大きな布や、木箱など立体的な物体に書かれた漢字とかな文字。竹に転写された墨文字。どちらも書かれているのは自作の詩。見る者の目を魅きつける木村さんの作品からはかなり斬新な印象を受ける。
「よく前衛的といわれるのですが、私の書はあくまで伝統書の基本を踏まえたもの。文字も崩し過ぎないこと、書き順を守ることを前提にしています」。デフォルメをしても、美しい文字の形を知っているから、ぎりぎりまで崩せるのだという。
書道を始めたのは小学校低学年の頃。6年生まで続けたが、中学・高校時代は遠ざかっていた。再開したのは大学に入学してから。書道サークル「蟠龍會」に1年間所属、指導に来ていた書家の真神巍堂氏には個人的にも師事、2年生からは伝統書と前衛的な書の2つの教室に通って本格的に書を学んだ。
卒業後は、京都教育大学大学院(美術教育専修書道修了)に進学。「墨蹟」の書法を研究しながら、多数の作品制作を行ない、讀賣書法展など数々の書道展で入賞。2004年からは、個展も定期的に開催している。
「今年は書家の活動を始めて10年目にあたるので5月〜6月と11月、12月に個展を企画しています。11月11日〜11月16日に兵庫県立美術館で開催する個展では、書を立体的に展開する新しい作品にチャレンジするつもりです」
1年前からは大阪のアトリエで書道教室も主宰。一般の幅広い年代の生徒に書を教えている。「最近、初めて人のために『信頼』とか『努力』『愛』という言葉を書きました。昔の私なら書けなかったと思います」。まっすぐな明るさを感じさせる木村さんだが、去年の4月には一度、迷い、やめようと思ったことがあったという。「自分のためにしか書いていなかったので、制作費だけがかかっていました。やっと作品を評価され始めた頃に行き詰まってしまって・・・。その頃展覧会を見に来てくださった方が現在開いている大阪の書道教室をご提供くださいました」。
この出会いがきっかけになり、現在は「社是」や企業のロゴ制作を引き受けることも。自分の作品にも新たな表現を求め、常に探求を続けている。多方面に広がりを見せる木村さんの書の世界。夢は『世界各地で個展を開くこと』。
「世界遺産のような歴史ある建物に展示したいですね。西洋の古城に何10メートルもある作品を飾るとか、世界を驚かす、美しい作品が作りたいです」とにっこり。
近い将来、スケールの大きな夢が実現することを期待したい。
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