人気番組「あほ!すき!」の司会進行に挑戦 故郷・石川を盛り上げるアナウンサーをめざして

NHK「あほやねん!すきやねん!」に出演
堀 千尋(ほりちひろ)さん
社会学部3年生 寺井高等学校出身

毎週月~金曜の夕方に放送されている「あほやねん!すきやねん!」通称「あほ!すき!」は、「熱い学生を応援する」情報バラエティーとして、NHK大阪放送局が10代にむけて送る人気番組。今年は学校に「いく」、学生と「つながる」、学生と「つくる」をモットーとしており、なかでも目玉企画は、7名のアナウンサーのたまご〝あなたま〟で、アナウンサー志望の大学生が週2回、日替わりで番組の司会進行を務めるというものだ。〝あなたま〟になるには、NHKのアナウンスコンテストへの出場経験と、倍率20倍以上のオーディション突破という二つの条件をクリアせねばならないが、この難関を越え、4月から1年間の〝あなたま〟水曜レギュラーの座を勝ち取ったのが、堀千尋さんだ。

〝津軽海峡唐揚げ娘〟は石川出身

特技はおじいちゃんに鍛えられた演歌。好きな食べ物は唐揚げ。そんな堀さんが、「あほすき」の視聴者につけられたニックネームは「津軽海峡唐揚げ娘」である。しかし、演歌より唐揚げよりも、堀さんにとって大切なのは、地元・石川のこと。人がいい。空気がいい。食べ物がいい。石川ほどいいところはないです、そう断言する堀さんが、はじめてアナウンサーに憧れを抱いたのは、小学校4年生の時。学校に来たテレビ局のアナウンサーが、場を盛り上げながら話す姿に魅了された。憧れのアナウンサーと同じ、石川のテレビ局で働きたい。大好きな地元を盛り上げたい。いつしかそれが堀さんの夢になった。しかし、アナウンサーになるには倍率1000倍以上という現実が見えてくるにつれ、いつしか夢はあきらめモードに。。そんな時に、高校の放送部の先生に声をかけられて出場したのが、NHK杯全国高校放送コンテストだった。堀さんはなんと石川県アナウンス部門で最優秀賞を受賞し、全国大会に出場。それを機に、本気でアナウンサーをめざす決意をした。京都に住んでみたい、と龍谷大学へ入学してからは、アナウンサースクールに通い、発声練習やフリートークを鍛えた。また大学では、学生とびわ湖e-まち映像協議会が中心となって映像制作をおこなっている『S-project』という団体にも所属。地域の活性化をめざした様々な映像番組のナレーター・リポーターを担当している。なかでも、堀さんが企画から制作、出演までこなした番組が、「仏×恋」といって、若い女性の視点で龍谷ミュージアムに展示している仏像を紹介したり、仏像の所蔵先のお寺を訪ねるというものだ。これらの経験が〝あなたま〟のオーディションで活きた。

学生でもプロ意識を

今年の春休みにおこなわれた〝あなたま〟の面接では、突然無茶なお題を出され、困惑した。

「『特技をやってみて』と言われればその場で『津軽海峡冬景色』のサビ部分を熱唱し、『このテレビを仏像と思ってリポートして』と言われれば『この観音像は鎌倉時代の…』とアドリブ。もう冷や汗ダラダラです。臨機応変な対応力を試されたのだと思いますが、『S-project』で場数を踏んだ経験に助けられました」

学生ながら経験十分の堀さんではあったが、実際の収録には苦戦した。なにしろ、「あほ!すき!」は生放送。カメラは7台、ステージの前には観客もいる。ライトがあたり、カメラが回り始めたら、もう止められない。緊張の連続のなかで、スムーズに番組を進行しながら、ゲストと話し、時には共演する芸人さんからのツッコミにもうまくボケなくてはならない。台本はあるものの、即興が要求される場面も多々あり、うっかり放送禁止用語を口走ってしまったら大変だ。

「初回は緊張で、食べ物も喉を通りませんでした。本番は考えている時間はないですから、瞬時に判断して面白く話さなくてはならない。もう必死さが画面に出ていたと思います(笑)。ゲストの名前や漢字を読み間違えるなど、失敗も数えきれないですよ」

しかし、学生とはいえ、プロの出演者と肩を並べるからには、それなりの仕事をしなくてはならない。プロデューサーから「プロ意識を持ちなさい」と言われたことで、堀さんは、さらに台本を念入りに読み込んで本番に臨むようになった。オンエアーも欠かさずチェックし、ひとり反省会では「もっとこう言えばよかった!」なんて後悔しながら、次回へ活かそうと必死だ。

絶対アナウンサーになりたい

3年生の堀さんは、第2学期からいよいよ本格的な就職活動となる。「あほ!すき!」に出ているくらいだから、アナウンサー試験も大丈夫じゃないの?なんて周囲は思いがちだが、東京の大学では、学生時代からタレント活動をしているのがあたりまえだというから、気は抜けない。

「将来は絶対アナウンサーになりたいです。そして、石川に帰って、地元を盛り上げたい。でもたとえアナウンサーになれなくても、石川で働きたいと思っています。ダメだった時のことは考えてないですけど」

幼い頃から、あたたかい地元の人に囲まれて育ち、今でも帰省した時には、地域の運動会や夏祭りに参加する。子どもからお年寄りまで、街で出会った人といつの間にか仲良くなり、話をするのが大好きだという堀さん。そんな親しみやすさが、リポーターとしての強みになる。

「今、私は町おこしについても学んでいますが、テレビに出たからといって町おこしにはならない、ということも痛感しています。それでもテレビに出ることでみんな笑顔になったり、その場が盛り上がることで何かがはじまることもある。そんな何かのきっかけになるような番組をつくりたいです」

堀さんの〝あなたま〟姿は、来春まで「あほ!すき!」で見ることができる。ここで力を蓄え、地元石川へ錦を飾れるか。津軽海峡唐揚げ娘の奮闘は続く。