昨年、全国の中・高・大学生などに呼びかけ募集した「青春俳句大賞」。寄せられた6万8千句の力作・秀作の中から受賞作品をまとめ、選考委員の評および座談会の様子を掲載した。
2004年4月刊/エピック/95頁/950円





 わが国の不当利得法において、かつては「衡平説」が判例・通説とされてきたが、最近では「類型論」も有力となってきた。本書は、その「類型論」を継承し、発展させるという立場から書かれたものである。その際「類型論」は、財貨運動法(契約法体系)と財貨帰属法(所有権法体系)とを中心に財産法全体を貫く清算手段として不当利得法をとらえる。したがって、その射程範囲は意外と広い(たとえば「無断駐車」の責任問題からヤミ金業者の責任問題、果ては不倫な男女関係に基づく給付の清算問題などに、その考察は及ぶ)。こうして本書は、財貨運動法と財貨帰属法との2大基本類型に関する歴史的・比較法的・解釈学的考察の所産となっている。とりわけドイツにおける学説・判例の展開に留意した。

2004年1月刊/日本評論社/526頁/9450円




 1950〜60年代にかけて世界中を席巻した映画「第三の男」の原作と映画脚本を書いたイギリス作家、グレアム・グリーンの作家としての内面を追求し、かつその大衆的な特性について論及した。一般にカトリック作家とされるグリーンは、強烈な政治意識を背骨に秘めた政治・社会派の作家でもあった。カトリック思想とスパイ・政治的陰謀にかかわって現実政治の実相を探ろうとする行動派作家の持つ二面性こそ世界中の小説ファンの関心の的であったと断言できる。彼の作品世界を紹介することを筆者に決断させた最大の要因は、その世界が有する通俗性、大衆性を超越して神の世界に直結して真摯な倫理的姿勢を常に保ち続けたグリーンの文学的生真面目さにあったのではないかと思っている。

2004年2月刊/音羽書房鶴見書店/298頁/3360円




 以下のことを主張したい。戦後日本経済の変遷およびバブル崩壊後の混乱は、非線形としてのロジスティック曲線(S字カーブ)で説明できる。一つのS字カーブは、最後に必ずカオス(混沌・無秩序)状況に突入する。平成バブルとその崩壊後の平成不況は、まさにカオスの渦中にあることを示しており、現在は次のS字曲線を探しあぐねている状況である。自然科学の諸現象と同じく経済現象も非線形動学が本質である。従って、線形動学が中心であった従来の経済理論を、21世紀の経済学は非線形動学で大きく補強すべきである。第2部では、数学に特化したロジスティック曲線やカオス生成の原理、およびH・ポアンカレを中心にした非線形微分方程式系の持ついくつかの特色ある動学解のふるまいに関する分析が、数式と図との整合性をきちんととって議論されている。

2004年2月刊/306頁/晃洋書房/3990円




 イノベーションによって技術は変わるわけであるが、新技術はなんらかの形で既存の技術の延長上にある。いわゆる技術の経路依存性である。技術にも経路依存性があるということは、技術の伝統が重要であることを意味している。一方、イノベーションには、革新を進めていくための諸問題を解決していくための能力が必要である。技術革新について、企業や社会が備えている、問題解決のための処理手順を「技術革新能力」と呼ぶ。本書では、風力発電機の技術開発の国際比較を通じ、それぞれの国が持っている「技術革新能力」の違いが、イノベーションにどのように影響したのかを考えた。

2004年2月刊/236頁/新評論/2625円




 これまでの明治憲法制定史に関する研究を総括し、政府ー民衆の対抗関係の中で憲法制定過程を概観した後、制定過程では抑圧された民衆の中の動き、宗教団体を含む民間団体の憲法構想を浄土真宗本願寺派寺法制定問題とそれに関係する小野梓の思想等を材料に検討する。その前提として、近代日本の政教関係の形成(一般には国家神道体制といわれる)を従来の観点とは異なった方法で整理している。一方、憲法起草者伊藤博文らに講義をしたシュタインについて、その政教関係論、日本国制史観、さらには日本研究者としての側面等を検討しながら、明治憲法制定に対する影響力を分析し、彼の果たした役割、影響力を持ち得た理由等を明らかにしている。

