オーラルケアから全身の健康を考える 〝サンスター〟の使命は、世界中の人々の美と健康を増進すること

サンスター株式会社 代表取締役社長
吉岡 貴司(よしおか たかし)さん
1987年経済学部卒

G・U・M(ガム)やOra2(オーラツー)などお馴染みのオーラルケア商品をはじめ、化粧品・健康食品を製造販売するサンスター。1932年、大阪で誕生した老舗ながら、現在では、グループの経営本部をスイスに置き、アジア・欧米にもビジネスを展開する、グローバル企業でもある。20年前より、世界に先駆けて「歯周病」という考え方を広め、“口腔から全身の健康を守る”という理念で、多くの商品を生み出してきた。また、近年では歯周病と糖尿病や心疾患の関係など、先進的な研究もおこなわれている。オーラルケアの分野で、まさに世界的リーディングカンパニーであるこの会社を、47歳という若さで牽引されているのが、吉岡社長だ。

ただの“歯みがき屋”じゃなかった

世の中を変えていくような仕事がしたい。学生時代から、そんなことを考えておりまして、就職活動の時は、様々な業界の営業職ばかり受けていました。生活に必要なものを商っていること、見ず知らずの人に自社の商品の良さを知ってもらいながら、お客さまを増やすという仕事に面白さを感じたことから、サンスターに入社。ゼミの教授には「歯みがき屋に行くんか」と言われましたけど、これが、ただの“歯みがき屋”ではなかったのです。

サンスターは、口腔と全身の健康には関連があるという、新たな考えを提唱して、専門家と共に、口腔内での疾患が全身に及ぼす影響や、そのメカニズムについての研究にも、いち早く力を入れていた会社です。 あまり知られていませんが、阪神大震災で、避難所に入られてから亡くなられた方の死因で、一番多かったのが誤嚥性(ごえんせい)肺炎。つまり口腔内を清浄に保てないことも一因となり、細菌が繁殖して引き起こされる病気でした。そこで、今回の東日本大震災では、ただ物資を支援するだけでなく、歯ブラシがない時の、オーラルケアの仕方を新聞広告に掲載したり、防災グッズの中には、オーラルケアグッズも入れましょう、と啓蒙する活動もはじめました。商品を売るだけでなく、皆様が健康に過ごすための情報を、正しくお伝えするということも私達の使命です。

しかし、歯周病に対する、一般の方の認識はいまだ充分ではありません。特に海外では、オーラルケアの分野が非常に遅れている国もあり、我々の商品や、情報サービスが役に立てる部分も大きいと感じています。我々は、もっと世の中を変えていけるし、変えていかなくてはならない。今では、とてもやりがいのある仕事につけたと思っています。

重量挙げ部、学友会で学んだ、人間関係の基本

私はずっと営業畑を歩いてきまして、38歳ではじめて支店長を任され、そして昨年、代表取締役に就任しました。業界的にもかなり若い方ですね。私がこれは他の人には負けない、と思う点が一つありまして、それは、いろんなタイプの人達の中に入り込んで、うまく人間関係を築くことです。もちろん長年の営業経験によるところも大きいですが、その基本を学んだのは、大学時代でした。

大学1、2年生の時、私は体育局の重量挙げ部に所属していまして、これがやってみると、面白い競技でね、水面下で人間的なかけひきがあるんです。○○kgからスタートしたんじゃ、アイツ相当練習してきたな…とかね。まぁ見ている人からしたら、全くわからないと思いますけども(笑)。私は怪我をして2年生の時に競技をやめてしまいましたが、ここでは、いい仲間や先輩に恵まれました。当時の龍大の重量挙げ部は、なかなか強くて、近畿大会の上位に入ったりしていたんですよ。今では廃部になってしまったそうで、残念ですね。ぜひ、復活させてほしいなぁ。その後、学友会の執行委員会(大学に対して提言をおこなう学生団体)に入り、執行委員長もやらせていただきました。やりたいことがあれば、どんどん人を巻き込んで実現していくタイプでしたから、提案を実現するために、学生達を集めて、教授棟の前で3日間座り込みをしたことも。そんな経験を通して身につけた、仲間を巻き込む力や、全体像を見ながら考え、行動する力は、今、会社を運営する上でも、活きています。

良い人間関係を構築するコツってなんでしょうね。たとえば、弊社の営業で、業績の上がらない人を見ていると、自社製品を売ることしか考えてない。それよりも、お客さまの課題や目標を聞いて、どうすれば達成できるのか、成長できるのかを、同じ立場で一緒に考えて提案をします。相手企業の上司に評価されやすい内容で、きちっと企画書をまとめてあげるというのも一つ。参謀のような存在になることで、可愛がってもらえるようになります。自分もその方がやりがいを感じられますしね。私はずっとそういうことを考えながらやっていました。

大学時代の友人が全国各地に

大学時代の友人とは、今でも連絡を取り合っています。昨年3月の大震災の時、私は幕張で被災しまして、近くのオフィスに避難していたのですが、どこからかそれを聞いた友人が、一部屋ならホテルを押さえられるぞ、という連絡をくれた。社員がいたので結局オフィスに泊まりましたが、嬉しかったですね。逆に、大学の友人から、オーラルケア商品をなんとか調達してもらえないか、と電話があった時は、私なりに、いろいろ手を尽くしました。

しょっちゅう会うわけではないけれど、何かあった時には助け合える。そんな仲間が大学時代に得た私の財産です。お坊さんになって、寺を継いでいる方も多いので、全国津々浦々に泊めてもらえる寺がある。なかなか便利ですよ(笑)。

私の頃と比べると、今の学生は、おとなしい方が多いように思います。採用面接なんかでお会いすると、みんな想定通りの答えを言う。ソツなく全部答えるので、それはそれで凄いなと思うけど(笑)。サンスターには主にグローバルに活躍したい、という方がたくさん来られまして、みなさん英語は非常に堪能ですが、それを使って、何がしたいのか、強い想いを感じられなかったりします。

先日も、うちの営業を全員集めて、言ったのですが、今後まちがいなく経済環境は大きく変わっていきますから、みんなと同じこと、今までと同じことをやっていたら、すぐに取り残されてしまいます。だからこそ、自分がどうなりたいのかをしっかりと描き、若いうちからチャレンジして視野を広げておくことが大切です。

勉強も大事だけど、いろいろな経験を積むことも大切。せっかく龍谷大学は全国からいろいろなタイプの人が集まっているのだから、学生のうちに、違う意見とふれあいながら、良い関係を築いてほしいですね。大学時代の友人って本当に貴重なものですから。


このコーナーでは、様々な方面で活躍する「龍谷人」を紹介しています。
在学生・卒業生で自薦・他薦を問いません。情報をお寄せください。