どんなに目を凝らして見ていても、カメラで捉えようとしても、その早技の謎は解けない。鮮やかな衣装がひるがえった瞬間に、付けていた面が変わる、表情が変わる! 中国第1級国家秘密である「変面」の技術を受け継ぐ彼女のパフォーマンスに、観客達は文化圏を越えて感嘆の声をあげる。 その華やかな舞いの裏には、日本と中国、二つの国への純粋な愛情が隠されていた。
彼女の名前は江玉。実は中国文化遺産である「変面」継承認定者で、なんと2008年の北京オリンピックの開幕式にも花を添えたという、スゴ技の持ち主だ。10歳の頃から中国四川省の伝統芸能「川劇」の専門教育を受け、7年後の2006年には川劇団に入り、3年後にはそのなかの特殊な技の一つである「変面」の継承者に。その後「中国川劇団」に入団し、アジアや欧米などで数多くの川劇に出演してきた。そんな彼女が、この春、留学生として国際文化学部へ入学。なぜ? 「変面のプロとして活動するだけでなく、もっと自分のいろんな可能性を考えてみたくなったんです。日本に興味を持ったのは、2008年の四川省大地震の時。私もボランティアとして駆けつけたのですが、そこにいた日本の救助団のひたむきな姿をみて胸が熱くなりました。でも、コミュニケーションがとれなくて。『ありがとう』だけ覚えて彼らが帰国する時に伝えました。それから、仕事の傍ら日本語を勉強するようになったんです」 日本語や文化、歴史を知っていくうちに、日本に行ってみたいという思いが強くなり、ついに劇団をやめて留学生に。選んだ地は日本伝統の街並みや文化が多く残る、憧れの京都だった。 「まだ来たばかりで少ししか足を運べていませんが、嵐山はイメージしていた日本の景色に近い気がします」
特技がコミュニケーションの きっかけとなっていく。
それが喜び
次の顔へ、次の人生へ、中国から日本へ。 違うものをつなげていくことが面白い!