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オリエント悠久の歴史を生活文化の視点で
岡山市立オリエント美術館は、日本で有数の“オリエント”をテーマにした美術館である。 オリエントとは「日が昇るところ」を意味する言葉。古代のギリシャ人やローマ人は、自分たちから見て東方にあった先進文明の地を畏敬の念を込めて“オリエント”と呼んだ。その東方の地とは、人類最古の文明が開けたメソポタミア・エジプトとその周辺の地域を指し、今日では中近東と呼ばれる西アジアと北アフリカの一部にあたる。 オリエントの人々は、世界で初めて農耕・牧畜の生活に入り、高度な都市文明を築いた。やがて、オリエント文化は北アフリカ、地中海・ヨーロッパ、そしてアジアへと伝わっていく。日本とオリエントの距離は実に8000キロ以上。しかし正倉院には、オリエントに起源を持つ文物が数多く残り、オリエントとはシルクロードによって結ばれていたことが分かる。 岡山市立オリエント美術館では、ティグリス川とユーフラテス川に挟まれた平原(現在のイラク南部)から生まれたメソポタミア文明の歴史をたどりながら、なぜオリエントが高度な文明を持つに至ったのかが理解できるように、時代の順を追って、丁寧に展示・解説がされている。 さらに、この美術館が特徴的なのは美術品と呼ばれる分野より、人々が日常使ったであろう陶器や青銅器、ガラス器、織物、アクセサリーなどが豊富に展示されていることにある。それらはまさに生活の中の芸術であり、当時の人々の心豊かな暮らしの営みに驚かされる。 この美術館で感じるオリエントの国々は、とても身近で親しみやすい。
ゆったり安らげる“光”の建築 館内に入ると、ホールを中心に展示室がぐるりと囲んでいる。最初、「少し暗いかな」と感じたが、やがて天窓や壁のスリットから自然光が差し込んできた。時間ごとに、天候ごとに、光は多様な表情を見せる。 美術館を建築するにあたってのテーマは「光」。オリエントの風土をイメージしているという。光の移ろいとともに、この美術館では時がゆっくりと過ぎていくようだ。
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