Fe濃度2.0mM,処理水量1.0L
電解単独処理:電解電流1.44A,電圧4.1V,処理水量1.7L
オゾン単独処理:オゾン消費率0.41mg-O3/L・分,処理水量1.7L
オゾン紫外線処理:オゾン消費率1.74mg-L・分,UV出力20W,処理水量1.9L

エネルギーー効率計算条件
力率:0.9
オゾン発生効率:10kWh/kg-O3


図6 1,4-ジオキサン除去能力およびエネルギー効率の比較
グラフ中の下線部はエネルギー効率(1kWhの電力で除去できる1,4-ジオキサンの量)を表す。
1,4-ジオキサン処理能力は比較のため排水1Lを処理したときの値に換算して表示している。

(3)鉄汚泥の再利用

鉄汚泥の再利用について、鉄汚泥回収再利用プロセスを構築し、鉄の再利用可能性を検討しました。
その結果、処理開始前、鉄を薬剤として投入した1回目の処理前後、回収した鉄汚泥を用いた2回目の処理前後のいずれにおいても鉄濃度に変化は見られず、「1,4-ジオキサン」を除去する能力にも変化は認められませんでした。従って、鉄汚泥を100%回収再利用することが可能であることが示されました。
鉄汚泥回収再利用プロセスの概要を図7に、鉄汚泥再利用実験結果を図8に示しました。
このように、本排水処理技術は、従来の排水処理装置に比較して処理能力は同等以上でエネルギー効率が高く、pH調整用の酸・アルカリ以外の薬剤が不要という特徴を有する省資源・省エネルギー型排水処理技術であると言えます。また、オゾン発生器や紫外線照射装置等の特殊設備を必要とせず、電力とpH調整用の酸・アルカリの供給のみで運転可能という特徴から、自動運転することも容易です。よって、大規模事業所のみならず、小規模事業所の排水処理においても幅広く活用頂けるものと期待されます。
応用のイメージの一つを図9に示しました。

クロリンエンジニアズ株式会社と龍谷大学は、電解フローセルの高効率化や自動制御技術の高度化を図り、更なる高性能化・省エネルギー化を目指し、共同研究を深めてゆく所存です。
問い合わせ先 : クロリンエンジニアズ株式会社 島崎 Tel 0863-71-3625
           龍谷大学Ryukoku Extension Center 甲斐・筒井 Tel 077-544-7279

プレスリリース本文(ファイル形式pdf サイズ836kb)

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