トピックス 幻の仏教壁画が鮮明な画像でよみがえる!「古典籍デジタルアーカイブ研究センター」がベゼクリク壁画をデジタル復元



復元された「誓願図」の1つ「燃燈仏授記」 過去仏の足を汚さぬよう自らの髪を地面に広げる前世の釈迦の姿(右下)が描かれている。 右は復元前。壁画断片は現在、各国に分散して所蔵されており、その保存状態も異なっている。 復元された「誓願図」の1つ「燃燈仏授記」 過去仏の足を汚さぬよう自らの髪を地面に広げる前世の釈迦の姿(右下)が描かれている。 右は復元前。壁画断片は現在、各国に分散して所蔵されており、その保存状態も異なっている。

ベゼクリク石窟寺院全景「ベゼクリク」はウイグル語で「絵のあるところ」を意味する。古典籍デジタルアーカイブ研究センターは、NHK「新シルクロード」第2集『トルファン 灼熱の大画廊』の制作に全面協力し、石窟寺院にかつてあった仏教壁画を3次元CG・バーチャルリアリティー映像で復元することに成功した。
 再現したのは、トルファン郊外にあるベゼクリク石窟寺院の第15号窟(中国編号)にあった「誓願図」。「誓願図」とは、釈尊が前世において国王やキャラバン隊の頭領であった時、過去仏に成仏の誓願を発し、その仏より未来成仏の予言を得る場面を描いた図のこと。
 石窟回廊の壁面にはかつて、15枚の「誓願図」が並んでおり、一枚の図は最大のもので幅約4メートル、高さ3メートル。「誓願図」で回廊をうめつくすことは、ベゼクリク石窟にしかみられない大きな特徴である。
 20世紀初め、破壊のすすんでいたベゼクリク石窟を調査したドイツや英国などの探検隊が、価値ある壁画を保存するため、壁画断片を自国に持ち帰った。現地には存在しない美しき壁画は、それゆえ、幻の仏教壁画といわれていた。
 世界初という壁画復元に、同センターでは、情報処理が専門の岡田至弘理工学部教授と仏教文化が専門の入澤崇経営学部教授が中心となり研究。現地に残るわずかな断片と世界各地に四散した断片、そして図版資料を手がかりに、最新の画像技術を駆使して約1年がかりで完成。中央アジア仏教美術の傑作とされる「誓願図」が当時を思わせるダイナミックなスケールで現代によみがえった。


古典籍デジタルアーカイブ研究センター
2001年に文部科学省の「学術フロンティア推進事業」として採択された
プロジェクト。龍谷大学が保有する『類聚古集』(国宝)をはじめとする古典籍や、大谷探検隊が収集したシルクロード関係資料など、世界的にも貴重な歴史資料の原典を最先端の電子技術を駆使し、超高精細デジタル画像に変換し、保存・分類公開している。


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