人間・科学・宗教総合研究センターの各研究プロジェクトの研究活動のほか、研究関連の動きをご紹介します
仏教研究というと、過去の資料の実証に専念することが多いように思われる。 だが、仏教は生きている。世界各地に赴き多様化した現代の仏教をその体で知り、そこに今の日本仏教への示唆が潜んでいないかを追究し、日本仏教の未来へ向けて提言できる人材を育てたい。アジア仏教文化研究センターが今めざしていることだ。
当センターの研究は三つの地域ユニットに分かれておこなわれている。まず、多くの宗教が並立するインド圏と東南アジアはユニット1(南アジア地域班)。そこでの仏教の現状と歴史的背景を明らかにする。そして、未解明の歴史の多い中央アジア・チべット・モンゴルはユニット2(中央アジア地域班)。仏教がそこで果たしてきた役割や歴史の解明をめざす。さらに、日本を含む東アジアはユニット3(東アジア地域班)。各地で展開した仏教の歴史的な特質と、現代における課題を探る。
また、当センターは、その活動成果を社会へ還元するため、全体研究会や国内・国際シンポジウムのほとんどを一般公開している。一部の専門的な研究会については、大学院生向けの授業として学生へ公開。そして学部生向けには、大宮学舎や龍谷ミュージアムにて各ユニットがプロデュースするオムニバス講義をおこない、興味のある学生へ最新の研究情報を提供し、教育還元を図っている。
センターの今年度の全体の共通キーワードは「エンゲイジド・ブディズム」。 苦には、個人が生み出す苦とは別に、国家や社会が生み出す苦もある。 戦争に苦しむべトナムにおいて、その国家・ 社会が生み出す苦の原因を取り除くため、仏教徒が積極的に行動していくなかで生まれた概念が「エンゲイジド・ブディズム」である。大量消費からエコへ。国際競争から地域共生・地産地消・自給自足へ。あるいは科学から精神の絆へ。3・11の東日本大震災とその後の福島原発事故により、大きくパラダイムシフトしたと言われる日本。仏教国としての今後のあり方、仏教徒がいかなる形で社会と関わり行動するかを考えるうえで、 今、エンゲイジド・ブディズムが、日本仏教の未来を切り開く可能性を秘めているのではないか。
エンゲイジド・ブディズムをテーマにすることは、単に客観的な研究に留まることはできず、それぞれの信心のあり方や、仏教徒としていかに行動するかを見つめ直すことでもある。関心のある方は、全体研究会をのぞいてみてはいかがだろうか。