卒業式 式辞
本日、卒業式を迎えられた皆さん、おめでとうございます。
ここに、多くのご来賓のご臨席のもとに2008年度卒業式・学位記授与式・修了式を挙行するにあたりまして、卒業生の皆さん並びにご列席のご家族やご関係の皆さんに対し、心よりお喜びを申し上げます。 今年度、龍谷大学の誇りを胸に、晴れて巣立っていかれますのは、学部・大学院・専攻科・留学生別科の全体で合計4,502人という数になります。
卒業していかれる皆さんも、そのご家族の皆さんも、今、何かを成し終えたという或る種の達成感や充足感をお感じのことと思いますが、勿論卒業は最終到達点ではなく、同時に新しい始まりであります。皆さんのお気持ちは既に卒業後のこれからの生活に向けられていることでしょう。この新たな門出を機縁として、新しい時代の担い手として、様々な困難が待ち受けている世界へ向かって次の力強い一歩を踏み出していただきたいと、心から願っております。
そして今、皆さんがそこへ向かって踏み出そうとしておられる世界では、昨年秋以降の経済情勢の激変によって深刻な事態が進行しています。日本経済も大きな影響を受けており、本学においても企業から採用内定取り消しを通告されたり内定辞退を勧告されたりする学生からの相談や、就学意思があるにも拘らず、家計が急変し学業の継続が困難となった学生からの相談が寄せられています。このような学生への支援策を講じ、安心して勉学や就職活動に取り組むことのできる環境を提供するために、本学でも時限的な緊急特別措置の実施を決定しております。
現代社会はメリトクラシー社会です。「メリット」つまり「能力・業績」のある者が支配し統治する社会です。「アリストクラシー」つまり門地・家柄といった特権による支配や、「プルートクラシー」つまり富や財産という特権による支配とは異なり、「デモクラシー」は人民による支配でありますが、実際は「メリット」のある者が社会の指導的地位について支配・統治しています。
このようにデモクラシー社会では知識と能力が重要な意味をもっていますから、知識を与え能力を開発する学校はメリットのラベリングの機関として、メリトクラシー実現の中心的な役割をはたすこととなります。勿論、高く評価される有用な知識や能力は社会的な要請との関係で決定され、人が所属する組織や集団によって異なっていますから、学校では先ず社会人として共有すべき知識と教養、汎用性のある技能と態度が教育され、その上に、将来その人が所属することになる組織や集団によって異なる固有の専門知識・技能の教育が行われます。
皆さんはそのような教育の中で、自分をどのような人間へと育てるのかという主体的選択を行ってこられたことと思います。
そしてこの「メリット」を基準にして人の選別・養成・配置を行うという人事管理の原則が能力主義であり、この原則によって人には自分の能力によって指導的地位に到達できるチャンスが与えられることとなり、メリトクラシーは一方で確かに社会の進歩を促したと言えます。今日の複雑化・高度化した社会において、効率的運営とそのための適材適所の人員配置は不可欠であるからです。しかし、他方では新たにメリットにもとづく不平等と格差がもたらされ、それが当然のこととして容認されるという傾向が生み出されました。
そこでは人は「何かをなしうる力」即ち能力をもつことで評価され認められ、ただここに「いる」というだけではその存在が認められにくい社会です。このような社会では、人は自分がこのままでここにいていいのか、いつも確信をもつことができず落ち着くことができません。積極的に貢献できるようになろうとすれば、何らかの形で自分の有能さを証明しなければならず、能力主義に与しなければならないのです。
その為に、メリトクラシーを根本的に見直そうとする主張や議論が生まれていますが、本学が掲げている「共生(ともいき)」の理念はここで重要な意味をもちうると思います。共生はすべてのものが「同じでなくてはならない」という、同一化・単一化・画一化とは反対に、「違うものの共生」であるというところに、即ち他と多を認めつつ、違うけれども等しく尊いというところに、意味があるからであります。
皆さんには、根本的にすべてのものが他のすべてのものと繋がり合い、支え合っているという、本学において培われた共生の精神を心にとどめながら、身に得てこられた資質能力を生かして、自信と謙虚さをもって自らの役割をはたしていただきたいと思います。
現代の世界では、社会のあらゆる分野において急速な変化が進み、知識の発展は旧来のパラダイムの転換を伴い、解決されるべき課題はますます複雑化してきています。他方では、グローバル化の進行とともに自他双方の文化を理解して国や民族をこえて広く対話・交流しうる人物が求められてます。
そしてこのような状況の中で、柔軟な創造力にとむ人物がますます求められるようになっているのです。龍谷大学は創立以来、知的創造を積み重ね、そのような有為の人物を育て社会へ送りつづけてきました。そして今年、創立370周年を迎えました。この一年間、本学は様々な記念事業を展開致します。皆さんにも是非ご参加いただきたいと思っています。
最後に、皆さんには今後とも、向上心をもって研鑽を重ね、力強く生きていただきたいと思いますが、同時に、浄土真宗の精神を建学の精神とする大学で学ばれたことをご縁として、確かな拠り所と柔軟な心をもって歩んでいっていただきたいと願っております。
今後の皆さんのご活躍を大いに期待して、式辞といたします。
本日は誠におめでとうございます。
2009(平成21)年3月12日
龍谷大学・龍谷大学短期大学部
学長 若原 道昭
![]()