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龍谷大学第1次アフガニスタン学術調査隊は、バーミヤーン石窟の西150kmのバンデ・アミール川沿いに、土地の人から「サレ・スム」と呼ばれる石窟(右写真)を発見した。
内部の通路で連なる石窟 サレ・スム石窟を発見したのは予定の調査日程をほぼ終了し、バーミヤーンへの帰路に着いた11月1日のことであった。ヤッカウランガの西40km、ケリガン仏寺跡の西1km、チル・ボルジ城砦跡の東10km弱、バンデ・アミール川を挟む山の北壁に穿たれていた。 サレ・スム石窟の構造は、不規則に並んだ石窟が通路によって繋がる4層7窟からなる。第1層に主窟、第2層に踊り場、第3層に通路2ヶ所に明かり窓を伴い並行して3窟、第4層に大きな1窟とその横にもう1窟がある。第1層の石窟は奥行き約16m、幅約4.6mの長方形で、かまぼこ形の天井を持ち、全7窟中で最大である。また、奥壁には幅240cm、高さ120cmの仏像を安置するための龕が設けられている。これを含め龕を設けた石窟は全7窟のうち4窟に見られる。 この石窟の何よりの特徴は、不規則に並んだ石窟が通路によって繋がっていることである。この特徴を示すものはバーミヤーン石窟にも見られ、ガズニ近郊のカラバーグ・ジャーグリー地区の石窟群、さらにアフガニスタン北西部からトルクメニスタンへ流れるムルガーブ沿いの石窟とも共通する。仮にこれらの石窟が相互に関連する仏教施設だとしたら、それらをつなぐ「道」を抜きに語ることは不可能である。今後の調査によっては、従来、考えられてこなかった新たな仏教伝播ルートを提示することにもなる。 しかしながら、アフガニスタンの砂漠世界は人を容易に近づけるものではない。かつて「文明の十字路」と呼ばれたアフガニスタンにあって、仏教は確実に根を下ろしたが、時はその姿を砂の中に埋めてしまった。覆われた砂を取り除き、その全貌を明らかにするにはかなりの時間を要するであろう。 (調査隊員・本学研究員 井上陽)
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