水族館。演劇教室。城下町探訪サークル…文化資料館と聞いて、いかめしい資料が館内を占拠するような固いイメージで身構えていたが、蓋を開けてみると、取材者一同、そのユニークな活動ぶりに身を乗り出して聞き入っていた。
冒頭のバラエティ豊かな試みの立役者は、亀岡市文化資料館館長の黒川孝宏さんだ。龍谷大学文学部出身で、1985年から学芸員として資料館の開設に関わって以来、亀岡市民の生涯学習の拠点へと資料館を発展させてきた。自身は広島県出身だが、「亀岡では地元の人を『地(ジ)ガメ』他府県出身者を『他(タ)ガメ』と呼び分けますが、灯台もと暗しで、他ガメだからこそ気づく亀岡の魅力もある。他ガメ地ガメ相互が上手く機能すれば、もっと亀岡を盛り上げていける」と話す。
亀岡といえば、歴史を紐解くと、足利尊氏が挙兵した篠村八幡宮があり、本能寺の変で明智光秀が1万3千の兵を率いて出陣した亀山城跡があり、円山応挙生誕の地でありと、歴史のキーマンと申し分ない接点があるが、そんなゴタクを並べないのも他ガメな黒川館長さんらしいところ。「トンネルを抜けると霧がかった田園と山々が広がり、保津川は淡水魚の宝庫。豊かな自然と、派手さはないかもしれませんが亀岡の歴史にとって大切な遺産を守るのが役目」と、年1回の特別展、年2回の企画展も、亀岡にちなんだ展覧会を開催する。
黒川館長が亀岡からブレない背景として「亀岡の市民の皆さん、子ども達にいかに資料館を役立ててもらうか」という強い思いがある。農作業を通じて天然記念物アユモドキや保津川の魚を観察する「子ども歴史教室」、古文書勉強会や蚕サークルといった60代から70代が中心にサークル活動をおこなう「友の会」、演劇教室「ぶどうの会」など、様々な生涯学習の場を提供する事で、市民に大いに活用してもらう。資料館側としても、こういった活動を企画展に活かせるため、相互にメリットのある資料館として、存在価値が高まるのだ。
「教室は、NPOの方や市民団体に協力を要請して実現しています。逆に、保津川に筏を復活させるプロジェクトや、日吉ダムにあかりを灯すイベントなど、資料館が市民活動に参加するケースも多いです。そうやって、人と人とがつながることで、亀岡のまちづくりにも貢献していければ良いですね」
黒川館長の縦横無尽の活躍は、資料館にとどまらず、亀岡の街をも元気にしていくに違いない。
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