龍谷 2007 No.63

青春クローズアップ 自転車を活用した持続可能な地域交通システム 近江鉄道・サイクルトレインの利用で、東近江の地域活性化に取り組む。経済学部・伊達「チーム・ガチャコン)

出席者 経済学部経済学科3年生
井上由依子いのうえゆいこ(和歌山県立橋本高校出身)
北村 庸充きたむらのぶみち(滋賀・近江兄弟社高校出身)
桐山 卓也きりやまたくや(京都府立久御山高校出身)
高山 和敏たかやまかずとし(石川県立金沢桜丘高校出身)
イベント告知用のポスター
イベント告知用のポスター イベント告知用のポスター。
沿線の各駅に掲示し参加者を募った。

井上由依子さん 北村 庸充さん 高山 和敏さん 桐山 卓也さん

井上由依子さん

北村 庸充さん
高山 和敏さん
桐山 卓也さん

近江鉄道とレンタサイクルでめぐる環境にも優しいイベントを企画

 昨年11月19日、滋賀県の八日市ようかいち駅周辺で「近江鉄道のサイクルトレインを応援するイベント」が開催された。名付けて「ガチャ+リンで気ままにめぐる秋の中山道と近江商人屋敷の町並み」。
 このイベントは、実は経済学部の伊達ゼミに所属する2〜4年生約40名の学生が集まって実施したもの。「近江鉄道活性化計画」と銘打ち、地元では「ガチャコン」の愛称で親しまれている同鉄道のサイクルトレイン(自転車をそのまま車内に持ち込める電車)と連動させて、実行した。企画立案をはじめ、細かな地元との交渉や、当日の現地スタッフの取りまとめなどの役目を果たしたのは3年生のメンバーである。
 「ゼミではずっと産学連携で『自転車を活用した持続可能な地域交通システムと街づくり』の研究をしています。その取り組みを実践したいと思い、このイベントを計画したんです」とゼミ幹事長を務める高山さんは言う。
 そこで、以前から全国でも珍しいサイクルトレインを取り入れていた近江鉄道と地元の八日市の商店街に計画を打診したところ、すぐに快諾をもらい、計画を進めることになった。まず、レンタル用の自転車の調達とサイクリングコースの選定チームや、商店街の協力を求め、当日限定の駅弁を作ってもらう店探しをするチームなどに分けて活動を開始。
 イベントは近江八幡から豊郷とよさと駅間で実施。参加者は近江鉄道の一日フリー切符(550円)を購入し、五箇荘ごかしょう駅か武佐むさ駅で受付すると自転車を無料で借りられる。そこから自転車を電車内に持ち込み、目的の駅で降りると自転車で観光地を巡ることができるという仕組みにした。

五箇荘駅の調理ブースで駅弁を販売する「チーム・ガチャコン」のメンバー
五箇荘駅の調理ブースで駅弁を販売する「チーム・ガチャコン」のメンバー。

近江鉄道とその周辺の地域の活性化に役立ちたい

 「近江鉄道の走る近江八幡、五個荘、日野周辺は近江商人発祥の地として町並みも風情がありますし、観光資源もたくさんある地域です。そこを利用して中山道沿いの名所・旧跡を入れながら電車と自転車で湖東地域をゆっくりまわってもらうというプランを立てました」と地元出身の北村さん。身近な近江鉄道には人一倍思い入れがある。「最近利用客が少ないんです。車社会の影響で利用客が減って、運賃が高くなり、また利用客が減るという悪循環になっています。何とか活性化したいという思いがありました」(北村さん)。当日までに、桐山さんと協力して自転車で巡る地元の名所を盛り込んだ「ガチャ+リン・マップ」を手作りで作成、参加者に配布した。「実際に、自分たちで自転車で回って作成しました。疲れた時には、最寄駅で自転車ごと電車に乗せたり、レンタサイクルを駅で乗り捨てたり、自由に自転車観光を楽しんでもらえる工夫をし、2〜3時間で回れるコースをいくつか考えました」(北村さん・桐山さん)。自転車は、ロードタイプとシティサイクルを、地元自転車店を回って約30台調達した。
 八日市の商店街で協力店探しに回った井上さんは「『すき焼にしむら』で牛丼弁当を作ってもらえることになりました。特産の近江牛や赤こんにゃくを入れたオリジナルの駅弁を販売することができてうれしかったです」と話す。地元の店と共同開発した駅弁は、八日市駅と五箇荘駅で700円(50食限定)で販売、温かいものを提供したいと考え、駅に調理ブースを作り提供した。弁当の器の「わっぱ」も発注、ラッピングのデザインは学生が考えて作った。「八日市ではブースのテントや備品も貸し出していただくなど、地元のみなさんに協力してもらえて感謝しています」(井上さん)
 参加予約は20名ほどあり、当日はあいにくの雨にもかかわらず、観光客の60代の女性グループや親子づれなどが参加。駅弁も、観光客はもちろん、地元の人達にも大好評だったという。

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がちゃこん弁当は、あらかじめ『すき焼にしむら』で調理してもらった具材を温め直してわっぱに詰め、ほかほかを提供した。掛け紙は、学生の手作り。(写真提供:「駅弁の小窓」)

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イベントで地域資源を結び付けられたのがうれしい

 イベントについての感想を尋ねると、「今回のことで地元の人達に少しでも刺激が与えられたのではないかと思います。今まで直接関係のなかった『近江鉄道』と『自転車屋』と『すき焼き屋』を結び付ける事ができたこともよかったです」(高山さん)。「イベント後、地元の方々からお礼のお便りをたくさん頂きました。とてもうれしかったです」(井上さん)、「地域に刺激を与えられてよかった。僕も勉強になりました。今回の経験を生かして今年も紅葉の頃にできた
らと思います」(北村さん)。「やってみるまではどうなることかと思いましたが、いろいろな人達と知り合うことができて良い経験になりました」(桐山さん)と、それぞれ思いを語る。
 今回のイベント終了後、本格実施の企画の打診が行政からあったという。「将来は地元の京阪電車の宇治線で、中書島ちゅうしょじま駅と宇治駅の間で自転車ツアーを企画したいですね。寺田屋や平等院などの観光資源もたくさんあるので、ぜひいつか実現できたらと思います」(高山さん)。
 『地域活性化』は今、地方では特に重要な課題になっている。そんな状況のなか、今回のような学生たちのフレッシュなアイデアと迅速な行動力は頼もしい限り。彼ら・彼女らの新たな取り組みが、地域再生の新しい風となることを期待する。


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