手元に1冊のクリアファイルがある。そのファイルのトップページに差し込まれた1枚の小さな白黒の版画が目を引く。和服を着たオス・メス2匹のネズミが並んで正座をしながら両手をついて今まさに頭を下げようとしている。ネズミの横には1984年元旦、とある。実は、これは私たち夫婦が結婚して2年目の正月に発送した年賀状だ。なぜそんなに古い年賀状があるのかというと、4年前に年賀状を作成する際に、ふと思いついて過去に発送した年賀状を整理してみたことがあった。というのは、運良くというか、物を捨てることのできない性格からか、懐かしい黄色の“プリントゴッコ”の箱にこれまで送った年賀状の残部、あて先不明で戻ってきたもの、スケッチなどがたくさん残っていたのだ。整理しだすと子どもの幼稚園の時の演劇発表、家族旅行、龍谷祭へ連れてきた時のことなど1枚いちまいから懐かしい情景が生き生きとよみがえってくる。思わず手を止めて感慨にふけりながらの作業になった。残念ながら結婚して最初の正月に出したはずの挨拶状を兼ねた1983年の年賀状など数年分は見付からなかったものの、結婚後18年のうち14年分が残っていた。そのファイルに、今年の正月には19枚目が加わった。
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