同族間の結びつきが強い内モンゴルにおいて外国人研究者が現地人の信頼を得るのは並大抵のことではない。長命さんをはじめ各研究メンバーはこれまで定期的に内モンゴルへと足を運び実態調査を重ねてきた。また、現地の内蒙古財経学院との共同研究である強みを活かし、フィールドワークやシンポジウムをおこなうことで内モンゴルに暮らす人々の生の声を集める機会としている。
2009年に研究会として発足したこのプロジェクトは、2010年、2011年の実態調査を経て研究を終える。研究期間の後半では、各分野の調査・分析結果をまとめた叢書を刊行して、現地での研究成果報告などもおこなう予定だ。
「今回の研究プロジェクトは2年間で終了しますが、各メンバーの研究や調査は今後も個別に続けていく予定です。研究タイトルに『持続的』とある以上は、河村先生も指摘しているように私達の研究活動も継続的なものにしなくてはいけませんから」
調査研究における信条は?との質問に、「現場主義です」と答える長命さん。書籍や資料から得た情報ではなく、自分自身で見聞きしたことを大切にして今後も研究活動を継続したいと話す。
「今、内モンゴルで起きている様々な問題は、これから経済成長を遂げるほかの発展途上国にも起きうることばかりです。今後、世界中のどの地域社会においても有効な解決策への指針を見つけ出すことが、このプロジェクトの大きな課題です。そのためにはなるべく多く現地を歩き、数年、数十年をかけて答えを探し続けることが大切だと思うのです」
※(注1)
退耕還林 農地での耕作を禁止し、植林をおこなうことで森林面積を増やす政策。牧草地の場合は「退耕還草」。
※(注2)
生態移民 生態系保護のため、住民が都市近郊など比較的環境条件のよい地域へ移住すること。そこでは主に酪農生産による貧困削減が推奨されている。 |