選手を育てること
それしか自分の道はないと思いました
勤学為福(努力することが幸福をもたらす)-。北京五輪卓球日本代表女子チーム専属トレーナーに抜擢された、王さんが大切にしているというこの言葉は、すがすがしいまでに心に響いた。素直にこぼれてきた、嘘偽りのない言葉だったからだ。同時に、彼自身の歩みを語るにふさわしい一言でもあったからだろう。
中国遼寧省の錦州で生まれた王さん。卓球王国の中国らしく6歳の頃から卓球を始め、小学校では卓球部に入部。遊びながら卓球を覚えた。
王さんにとって卓球が「遊び」から「試合」へと変わったのが、中学生の頃だ。遼寧省で3位、全国ジュニアではベスト16に入る程の実力で頭角を現し、国立の遼寧省体育運動技術学院の卓球チームに選抜された。学院では勉学の傍ら、猛練習の日々が続いた。遼寧省のベスト20がチームメイトという、実力が拮抗する選手との熾烈な争いに、次第に力の限界を感じ始めるようになる。それが、卓球の目標を「試合」から「育成」へと変えるきっかけとなった。
「選手を育てることしか、自分の道はないと心を決めました。日本の選手育成には環境が整っていない点があったので、日本に行きたいと思うようになりました」
王さんは、龍谷大学卓球部の監督で同郷の王会元監督に相談を持ちかけ、ミキハウスでのコーチの職を得て、日本への渡航が叶った。コーチをしながら日本語学校に通い、日本語を猛勉強。2年間の勉強の末、龍谷大学短期大学部への入学を果たし、2008年からは国際文化学部に編入学した。
「日本人の友達がたくさんできて、学校生活は楽しいです。授業は民俗学に興味があり、特に日本の祭りが好きです。先生に誘われて、京都や滋賀県の祭りをよく見に行きます」
|