卒業式 祝辞

卒業生のみなさん、本日はご卒業、おめでとうございます。  今、みなさんの胸中には、在学中の数年間にわたる思い出が去来しておられることだろうと拝察いたします。これまでには、楽しかったことばかりでなく、苦しかったこともたくさんあったことでしょう。それらを乗り越え、本日、卒業を迎えられましたこと、心よりお祝い申しあげます。

今日までのさまざまな思い出と新生活への希望を胸に、明日からはそれぞれの道へと旅立ちます。これから新たな道へ歩んでいけるのは、これまでのみなさんの努力によることはもちろんですが、保護者の方々をはじめ、諸先生方、学友たちといった多くの方々の温かい愛情と限りないお力添え、そして何より、みなさんが本学において浄土真宗のみ教えに出遇われたことをどうか忘れないでいただきたいと思います。  近年、私たちを取り巻く社会は物にあふれ、便利で豊かな時代になりました。一方、物の豊かさに比例するかのように、人間の欲望は増大し、他の人びとを顧慮せぬ自己中心的な考え方によって、いのちの尊厳を損なう事件が横行しています。

その原因の一つには、時代につれて人間関係が希薄となり、「人とのつながり」を軽視する風潮が蔓延してきたことがあげられるのではないでしょうか。それは、「人を信じること」を教えきれない今日の社会状況が人間不信を助長し、コミュニケーション力をも阻害してしまい、他の人との関係をうまく築くことのできないゆがんだ社会を作りあげた結果とも言えます。人と人とがふれあい、信頼しあえる関係をつくりあげることができたとき、一人ひとりがいのちの尊さにめざめ、互いを傷つけあう社会はなくなることでしょう。

このような時代を生きる私たちにとっては、何が正しく、何がそうでないのかを見極めることは大変難しく、時には自己を見失いかけることもあるでしょう。そんな時に思い出していただきたいのは、人はあらゆる困難を克服してこそ成長し、生きる喜びを感じるということです。そして、人生の目標に向かって一歩一歩力強く生きていく過程にこそ、私たちの真に生きる意味があるのです。

みなさんも本学で、阿弥陀さまの智慧と慈悲のはたらきに照らされながら、互いの苦しみや悲しみに共感し、ともに悩み、支え合っていくことの大切さを学ばれたことでありましょう。そして、自分一人の力だけで生きているのではなく、さまざまなご縁、たくさんのいのちのつながりの中で、共に生かされて生きている感謝の気持ちを心に刻まれたことと思います。

どうか今後も、「人とのつながり」を喜び、互いに支え合い、かがやき合いながら真の人生を歩むことのできる社会の実現に貢献されますことを念願し、お祝いの言葉といたします。

2009(平成21)年3月12日
学校法人龍谷大学理事長
浄土真宗本願寺派総長 不二川 公勝