2004年2月刊/279頁/晃洋書房/3990円



 

 この本を通して、私がインド巡礼で感じたような大らかさ、神聖さ、心の豊かさ、癒しの一端でも読者に届けば幸いです。ニューヨークの仏教活動(5章)もぜひ知っていただきたいと思います。とにかく気軽にお楽しみください。中垣顕實(敏和)(1983年文学部史学科仏教史学専攻卒業・住職・ニューヨーク)/現代書館/1890円




 中国は、改革開放政策をとって以降、経済が著しい発展を遂げてきた。しかし、高度経済成長を実現させたと同時に、中国の地域格差を拡大させたのではないか、さらに中国の社会的・政治的不安定を引き起こすのではないか、という指摘が国内外で聞こえ始めた。そこで、本書は豊富な統計データを用いて、90年代半ば頃の中国の地域格差がどの程度のものであるかを、総経済力・農業・工業・対外開放度の4側面から明らかにしながら、政策が地域経済に与えた影響を数量的に検証した。中国経済の数量分析は、まだ始まったばかりである。本書を1つの機会に研究のさらなる発展を願っている。

2004年2月刊/270頁/昭和堂/4935円




 原爆による本堂の全壊や全焼、住職や門徒の死から、広島の寺院はいかによみがえり、戦後復興にどのような役割を果たしたのか。本書は、広島の1真宗寺院の被爆体験を通して、寺院に対する原爆の影響、戦後社会における寺院の役割、原爆犠牲者の追悼の在り方などについて考察しようとしたものである。

2004年2月刊/220頁/法藏館/2415円







 本書の目的は、地域経済の開発を、技術、人材、行政などのさまざまな側面から分析し、地域企業の成長がいかにもたらされ、それが地域経済にどのような効果をもたらすのかを検討しようというものである。本書の全体は大きく3部に分かれている。第1部では、地域における公共政策と産地との関連について論じている。第2部は、目を海外に転じて、アメリカ、ヨーロッパ、アジアにおける地域振興政策について論じている。そして第3部は、丹後地域に焦点を絞って分析している。特に京都に住んでいる方にもあまり知られていない丹後の機械・金属産業の発展過程、現状について詳しく分析した点が、本書の特徴である。

2004年3月刊/286頁/日本評論社/4725円






 本書は、アジア地域を専門領域とする学内、学外の研究者10人が、アジアの家族変貌を共通テーマとして執筆している。執筆者は、日本、韓国、タイ、インドネシア、中国をフィールドとし、それぞれ家族社会学、比較社会学、文化人類学、宗教社会学、法学、女性学の視座から現代家族の諸現象に迫っている。対象とする諸地域は、産業化、都市化の開始時期や変化の速度は異なっているが、それぞれが持つ独自の歴史や伝統が、人びとの日々の家族生活や行動、意識に映し出され、現代社会の家族を個性的に出現させている。本書のねらいは、こうした家族の諸現象を通して、アジアの多様な家族の現在を理解することにある。

