「多文化共生を展開する大学」を標榜する龍谷大学。2015年4月には国際文化学部が深草キャンパスへと移転し、国際化へ向けた取り組みがますます加速する。高い志を持ったグローバル人材を育むため、言語や文化の壁を越えて世界と連携する取り組みが現在、各学部で精力的におこなわれている。
国際文化学部では、今年4月より独自に開発したSNS「TNGネット(ツナグネット)」を活用した留学生教育プログラムをスタートした。日本にいる教員が海外にいる留学生の学びを指導し、綿密なコミュニケーションを可能にした新しいオンラインラーニングのかたちだ。
TNGネットでは、全ての留学生を対象とした共通課題と各専攻ごとの課題が用意されている。留学生は、TNGネットに掲載されているリストから関心のある課題を選んで取り組むことができる。「日本のイメージについて、日本人以外にインタビューし紹介しなさい」「誰かのためにパーティーを企画し、その様子をムービーでSNSにアップしなさい」など、課題はいずれも留学先現地の人々と交流しなければレポートできないものばかりだ。
スタイン先生「留学先では同じ国同士の学生がグループをつくってしまうことが多々ありますが、それでは異なる言語や文化に触れる時間はとても短い。TNGネットでは、レポートを完成させるまでの過程をなによりも重視しているんです」
今後はこれから帰国する留学生の意見などをフィードバックして徐々に改良を加えていく予定だ。
スタイン先生「来年度以降は、留学生のレポートに対する評価を教員だけではなく、留学生同士でもおこなえるようにしたいと考えています」
SNSを活用して留学生教育をおこない、正規の科目として単位を与える取り組みはほかに類を見ない。留学生と留学先の人々、そして、龍谷大学をつなぐこの先進的なプログラムが今後、活発な多国間交流の場へと発展していくことだろう。
本学に留学中の外国人留学生と京都市立稲荷小学校の生徒が、同小学校で初めて交流をおこなった。
本学では、33カ国から542名(2012年6月現在)の留学生が学んでおり、SABS※、海外交流委員会などに所属する日本人学生達が中心となって、様々な国際交流を活発に実施している。
今回の稲荷小学校との国際交流活動は、SABSに所属する学生と本学への交換留学生が、稲荷小学校における「国際理解クラブ」活動に参加するかたち。英語だけではなく、いろいろな国からの留学生との文化交流を通して、国際感覚を養うとともに、相互理解を通して広い視野を持った国際人の養成を目的としている。
当日は、アメリカ、カナダ、スロベニア、ロシア、フランスなどからの留学生が参加。自己紹介のあと、出身国の子ども遊びである、ロシアのゴム跳びや、各国のかくれんぼをして交流を深めた。今後も引き続き様々な交流をおこなっていく予定だ。
※SABS=Study Abroad Supporters:留学経験のある学生グループ。留学相談会やTOEFL勉強会、留学経験者としての就職セミナーや、留学生と日本人学生をつなぐ国際交流イベントを企画、運営している。(深草キャンパスで活動)
社会学部の協力により、滋賀県愛荘町にあるブラジル人学校、コレジオ・サンタナ学園で2010年から始まった日本語識字教室。毎週月曜日、岸先生と約20名の有志学生達を中心に9歳、10歳の複合学級を対象に開催されている。
岸先生「私も学生達もポルトガル語を理解できませんし、サンタナ学園に通う子ども達のほとんどが日本語を話すことができません。プロの日本語教師ではない私達が、不十分ながらも自分にできることを考えた結果、日常で使いやすい日本語フレーズを学ぶ授業にしたんです」
難解な文法を学ぶよりも、子ども達が楽しく日本語に触れることを目標とした内容は、言語を越えたコミュニケーションを生んだ。
真殿「最初はどうやって意思疎通をしようか悩みましたが、子ども達と何度も顔をあわせるうちに気持ちが通じるようになってきましたね」
北村「自分から心を開いて子ども達と仲良くなろうとしないと、気持ちは伝わらない。言葉の問題じゃなく、結局は自分次第なんだと感じました」
100枚を超える教材プリントは全て岸先生を中心とした有志による手づくりだ。ポルトガル語の監修は知人の通訳者が担当し、子ども達が親しみやすいようにとプリントに描かれたオリジナルキャラクターの「どんくま」は岸先生をモデルにして、岸先生のお連れ合い様が考案したものだ。
嘉住「子ども達は、授業が終わるとプリントを大事そうに持って帰るんです。恵まれていた自分の小学生の頃とは違うことに驚くことばかりです」
牛丸「空調も無く、文房具すら足りない環境ですが、子ども達の明るい笑顔に迎えられるたびにこちらが元気づけられています」
簡単な日常会話や挨拶の問題をプリントに書き込み、正解すると大きな花丸で褒める。単純な方法だが、週に1度、たった1時間の授業で最大限の効果を引き出す教育法だ。
岸先生「学生達には『気負わずに子ども達と一緒に遊ぶつもりで教えてほしい』といつも話しています」
石田「遊んでもらってるのは私達の方ですよ(笑)。一緒にゲームをしたら負けることもしょっちゅうですしね」
日本語を話せない両親のもとで育ち、母国語であるポルトガル語の教育ですら十分に受けていない子ども達も多い。そんな現実を、学生達はこのボランティアを通じて実感している。
金河「今、私にできることはこの状況をできるだけ多くの人に伝えること。私自身の体験をまずは身近な人に知ってもらいたいと考えています」