龍谷 2010 No.70


様々な方面で活躍する龍谷人INTERVIEW 教恩寺住職・シンガーソングライター
僧であり、シンガーソングライター。ガンを乗り越え、命を語り、命を歌う。
 
やなせ ななさん
生家でもある教恩寺にて
やなせ ななさん
(本名 梁瀬 奈々)
奈良県出身
1999年 文学部真宗学科卒業

 
 寺院の本堂をステージに「命」をテーマに法話をおこない、「命」をテーマとする歌を歌う。浄土真宗本願寺派の僧侶であり、シンガーソングライターでもあるやなせななさん。2006年にも本誌に記事を掲載したことがあるので、ご存じの方も多いことだろう。やなせさんの寺院コンサートは、現在では開催数が日本全国でおよそ90カ所を数えるまでの活動に拡大している。
 時には歌と法話を耳にした参加者が涙することもあるという、やなせさんの寺院コンサート。本人の意気込みやこだわりもさぞかしと思いきや、「私は布教使というわけではないですし、ありがたい話ができるとは思っていないんです。御法儀についても、私なりの解釈を交えて話しています。『私はこう思いますが、皆さんはいかがですか』と。共感していただいて涙をこぼされる方はいらっしゃいますが、『泣かせてやろう』なんて思ってもみないですし、できもしないですよ」と、肩肘張った気負いは少しも感じられない。
寺院コンサートでのやなせさん
寺院コンサートでの
やなせさん

 30歳を目前にして、やなせさんは子宮体ガンを患った。子宮と卵巣を全摘出しなくてはならなかったほどの大病である。しかし、寺院コンサートでの法話の中心は、自らの病ではないという。「ガンは私にとって大きな転機でしたが、長く生きれば多くの方が病を経験します。寺院コンサートのお客さんはほとんどが年配の方ですから、私以上に困難な病をご経験された方もたくさんいらっしゃいます。ガンの経験に触れることもありますが、それは『命』について共感してもらう『きっかけ』になればと考えてのことなんです」
 今でこそ、「仏教と歌」を融合させた寺院コンサートが活動の中心となっているやなせさん。しかし、2008年まではメジャーデビューをめざしてオーディションを受け続け、事務所にも所属するなど「歌手やなせなな」一本で生きていくことを夢見ていた。
 「テレビに出演したり、大きなホールを満員にしたり、僧ではなく歌い手として成功するという欲を捨てきれなかったんです。そんな私が僧として生きることを決めたのは、龍谷大学時代の友人と再会したことがきっかけでした」  学生時代をともに過ごした真宗興正派の友人に依頼されて講師を務めた研修会で、やなせさんは今までに感じたことのない「やりがい」を感じたと話す。
 「たくさんの人を前に話すうち、ふいに"これだ"と、すとんと胸に落ちる感覚があったんです。"これが私の天職なんだ"と」。語りかけるということ。想いを伝えるということ。現在の活動につながる気づきの瞬間だった。
 その後やなせさんは僧として生きる第一歩として教師教修を受ける。「教修中は不勉強を実感する毎日。龍谷大学時代のノートにはずいぶん励まされましたね。『まがりなりにもこれだけ勉強してきたじゃないか』と」。現在は生家でもある教恩寺で住職となり、「歌手であり僧」という活動で自身の道を歩み続けている。
 最後に、今後の展望についての質問に、やなせさんは笑顔でこう締めくくった。「明日のこと、未来のことを考えて今を生きるのではなく、今を大切にすることで素晴らしい明日をつくっていきたいと考えています。歌手として、住職として、今私に与えられた役割に精一杯取り組んでいきたいですね」
やなせななさん初の自伝エッセイ 『歌う。尼さん』 やなせななさん初の自伝エッセイ
『歌う。尼さん』 ( 遊タイム出版)
\1,365(税込み)
 
やなせななオフィシャルサイト http://www.yanasenana.net/

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