2004年3月刊/296頁/昭和堂/3150円



『中野本・宣長本刊記集成』
日下幸男(文学部教授)編


 龍谷大学仏教文化研究所個人研究報告書(2003年度)。江戸時代の版本の刊記集成を計画し、今回は京都書肆十哲の1つ中野本と、宣長本の刊記を集成。

2004年2月刊/323頁/龍谷大学文学部日下研究室/非売品

『教育の臨床エスノメソドロジー研究―保健室の構造・機能・意味―』
秋葉昌樹(文学部助教授)著


 学校の保健室で行なわれているカウンセリング的活動のメカニズムを、教育社会学の観点から明らかにした研究書。教育臨床研究の新しい地平を探った。

2004年2月刊/240頁/東洋館出版社/4935円

『メディアとことば 1 
―「マス」メディアのディスコース―』

村田和代(法学部助教授)共著

 「メディア」と「ことば」をテーマに、それが相互にどのように絡み合いながら現代社会のコミュニケーションを成立させているかを見据えた論文集。

2004年3月刊/263頁/ひつじ書房/2520円

『アジャセ王の救い 王舎城悲劇の深層』
鍋島直樹(法学部教授)著


 アジャセ王の物語には、虐待・尊属殺人・教唆・非行・エゴイズム・罪責感・占いなどの、人間の現実が描かれている。傷ついた人間が生きる道を探った書である。

2004年5月刊/302頁/方丈堂出版/1700円

『ソネット選集 ―サウジーからスウィンバーンまで―』
桂文子(法学部教授)共著

 ソネットは14行からなる定型詩。本書の構成は@詩人小伝A対訳B注釈からなる。一般読者、初心者の学習用、また研究者の資料として活用できる。

2004年4月刊/244頁/英宝社/2730円

『「後漢書」第七冊 列伝五(巻四十四〜巻五十三)』
吉川忠夫(文学部教授)訓注

 「後漢書」のすべてについて訓読を行ない、注釈を施し、また適宜現代語訳を付す。全体で10冊計画の第7冊。

2004年5月刊/560頁/岩波書店/1万3650円

『岩波・応用倫理学講義 第2巻「環境」』
丸山徳次(文学部教授)編著


 全7巻シリーズの第2巻「環境」。講義の7日間で水俣病の捉え直しから日本の環境倫理学を再起動し、セミナーでは豊島や所沢の現場から考える。

2004年5月刊/312頁/岩波書店/3360円

『新版世界各国史7「南アジア史」』
長崎暢子(国際文化学部教授)共著


 定評ある各国史シリーズの1冊。従来「山川のインド史」として知られたが、「南アジア史」として改定。古代・中世を含むが、長崎教授は近代・現代を担当。

2004年3月刊/615頁/山川出版社/3885円

『ユースプログレッシブ英和辞典』
松岡信哉(文学部講師)共著

 最新の英語コーパスからのデータを利用して、古い語法を排除し、今の英語を正確に映すという方針で編まれた学習英和辞典。

2004年4月刊/2099頁/小学館/3150円

CAREER DESIGN NOTET 
―ENCOURAGE キャリアマインド向上に向けて―
東田晋三(社会学部教授)著


 いずれ社会に出て仕事を持つことを前提とした導入教育の1つとして制作したもので、基礎ゼミの教材に使えるとの評価もある。

2004年4月刊/64頁/ベネッセコーポレーション/2500円

『近代文学の風景』
西垣勤(文学部教授)著


 時代と文学のきしみを、作家たちがどう受けとめ、どう描いたか、日本近代文学の作家たちの精神史を描く、著者の第4論文集。

2004年5月刊/370頁/績文堂出版/2940円

『ボランティア・NPO用語事典』
筒井のり子(社会学部教授)編


 ボランティア活動、NPOの活動を包括的に理解するための主要コンセプト46の解説と、269の関連用語説明を掲載。

2004年4月刊/206頁/中央法規出版/2310円

『実践ジャーナリスト養成講座』
小黒純(社会学部助教授)共著


 「ジャーナリストになりたい人」「メディア企業に就職したい人」こんな読者のために書かれた日本初の画期的ジャーナリスト用教科書。

2004年2月刊/288頁/平凡社/2310円

『新現代憲法入門』
山内敏弘(法学部教授)編


 現代社会に生じている主要な憲法問題について、その歴史背景、理論状況、そして判例動向などを概説することを通して日本国憲法の今日的意義を明らかにしている。

2004年4月刊/420頁/法律文化社/3045円

『これでいいのか食料貧国ニッポン』
シンプソン・ジェイムズ(国際文化学部教授)共著


 食品の安全性が一国の問題でなくなってきている現在、消費者として何を知るべきかを国際的観点から説明している。

2004年7月刊/250頁/家の光協会/1500円

『真宗「不遇死」法話実践講座』
友久久雄(文学部教授)監修


 本書は、不遇死(まだ生きていける能力がある時の死)に際し、遺族にどのように接するかをテーマに、「生の意味」を考える実践法話実例集である。

2004年2月刊/384頁/四季社/1万8900円


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