かって銀行だったセカンドハウス七条西洞院店
七条堀川を東に進んだ所に見える重厚な建物。それが、旧村井銀行七条店(現 セカンドハウス七条西洞院店)である。村井銀行は、京都出身の「たばこ王」村井吉兵衛が設立した銀行である。
村井吉兵衛を「たばこ王」というのは、もともと吉兵衛はたばこ商で、1890(明治23)年、日本最初の紙巻き両切りタバコを販売し、名前のハイカラさ(「ヒーロー」、「サンライズ」)と珍しさも手伝い、人気を呼んでいた。吉兵衛の名を世に知らしめたのは、宣伝方法のユニークさであった。当時の宣伝と言えば、ちんどん屋を使ったものが主であったが、吉兵衛はちんどん屋ではなく、音楽隊を先頭に馬車数台のパレード、大文字山や四条大橋に、1文字1.8メートル四方のカンバンを使って商品名を広告するなど奇抜なアイディアを駆使した宣伝を行なっていた。また、当時としては斬新なポスターや美術裸体画をおまけとしてパッケージに入れるなど、その宣伝、販売手法は今でも用いられているものがある。
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当時の銀行の金庫の様子がうかがえる |
日本専売公社にタバコ事業を譲渡した後、吉兵衛は村井銀行を核とした村井財閥を形成する。村井銀行は、たちまち全国展開する中堅銀行となる。京都には、祇園、五条、七条に店舗があり、全ての建物が今も残っている。今回取り上げた七条支店は、1914(大正3)年に建築されたものであり、外観は、レンガの上から石貼りやモルタル塗りがされ、重厚な石造りの建築物となっている。
店内に入ると、高い天井とモダンな店内は広々としており、銀行として使われていた当時のままで階段室や金庫室、応接室が残っている。特に圧巻なのが分厚い扉をもつ金庫室である。入口には、「金庫」と書かれたプレートがそのまま残っていて、当時の銀行の金庫の様子が窺える。現在この建物は、セカンドハウス七条西洞院店として使われており、ケーキやパスタがお手軽な価格で楽しめ、陶芸教室も行なわれている。
なお、3月15日と29日には、本学経済学部 井口富夫教授が中心となった京都市ニューツーリズム創出事業「西本願寺の桃山文化に触れる 非公開書院見学と歴史文化を訪ねる旅」として、西本願寺一帯のツアーが組まれている。
大宮学舎周辺には、今回取り上げた建物以外にも、富士ラビット、鴻池銀行七条支店(現 グランヴェルジュ京都七条倶楽部)、村瀬本店、梅小路蒸気機関車館などたくさんの歴史的建造物がある。気候のよくなるこれからの季節、休みの日に少し散策してみるのもいいのではないだろうか。 |