龍谷 2012 No.73

第9回 青春俳句大賞 入賞
第9回を迎えた龍谷大学の青春俳句大賞は、
54,936句もの力作が寄せられました。
厳正なる選考をおこなった結果、
見事に入賞を果たした作品をここに発表します。
松林 宗恵


選考委員総評
有馬 朗人氏
有馬 朗人氏
元文部大臣
日本科学技術振興財団会長
俳誌「天為」主宰
中高大のそれぞれの部門で力作が多かった。しかも自分自身の発想で真剣に取り組んでいる作品が多くて、読んでいて気持ちが良かった。特に特定の一、二の学校からの投句によく見られた。類型的な作品が少なかったことが良かった。すなわち小器用にまとめたり、人の気を引くような言いまわしや、素材をはめこんだような作品が少なかったことが良かった。あまりに技巧をこらさず自らの考えで、自らが体験し感動して作った句が多かったので嬉しかった。
   
茨木 和生氏
茨木 和生氏
俳人協会理事
大阪俳句史研究会理事
俳誌「運河」主宰
中学生、高校生部門は応募作品が多いので、関西在住の俳人によって予選をおこなっている。私も予選委員の一人だが、百人以上の投句がある学校でも予選通過に適う句が一句もないところがある。あっと思うような句があると、歳時記か教科書に出ていた句だろうか、そのままを写した句があったりする。いわゆる盗作であるが、これは絶対にしないでほしい。多くの応募者は真剣に取り組んでいるだけに残念なこと。予選をしていないが、短大・大学生部門の作品は年々充実してきている。
   
大石 悦子氏
大石 悦子氏
俳人協会幹事
日本文芸家協会会員
俳誌「鶴」同人
「中学生部門」は、まだ幼さの残る一年生の作品と、精神的肉体的にも大きく成長するときにあたる三年生の作品とでは、大きな差がありましたが、そこが「中学生部門」の大きな特徴かと思い、楽しく読みました。「高校生部門」は完成度の高い、それでいて青春性にあふれた句が多く、頼もしく思いました。「短大・大学生部門」もまた、力作が多くありました。連作風に数多くの句を応募してきた人もいましたが、大学生には自選力がほしいと思いました。皆さんの努力に大きな拍手を送ります。
   
寺井 谷子氏
寺井 谷子氏
現代俳句協会副会長
俳誌「自鳴鐘」主宰
いつも「第一回青春俳句大賞に参加した彼らや彼女達は、今何年生であろうか」という思いを重ねながら選を続けて来た。そこには、「俳句を続けているだろうか」という願いももちろん籠もっている。「続ける」ということも大切なことであるが、青春の一時期に「俳句と出会った」ということも、とても大きなことだと考えている。日本語という母語の多彩な美しさと、日本の四季に支えられた文化の入り口の門を潜ったのだから。
   
大峯 あきら氏
大峯 あきら氏
大阪大学名誉教授
元龍谷大学教授
同人誌「晨」代表
この賞も回を重ねて作品の質が年々に向上しつつあることは、選考委員として大変嬉しいことである。今年はとりわけ「短大・大学生部門」に佳い句が多く見られた。若者らしい感受性のみずみずしさを保ちながら、年齢を超えた詩の普遍的な地平に入っているような、すぐれた作品もあったことを祝福したい。これと反対に、はなはだ残念なことも書いておかねばならない。それは極めて小数ではあるが、俳句史に名をとどめる先人達の不朽の作品が、自作の名で堂々と投句されていたという事実である。類句や類想の句はこれまでもあったが、今回のような場合は衝撃的であった。どういう了見であろうか。若い学生・生徒諸君よ。もっと君達が持っている筈の自尊の心をとり戻してほしい。人間の物の考え方が崩れ始めるのは、何よりも言語の領域からである。
   
ウルフ・スティーブン氏
ウルフ・スティーブン氏
龍谷大学国際文化学部教授
俳句研究・翻訳をおこなう
毎年英語俳句のレベルが高まり、今年はまた最終選出の句を決めるのにとても悩みました。数年前までは少数の句がトップ争いをするという構図であったのが、今回は恐らく15句ほどがそれぞれに、素直な表現のなかに奥深い感情を表し、我々に直感的に語りかけてくるのです。この審査員としての苦しみとは逆にまた、日本各地、そして世界から、このコンテストに参加してくださる若い人々に感謝し、心満たされる思いを味わっています。

←トップページへ戻る