龍谷 2007 No.63
私のミュージアム27 有馬 切手文化博物館

収蔵品50万点。珍しい、懐かしい切手が一堂に

有馬切手文化博物館
 多くの人で賑わう有馬温泉の中心街から、坂道を上ること7〜8分。白壁に瓦葺きの情緒あふれる建物が現れた。
 2005年に開館した「切手文化博物館」だ。ここは新郵便制度が制定された明治4(1871)年から現在まで、130余年の間に発行された切手のほとんどが展示されている本格的な切手の博物館。
 日本で最初に発行された「竜文りゅうもん切手」や初の記念切手(明治27年・明治天皇の銀婚記念)など年代順に並ぶコレクションは圧巻。常設で4000点余りもの切手が展示されているところは、日本で唯一だそうだ。
 戦後の切手のコーナーでは、昭和30〜40年代に切手コレクションが一大ブームになったせいか、中高年の入場者から「懐かしい!」との声があがる。見返り美人など浮世絵シリーズや日本画シリーズ、そして東京オリンピックや万博の記念切手などがズラリ。ドラえもん、サザエさん、美空ひばり、石原裕次郎…とおなじみの人気者たちも切手に登場している。
 収蔵品の総数は約50万点。切手のほか、明治時代に実際に使われた肩掛箱(郵便行李)や速達専用の青いポストなど、郵便に関する貴重な資料も多数展示されている。

有馬切手文化博物館
古風な建物は盛岡の商家の蔵を移築したもの。赤い日の丸のようなマークは明治20年まで使われた郵便マーク。

有馬切手文化博物館
切手以外の郵便資料が展示された第1展示室。1840年にイギリスで世界で初めて発行された切手を初日使用した封筒、オーストラリアの真珠貝を使った書留葉書便など海外の歴史的な逸品も。
有馬切手文化博物館
第2展示室では、日本で発行された切手がズラリと年代順に並ぶ。実際に使われた封書なども展示。料金や消印の変遷も面白い。戦時中は検閲済の印が押されている。
有馬切手文化博物館
博物館で販売している絵はがき(各80円)とファーストデイカバー(発行初日の日付印を押したコレクション用記念切手・各200円)。
有馬切手文化博物館
くつを脱いで上がるので、ほっこりと落ち着ける。
有馬切手文化博物館
明治4年、新郵便制度の発足とともに初めて発行された「竜48文切手」の完全シート。40枚を1枚ずつ手彫りしてあるため、それぞれに微妙な違いがあるという。

小さな切手は、歴史や社会を知る大きな窓
 切手に興味を持つようになったのは大学院時代。西本願寺の前門主・大谷光照師の切手コレクションが龍大に寄贈され、分類整理を手伝ったのがきっかけです。
 切手の魅力は、小さな美術作品と呼ばれる図柄の美しさや多様性。そして、発行当時の社会状況が反映されていること。たとえば関東大震災直後に発行された切手は、周囲のギザギザもなく紙の質も良くない。それは印刷局が被害を受けたので民間の会社が急きょ印刷したからです。
 また戦時中の切手は、乃木希典、靖国神社、少年航空兵などが図柄になっていて、戦況が悪化するにつれ粗悪な作りになっています。まさに小さな切手が歴史や社会をのぞく大きな窓になっていることを感じます。
こうした切手の面白さを伝えたいので、入館者にはできるだけ解説をするように心がけています。「ほうーっ」と喜んでいただけるのが僕の喜びです。
 龍大での思い出は学部時代の博物館実習です。1年間の学びの集大成として大宮学舎本館で「12月展」を開催しました。テーマを決め、京都市内の古刹から収蔵品を借りるなど、すべて学生の手で実現できたことが楽しかったですね。それを機に学芸員という将来の目標が定まったように思えます。
 ぜひ、有馬温泉に来られた時はお立ち寄りください。声をかけていただくと僕が案内させていただきますよ。
長嶋 和重さん
長嶋 和重さん

有馬温泉

有馬温泉 神戸や大阪から1時間ほどで行ける有馬温泉。最近は新しい施設も増えているが、昔の面影を残す町並が魅力。 有馬温泉 公衆浴場「金の湯」の前に設けられた足湯コーナー。ひと休みしながらおしゃべりを楽しむ人が多い。  

地図
■ 開館時間


■ 休館日



■ 入館料


■ 交  通



■ 問い合わせ

10時〜16時
(入館は15時半まで)

火曜日
(祝日の場合は翌日が休館)
※臨時休館もあるので問い合わせを

大人500円 中・高生200円 小学生以下無料
※団体割引あり

神戸電鉄、阪急バス「有馬温泉」から 徒歩7〜8分
中国自動車道西宮北I.Cから約15分
芦有道路有馬ゲートから約1分

078-904-0024
http://www.kitte-museum-arima.jp/

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